鉄の扉の先
B2から地上に上り、自分が院長の病院を開く準備をした。この病院は俺の伯母さんが院長をやっていたのを引き継いだ『湊皮膚科』である。俺のおじいちゃんが開業して、引き継いだ時に地下施設とそのためのエレベーターを勝手に、そして秘密裏に取り付けた。
「今頃、真菜は風呂か…デヘヘ…。もうそろそろ看護師も来る頃だし、エレベーターやっとくか、階段のみになるのは面倒だが、しょうがないか…。」
俺は壁にある時計の短針を12:00から8:00まで動かした。すると、エレベーターが下へ勝手に下がり、今までエレベーターがあったと思えないくらい綺麗に直された。
「そういえば真菜どうしてるかな…見に行くか。もうそろそろ上がってるだろうし…」
ボイラー高温危険、立ち入り禁止と書かれたドアを開いた。
「普通、誰もここに階段あるとは知らないよな、ハッハ」
下に下がるとB1のエレベーターの横から出た。どうやら、真菜はもういないようだった。
「もう部屋にいるかなぁ」
B2にエレベーターで向かうと、俺は真菜の部屋をノックした。
「おい、もう上がったなら返事しろ」
「…」
「なんか言えよ」
「…」
「開けんぞ」
「…」
真菜の部屋のドアを開けるとそこには真菜はいなかった。俺は急に嫌な予感がした。走ってエレベーターまで行き、閉まるボタンと、B1とB2を同時に押した。すると今までなかったB6ボタンがB3の下から現れた。俺はB6に急いで向かった。
B6に着くとそこには、真菜がいてガラスの向こう側で鉄のドアを開けようとしていた。
「おい、やめっ…」
俺の静止が届く前に真菜はドアを開けてしまった。真菜はドアの中を見て唖然としているようだった。そこで、俺は真菜に駆け寄った。
「俺の声が聞こえなかったのか」
「…これって…何このたまごみたいなビニール……なんか中に人みたいな…」
「ほら、戻れ。どうやってきたんだよ」
「…みっみこ…みこじゃない…あなた、みこに…」
「戻れ、本当…戻れ」
俺は真菜の腕をつかんで、ドアから引き剥がした。そして、ガラスの部屋の外へ出した。
「どうやってこの階に来たんだよ」
「だって、みこ…」
「俺の質問に答えろ!」
「私はお風呂から上がったあと、少しよろめいて…何か背中でボタンを押したようなの…そしたら、B6のボタンが出て来て…興味本意で…」
「まだよろめくのか…」
「それよりみこ…どうやってあの中に閉じ込めたのよ…あれは本当にみこなの?、ねぇ!」
「ああ、そうだよあれはみこだよ…」