次の戦いにむけて②
「何を考えているんだか。そんなに俺らの邪魔をしたいのか」
マドロームがポータルステークスに出走すると聞いて他の出走馬の関係者からは批判残すほどの声が挙がっていた。
「あんたたちはもう出れるじゃないか。何故こんなことをするんだ」
中には直接文句を言いに来た者もいた。
「どこに出そうがこっちの自由だろうが。そんなことを言っているようでは先が思いやられる。出られるだけでいいとか思っているんじゃないか? 俺らを負かす気で掛かってこい」
そういう輩をあえて挑発するようにタカダは言い放つ。
「やってやろうじゃないか。俺らをなめるんじゃねえぞ」
そんな挑発に簡単にのってしまい思わず言い返す。こうして対マドローム包囲網が出来上がっていく。
「勝ち味を味わせるのではなかったのですか?」
「こんな状況で勝てないようではダービーを勝ち抜くなんて無理だ。少々物足りないがいいシュミレーションにはなるだろう」
「最初の話と違うような気がしますけど……」
「君が勝手にそう思っただけだろう。俺はいつも先を考えているんだ」
「はあ、もういいです。勝てるように仕上げるだけですから」
「それでいい。次戦のことを考えるのは俺の仕事だ。君たちは勝てるように仕上げてくれればいい。出るからには勝つことだけを考えるんだ。最初から負けることを考えるんじゃないぞ。あいつらとは違うんだからな」
「わかりました」
タカダは厩務員たちにそう言って奮起を促す。こうして彼らはマドロームを完璧に仕上げた。その仕上げぶりにタカダは満足げな表情を浮かべる。
「やるぞお前ら。マドロームをつぶすぞ。どんな手を使ってでもあれに勝つ。勝つだけでなく二度と出走できないようにしてやる。俺らを舐めたことを後悔させてやる」
タカダに挑発され打倒マドロームに燃える陣営、だが、彼らとて一枚岩ではなかった。
「勝負事なんだし、まともにやりあって負けたら仕方ないでしょう。本番はここじゃないんだし」
「悔しくないのか。こっちは本気で権利とりにきているのにあいつらはたんなる調整だぞ。完全に舐められている」
思い込みが激しいようでそう語る相手に
「あれを見てもそう言える? 少なくとも調整とは思えないけど」
そう反論してみる。
「なんだと! うお、なんだあれは!」
完璧に仕上げたマドロームの馬体を見て彼らは驚いた。それでも彼らはまだ強気な態度を崩さない。
「おもしれぇ、それでこそ倒しがいがあるというものだ」
この時点で彼らはまだ本気でマドロームを潰す算段を立てていた。




