世界の真実
「一応、今日からここが君の家だよ」
「えっ、私ここにもう一泊するつもりはないけど…私帰るわよ」
「どこに?どうやって?」
「私の家によ。第一私をどうやって連れてきたのか…。早く地上に連れて行きなさい。ここどこよ…さすがに日本から出てはいないわよね?」
「ニホンって何?そんな国知らないけど…」
「ちょっちょっと、何冗談言ってるの?…」
「日本なんて東の猿の国シリマセーン。ワタシそんなサムライの国シリマセーン。」
「あなたホントに喧嘩売ってるの?ちょっとくらい何か教えてくれたっていいじゃない…。」
「事実はここは長野県だよ。ちょっと寒いでしょ…東京より。少し前まで、東京にずっと住んでたし…」
「じゃあ私帰るわよ。電話貸して」
「どこにかけるつもり?」
「あなた警察にかけられるのが怖いんでしょ?」
真菜は誠司が驚き、怯える顔が拝めると思っていたが、意外にも誠司はニヤケ出した。
「自分の知ってる番号にかけてみるといい」
「とりあえず、家にかけてやるわ。迎えにきてもらって家の顧問弁護士に…いや警察でもいいくらいなことをしているんだから。」
「どうぞご勝手に」
誠司は自分のスマホを取り出し、少し握りしめると、真菜に渡した。真菜はそのスマホで家の番号を入力し、緑のボタンを押した。
プルルルルプルルルル
「もしもし…」
「私よ、真菜よ。今いるところをすぐ突き止めてやるからそれまでに車…」
「あのどなた様ですか?番号間違えたのでは?」
「えっ…」
「私よ、山吹真菜…」
「いや、人違いじゃ…」
真菜は耳に当てていたスマホを持つ手が力が急に抜けてスマホを落としそうになった。誠司がギリギリでスマホをキャッチした。
「長野県って言ったから同じ日本だと思ったよね…」
「いや、でも…だって…」
「実はね、今年は2034年なんだよ」
「17年後?……っって、ことは電話番号を変えてる可能性だってあるのよね…」
「ま、まあ、い…」
「そうだわ、きっと…」
誠司は言いかけていたことを寸前で飲み込んだ。真菜は少し動揺が落ち着いた様子だった。
「知ってる人の番号が見つかるまで、まあ、私ここにいてあげてもいいわよ」
「部屋なら用意してあるからそこを好きに使いな」
誠司は真菜の部屋から出た。そして、エレベーターに乗り、B6へ向かった。奥へ歩いて行くと、ガラスのドアを開け、さっきまで真菜がいた台の向こう側の鉄のドアを開けた。中の電気をつけると、そこには長さ1m強のアリの卵のようなものがたくさんあった。誠司はいちばん手前にある卵を覗き込んだ。そこには液体に浮かんだ全裸の女の子が入っていた。