デジャブ
「そうだよあれはみこだよ」
「なんでこんなところに…」
「いいから、ほら戻るぞ」
「なんで…」
「ほら」
俺は真菜をエレベーターまで引き戻し、真菜の部屋まで連れ戻した。
「あなた、理由ぐらい説明しなさいよ」
「わかった…話すよ…その代わり、みある程度揃ってからな…」
「みこが来てからってこと?」
「つまり、みこが出て来た後っていうことだな」
「じゃあ、今すぐ…」
真菜は立ち上がり部屋のドアにてをかけた。
「今、出したらみこが死ぬぞ!」
「なんで?」
「あの中で、今みこが出てこられるまでの安定状態にしているんだよ」
「それってどういう…」
「だから、それは後で話すって言ったろ」
「あっ…」
「みこが出てくるまで、もう数時間だ。それまで待て」
「わかった…」
俺は一階に上り、病院の準備をした。すると、裏口のドアが開いた。
「おはようございます、院長」
「おはようございます、多田さん」
「今日も早いですね」
「まぁ…あはは…」
看護師の多田さんは看護師の着替え室に行った。すると、また裏口から人が入って来た。
「おはようございます、先生。今日は星空さんとかが夏休みですよね?私、1人だけですか?」
「おはようございます、前川さん。いや、今日は多田さんもいるよ」
俺は病院の準備を進めた。気がつくともう病院を始める時間になっていた。表口のドアを開くと、小さい女の子と年老いた女の人が入って来た。
「そういえば、おばあちゃん。ここって、いつから病院があるの?」
「どのくらい前だったかしらねぇ。今の湊先生のおじいちゃんが開業して…」
「カイギョウ?」
「病院を開くことだよ。その後、長女…一番のお姉ちゃんが引き継いだのよ。そして、次女…真ん中のお姉ちゃんの息子さん、つまり今の湊先生が引き継いだのよ」
「そんな昔からなんだ〜へぇ〜」
「おはようございます、前川さん…今日はうちの孫娘の手にイボなのかしら、何かができてそれを見て欲しいのよ…」
「わかりました。少しだけそこの待ち合い室でお待ちください。」
「矢澤さんのところの孫娘さんの手にイボができたらしいです。先生…」
「焼くから持って来て」
「液体窒素の大きい缶からですよね?」
「そうそう」
「前川さんに準備できたこと伝えて」
「はい」
「矢澤さん、どうぞ」
「はい」
診察室に矢澤さんとその孫娘が入って来た。俺は紙コップに入った液体窒素を片手に、綿棒を探した。
「今日はちかちゃんの手にできたんだって?」
「はい、そうなんです。」
「ちょっと見せてみ。…あー、これはやっぱりイボだね。じゃあすぐ焼いちゃおうか。ちょっと痛いかもしれないけど我慢してね」
「うん…」
俺はちかちゃんの手のイボに液体窒素が付いた綿棒を当てた。
「終わったよ」
「ありがとうございます」
「お大事に」
そういうと、2人とも待ち合い室に戻って行った。こんな風に一日が経って行った。そして、もう病院を閉める時間になっていた。看護師2人が帰ると、俺は時計の針を12時に無理やり回した。すると、朝まで出ていたエレベーターが出て来た。B2へ俺は向かった。
「おーい、真菜はどうしてるのかー」
「…」
「返事ぐらいしろよ」
「…」
「またまさか…」
俺はドアをノックして、開けてみた。するとそこには無防備に眠っている真菜がいた。
「これは……俺に何して欲しいのかな?フヒヒ…襲って欲しいってことだよな…完全にエロゲのパティーンじゃん。じゃあ、お言葉?んー、この態度に甘えて、いただきますか…」
俺は真菜に近づき首元に両手をそろりと付いた。
「んっんー」
「やべ、起きたか…ゆうてこれは大丈夫だな」
俺の期待とは反して真菜の目が開いてしまった。
「ん?……えっ?…あんた何を!」
「俺何もしてないよ」
「何してんのよ!」
「いや…ねてるのかなぁと思って」
「いやいや、嘘でしょ」
「イヤイヤ、マジ」
「いやいやいやいやいや」
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤ」
「いやいやいやいやいやいやいや」
「これ、アホな子がなんかやってたような…」
「アホな子って誰よ?」
「おまえじゃない、違う違う。とにかくデジャブだってこと…」
「はっ?」
「もういい、きっとこれが次から通じるようになるんだよ…」
「次?」
「そう、次。とりあえず下行くぞ」
俺は真菜を引き連れて、エレベーターでB6へ向かった。