役者たちは集合する
「この感動を俺は味わえないのか」
チェリーカップの様子をクマダはテレビ観戦していた。
相棒のリタイアによりエイプリルステークスへの参加ができなくなったクマダは悔しさを抑えるように呟いた。
「ダービーには間に合わすとはいったが……」
イリエはそんなクマダに言葉少なめに話し出す。
「他の連中が盛り上がろうとしているのにお前はその中に入れない。さぞかしつらいだろうな」
「仕方ない。相棒があれでは。ダービーには出れるかもしれないが果たして走れるのか」
「そう悲観してもどうしようもないか。だがやれることはやっておかないと。そこでだ、かわりといってはなんだが……」
「もしかして?」
「そうだ。お前に乗ってもらう馬を用意した。勝負勘を鈍らすわけにはいかんからな。さあ行ってこい」
クマダは歓喜した。相棒はでないが自分だけでもあの連中とあいまみれることを。
「さて、もうそろそろかな」
出発の準備をしているエンドロール陣営の様子を見ながらミヤナカはイソダが出てくるのを待っていた。
やがて準備を終えて出発しようと現れたイソダにミヤナカは声を掛ける。
「今さらこんなこと言うのはなんですが……」
「言いたいことはわかるよ。だから何も言うな。まあ敵をとってやると言えないのは残念だがな」
「わかります。でも勝てない相手ではないですよね」
「最初から負けるつもりで戦うやつなどいない。当然だろう。手の内もばれているし戦法もただひとつ。それでもだ。お前には次がある。今度は俺がお前の後を追う形になるわな」
そう言い残しイソダは戦いの場に旅立っていく。ミヤナカはただ遠ざかっていく背中を見送るだけだった。
「相変わらずだな、あいつは」
レースを直前に控えマドロームは気合いを入れて調教に望む。
シュプリームはあきれたようにいい放つ。
「まあ彼らしくていいんじゃない」
そんなシュプリームと会話するプレセンシア
「ああいった気合いが乗りすぎるところが今のところいい方向にでてる」
「けどいつかつぶれる。それが心配だ」
「おやおやこれから戦う相手を心配するのですか」
「お互い認めあったライバルだ。戦う相手がいなくなるのは張り合いがなくて困る」
「それを私の前でいいますかねぇ。戦うのはあなた方だけではないのですよ。なんだが上から目線でけっこうイラつきますねぇ」
「これは失礼したな。もちろんあんたのことも、そしてあいつのことも」
「ああ来ましたね」
二頭が見つめる先にはエンドロールとイソダがいた




