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聖書の秘密

作者: 冬野夏

西暦3018年。


人々は情報過多社会に疲弊しきっていた。


「情報に振り回されるのは、もうやめよう!」


自然回帰主義者の運動は日に日に過熱化し、ついに暴動にまで陥った。


アップル社をつぶせ!




そのうち、一人がタイムマシンに乗り逃げ伸びた。




数千年前。


そこでは人は言語を獲得し、ようやく喋ることでのコミュニケーションを獲得して間もないころ。




逃げ延びた敬虔なアップルユーザーは、ぼろぼろとなった自分の格好を見ながら、己の人生を振り返った。


エリート人生を送ってきて順風満帆だったはずなのに、今ではこの惨状…。




男は無性に腹が立ち、自分のノートパソコンを投げ捨てた。




近くに、警戒しながらも原住民がその姿を注目して観察しており、そのうちの一人、長老がその投げ捨てられたノートパソコンを拾い上げて男に近づき、こう訊ねた。


「これは何かね?」


すると、男は長老を一瞥。それから地面に唾を吐き捨てるような視線を向けながら答えた。


「アップル社による禁断の果実さ」

「アップル?」

長老は漠然としたが、疑問が先走った。

「ところで、そなたは誰じゃ?」

「僕?僕はアップルのベビーユーザーさ」

「へびー?」

「ああそうだ、そしてあなたが今、手に持っているのがアップル社のノートパソコンだ」

男はそれだけ言うと、今後の事を考え大きな溜め息を吐いた。

それを見た長老は気の毒に思い、男に声をかけた。

「もし行く所がないのなら、わしらの所に来るかね?」

「いいんですか!?」

長老は顔一杯に皺を作って頷いた。

男は感謝し、長老に従った。


後日。

「いいかい、種まきは……」

そこには村の働き手に、男が効率的農業の仕方を指南していた。

「まさか役に立つとはなあ。認めたくはないが、さすがアップル!」

投げ捨てたノートパソコンは未だバッテリーが生きており、そしてHDDにはウィキペティアよろしく生活に関する諸情報を保存してあったのだ。

するとそのデータからの助言はみな的確で、瞬く間に村は発展した。

しかし有用な情報はすべて、村に対して有用に働くわけではなった。

あまりの効率化により無駄は省かれ、すると労働量は以前に比べ必然的に減少した。生まれた余暇に若者はみな寝転び勤勉とならず、先代からすれば実に楽をしているように映った。


「息子が堕落してしまった!」

若者の親の多くがこう嘆き、長老に助けを請う。

そうした声が次第に高まると長老も重い腰を上げ、とうとう例の男を村から追放した。

その後、長老は戒めを込める意味でも男の発言を思い出しては話をまとめ、

後世にこのことを話し伝えた。


「へびーなんとかがアップルなるものを手に持ち、我々に示した。それから人は堕落したんじゃ!!」




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