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異世界競馬  作者: y-ohsaka
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もうひとつの戦い

マドロームが勝ったレースの翌日、いよいよ年度の総決算ともいえるファイナルグランプリの日を迎えた。このレースは年末の風物詩とされ、ダービーとともに広く一般にも知られている。ファン投票上位10頭と収得賞金上位6頭によるまさに頂上決戦であり、出走できるだけでも名誉とされる。ただでさえ注目されるレースだが今回はさらに注目を集めている。

障害界の絶対王者オジールの参戦、女傑ビロードドレープの引退レースなど例年以上に盛り上がりを見せていた。

ファイナルグランプリの2つ前のレース、グランドハードルの出走馬が本馬場入場をはじめる。一番人気ボレロに乗るクマダは複雑な気持ちを抱いていた。常にオジールの後塵を拝していたボレロにとっては絶対王者のいないこのレース勝って当然と誰もが思う、自分もそう思う。だけどクマダは納得できないでいた。ボレロはオジールに勝てないまま引退することになる。

「今までごめんな。仇はこのあととってやるから今はこのレースに集中しよう」

自分に言い聞かせるようにクマダは集中力を高めていく。

レースが始まるとボレロはこれが最後のレースだとわかっているかのようにいつも以上にきれいな飛越を見せ大差勝ちをおさめる。ターフを去っていく姿はまるであとは任せたといわんばかりだった。

観客は偉大な脇役に盛大な拍手を送りこれまでの戦いぶりを称える。今日だけは彼は主役であった。

そしてその拍手はファイナルグランプリへの盛り上がりへと繋がっていく。その前のレースの出走馬にとっては迷惑でしかないが。

ファイナルグランプリの発走が近づくなか騎手たちの間にも緊張感が漂いはじめる。出走する馬も一流ならそれに乗る騎手たちも一流である。乗る前からすでに駆け引きは始まっていた。

「ウラタ君最近調子いいね。マドロームってこの先期待できるいい馬に乗せてもらってうらまやしいよ」

ウラタに声をかけてきたのはオジールに乗るタケトヨ騎手、オジールの参戦を聞いて面白いと騎乗を即決した。

「まあぼちぼちやってますよ」

ウラタは適当に返事をする。先輩にたいして失礼な対応だが相手のペースにはまらないための防衛策である。当然タケトヨもそれをわかっているのでそれ以上なにも言わない。騎手控室は異様なほど静まり返っていた。クマダもウラタもルシエールもオシタニもきたるレースに向けて集中力を高めていく。地方所属のイソダも地方交流競走が組まれていた絡みで騎乗することになっていたがこの雰囲気に戸惑っていた。そして出走する馬たちもその異様な雰囲気にのまれていく。いつも以上に緊張感が高まっていく。騎手たちがそれぞれの馬に乗るために散っていく。

本年の更新はこれで終了です。来年もご愛顧のほどよろしくお願いします

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