賭け②
「くそっ、先にいかれた」
フクダは悔しいそうな表情を浮かべて馬体を併せてきた。ウラタはそれを横目で見ながらもけげんな表情を浮かべる。
「どうせ演技でしょ。どこまでも食えない人だ。騙されませんよ」
フクダは何かを叫んでいるようだったがウラタは聞かなかったことにして完全無視を決め込んだ。ウラタの騎乗場は周りを気にして集中力を欠いているようだった。
「騎手がだめなら馬をつぶしにきたのか。どこまでも……」
併せにきたフクダを避けるように外にもちだす。そして先頭にでたフクダからやや離れた後方に位置どる。
後ろにいた者たちはこの一連の動きを不可解に見ていた。
「あいつらはなにをやっているんだ。全くわからん」
これにより結果的に彼らはタイミングを完全に見誤った。
「何があったかこっちとしては助かった。気づかれないうちにここまでこれた。あとはいつ仕掛けるかだが……」
出遅れたキングオブザロードであったが行程の1/3あたりを過ぎたあたりでスルスルと前に出てきていた。大外を回されたせいでかなり距離をロスしていたが馬自体はまだまだ余力がありそうだった。
そんなキングオブザロードの動きを前の二人はなんとなく感じていた。
「直線勝負か。人の動きに惑わされている場合ではないな。少し早いが…。よし、行こう。頑張ってくれよ」
3コーナーと4コーナーの間でウラタは鞭を入れた。ウラタの意図を感じた騎乗馬は一気に加速していく。
「焦ったのか? 早すぎるだろう。あいつもまだまだだな。アレの圧力に負けるようでは」
フクダはそう思った。そう思わせるぐらいにウラタの仕掛けは早いように見えた。
「こっちが見えているのか。だけどお前が思っているほどうちのは疲れていない。キングオブザロードの能力を思い知るがいい」
クマダは自分の騎乗馬に全幅の信頼をおいていた。だからこんな状況でも慌てない。
キングオブザロードはフクダの騎乗馬をあっさりと交わしていく。
「あんたもかい! 焦りすぎだ」
フクダは自分の騎乗馬に自信がなかった。だからあえて汚い手段を使った。それなのにここにきて勝てる気がしなくなっていた。先にいった二人に焦りすぎだと思ったのは自分は間違っていない。これで勝てると思い込みたかっただけなんだという思いが浮かんできた。自信が崩れていく。途端にフクダの心に焦りが浮かんでくる。
「クソが! どうしたんだ。俺がいちばん焦り出しているじゃないか。ええい、いってしまえ」
フクダは鞭をふるう。フクダの騎乗馬は前の2頭を猛追する。
直線に入り3頭の追い比べになっていく




