レース本番
レース本番、本馬場入場が始まる。
出走各馬の名前と簡単なプロフィールが紹介されると、新馬戦というのに異様な盛り上がりをみせる。
注目はマドロームとシュプリームの二頭、ダービー候補生が新馬戦でいきなり対決するということで話題になっていた。
ファンファーレがなり、各馬ゲートインする。
ゲートが開き各馬、一斉にスタート、絶妙なスタートを決めたシュプリームは一気に先頭にたち逃げきり体制に入る。これは作戦通りである。
一方のマドローム、スタートで後手を踏み最後方に控える。
(「おい、中団待機のはずだろう。もっと前にいかないと」)
いきたがる素振りをみせるマドロームを騎手ウラタはなだめる。
「大丈夫、俺を信じろ」
そう言われてマドロームは落ち着いて指示に従う。
その間にもシュプリームはリードを広げていき三コーナーに差し掛かる。ただシュプリームにとって誤算だったのは単騎での逃げではなくぴったりマークするようについてきた馬がいたことだった。おかげでペースを落とすことができなかった。
レース経験のない新馬どうしだからこのままだと二頭とも失速するのではと観客はざわついていた。
焦るシュプリーム、しかし鞍上ルシエールは落ち着いていた。先に行かせてペースを落とした。ゴール前の直線で差し替えせるとの判断である。
一息入れることができたシュプリーム、落ち着きを取り戻しスパートに備え足をためる。単騎で先頭にたった馬を目標にして各馬4コーナーをすぎ直線に入る。
この時点でマドロームはまだ最後方、ざわつきだした観客をよそにウラタは直線に入ると外にもちだし、鞭を入れゴーサインを出す。
同じくルシエールも鞭を入れゴーサインを出す。
芝の荒れていない外を進むマドロームはとてつもない脚をみせ、最後方から一気にゴボウ抜きにする。他馬が止まって見えたと後述されるほどに
一方、内ラチ沿いは芝が荒れまくっている。思惑通り差し替えしたシュプリームだったが思うほどに脚がのびない。
それでもセーフティリードを保ちつつゴール版を通りすぎる直前、外側を走る馬に気づく。
二頭はほぼ同時にゴール版を通りすぎた。