次の戦いにむけて
納得できないからといっても結果は変わらない。それはわかっている。それぞれがモヤモヤしたものを抱えつつも思いは次の戦いへと向いていく、
次戦に向けて各陣営はそれぞれの方法で調教を重ねていく。
「次走だがダービーまでに一走使いたいと思う」
「それはありえない。間隔がきつ過ぎる」
「潰れますよ。無理ですよ」
タカダの発言にスタッフは口々に反対意見を述べる。
「最近勝っていないからな。負け癖がつく前になんとかしたい」
「❳考えは理解できますが。どこを使う気ですか?」
「チャレンジャーズマイルカップに出そうと思う」
「それは無謀です。あれはマイラーではない。緑葉ステークスならともかくマイルカップなんて勝てるわけない」
スタッフは猛反対する。前戦の疲れも癒えないうちにまた激戦に身を投じさせるのですか。壊れますよ。一か八かは持ってのほか、勝ち味を味あわせたいならポータルステークスあたりがいいんじゃないですか。何もG1にこだわる必要はないでしょう」
「それもそうだな」
スタッフの進言を受けてタカダは考えを改める。
「ということだ。しっかりとやってくれ」
「わかりました。若干不安はありますがやるだけやってみます」
タカダの方針にウラタは頷く。こうしてマドロームはダービーの前に一戦交えることになった。
「若干やる気が先行しすぎる気がするね。タカダ先生は」
シュプリームの調教を終えたルシエールはその話を聞いてそう呟いた。
「うちは余裕を持とう。ダービーに全力を尽くそう」
「そうだね。じっくりと仕上げるとするさ」
そう言い合うルシエールとフジイだった。
「これからはハードに調教したいと思う」
マツイはオシタニにそう告げた。
「本番まで調教は坂路一本に絞る。もっとスタミナと勝負根性をつけさせたいと思う。おそらくこれまでにない激しい戦いにてなると思う。これからは俺はお似になる。覚悟しておけ」
それを聞いたオシタニは気を引き締めた。そしてマツイの言葉どおりプレセンシアは毎日坂路調教を繰り返していた。
「やることは変わらない。いつもどおりのことをやるだけだ」
イリエはダービーだからといって特に気負うことはないと語った。いつ何時でも平常心を保つためにはいつものことをいつもどおりやるだけだ、とクマダに告げた。その上でだ、と、イリエは続ける。
「本番前にひと仕事してもらいたいんだ」
「ひと仕事とは?」
「チャレンジャーズマイルカップにうちのに乗ってもらおうと思ってな。病み上がりでぶっつけ本番になるがまあ大丈夫だろう」
「というと。あれを出すんですか」
「そうだ。なんとか間に合ったな。結果次第ダービーにて出すことも考える」
後日その話を聞いたタカダは胸をなでおろした。出さなくてよかったと。
そしてその馬、キングオブザロードは俄然注目を浴びることとなった




