欠片の世界と唯一の王国
未だに見る夢がある。それは僕がまだ家族と暮らしていたころの夢。
僕は星のランプを作ることを生業とする職人の一家に生まれた。優しい祖父とまるで太陽と月のように性格の違う両親と僕の4人、それと数匹の星吐きと深い森に小さな工房を家代わりにして日々を過ごしていた。僕はいつも夢の中で笑っていて、一緒に暮らす家族もあたたかい表情で僕を見ている。家族は皆が昼過ぎに起き、太陽が出ているうちは工房でランプを作る。夜は星吐きたちと森に入り、森に住む住人達と過ごすような毎日を過ごす日々を送っていた。
でも、この夢からは幸せなまま抜け出すことはできない。
あれは嵐だったのだと思う。寝ていた僕は突然起こされ訳も分からないままに森へ走らされた。最後に見たのは近くを流れる川に飲み込まれる工房と流されていく3個のランプ、そこでいつも飛び起きるのだ。
今日も夢のせいでまだ夜のうちに目が覚めた。家族と別れる原因になった嵐から3年の月日が経って僕は11歳になっていた。嵐の夜、森の中に逃がされた僕は少し走った後に交友関係にあった妖精に幸運にも出会い、1か月の間妖精たちが住む恥ずかしがりの湖で過ごした。湖を出た後は森の近くにある宿屋に住み込みで働かせてもらいながら、家族を探すための資金を貯めていた。
「あと少しで目標の額まで貯まるから、次の月には旅に出られそうだね。」
僕はまだ隣で眠っている星吐きのオオトカゲ、唯一の友人であるステーロに話しかけた。種族の違う彼とは本来言葉での意思疎通は叶わないが、僕が僕として意識を持ち始めた頃からの仲ゆえに気持ちは通じているような気がしている。
この辺りは王国から大分離れているはずだから、と呟きながら必要な物リストを確認しているといつの間にか窓から光が入ってきていることに気づき、大慌てで身だしなみを整える。宿の朝は早いので、軽い朝食をとるために日が出たら厨房へ降りなければいけないのだ。
「いってくるね、ステーロ。」
まだ休んでいる友人に声をかけながら僕は厨房への階段を降りた。




