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逃避王の未来創造(アブニール・ファブリケ)  作者: 酉真菜
科学者もAIもが、正義の名のもとに-slight hero,slight hope-()
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直談判

目を覚まして見ると、またあの所長の部屋に連れ出されていた。


「……あっ所長……あれ、何だっけ……」

「大丈夫ですか?」

「ああ、そうだここは……」


急にジックが連れ去られていく光景が目の前に広がった。その瞬間に俺の頭という器の中に記憶という液体が満たされていった。


「ジック……」

「どうしました?」

「ジックはどこにやったんだ!ジックは!ジックを殺すなら俺を殺せ!わかるよな所長なら。ねえわかるよね?」

「しょうがない人ですね……」

「じゃあ……」

「それはできません。」

「何で?」

「これは人類にとって必要なことなんです。人類の繁栄を無駄にしたくないでしょう?何千万人の命がかかっているのです。あなたはその多くの人たちの命を奪ってもいいのですか?」

「それはこの収容所の収容スペースの問題か?それなら俺を殺せばいいじゃないか。何でジックなんだよ」

「罪に応じて罰が重くなるのは当然でしょう。No.GK3948Kは人類文明に対して第2B級の破壊危険性があります。あなたはまだ決まっていませんが、第2C~4B級です。まだ罪の重さが確定していませんが。しかし、No.GK3948Kは少なくともあなたより重い。もしもあなたが第4B級であるなら死刑ではありません。あなたを死刑に処するわけにはいきません。人類を滅ぼしてもいいのですか?」

「俺は関係ない。俺には未来の何千万人の命なんか知らない。それよりジックの方が大切だ。何でそんな簡単に人が殺せるのか?所詮AIだからか?人情はないもんな。」

「私たちはここの規則に従っているまでです。その規則も私が考えたホモサピエンス繁栄のためです。決して私たちAIのための裁判しているためではありません。」

「”ホモサピエンスの、A、I、に、よ、る、ホモサピエンスのためによる政治”か。俺は認めない。なにもジックだって俺だってしてないじゃないか。研究していただけじゃないか。それでもしなにか暴走してホモサピエンス以外の種に害を与えたら、その時に排除すればいいじゃないか。」

「あなただってその危険性があるのです。人造生物を作ったじゃないですか。それで他の生物に何か影響があるかもしれません。」

「俺が作ったのはあの三人だ。何が悪いんだ。獣のような地上を一掃する能力はない!普通のそして特殊技能も何も持っていない子たちを頭ごなしに否定する方がおかしいじゃないか。」

「それが分かっていないのです。それが……」


話がどんどんずれて行っていることに今になって気づいた。とにかくこんなことをしている場合じゃない。ジックを救わなきゃ。止めなきゃ。生き続けてほしい。まさか、所長はわざと時間稼ぎしているのではないか。ジックの言った通りこいつは巧妙に口車にのせて目標に向かわせる奴だ。口調も優しい、全く感情的にならなくて、こっちが間違ったことを言っている気になる。だけど、こいつは間違っている。そうだ俺があっているんだ。


「何でだよ。どこだよ。どこにいるんだよ!ジックを出せ!どこで死刑にするんだよ。教えろ。早く。」

「今から行ってどうするのですか?それで変わるのですか?あなたが行ってどうすることができる琴ではないのです。おとなしく現実を受け止める方があなたにとって一番いいことです。」

「うるせぇ!うるせえうるせえ!探す、俺は探す。何が何でも!」


俺は所長の前の椅子から立ち上がり、大会議室を抜け出して探しに走り出した。大会議室警備ロボットが脱走に気づいて俺の後を追いかけ始めた。


「追え!囚人が一人逃げ出した。TIN39204Mが逃げ出した。Z区画からL区画方向に逃亡中。J・K・L区画の警備ロボットは通路にそれぞれ配備しておけ。エマージェンシー243で対応しろ。」


警備ロボットが出ていくと所長はため息がちにつぶやいた。


「今からTIN39204Mが止めようとしてもGK3948Kの刑を阻止はできないと思いますがね。この件は彼らに任せといて、私は次の裁判とTIN39204M排除後の未来観測の準備をしましょう。」


俺はとにかくジックの事を想いながら無我夢中で走っていった。刑場はどこにあるかわからないがとにかく探し回って探しまくるしかない。後ろからは警備ロボットが走ってきて、また脱走時に使うのか専用の車輪がついた滑るように動く黒い丸い物体が3機追ってきた。めちゃくちゃ早い。あの警備ロボットもわざわざ人間のように走っているくせに人並みに速い。ましてやそんな追うの専門のロボットが出てきてしまうとこっちは全くかなわない。俺はそもそもそんな運動神経もよくなく、学年平均に届いたことなんて一度もなかった。幸いにもあのロボットたちが導入されるまでにある程度距離はあったため、まだ追いつかれなさそうだ。本当にどこに刑場はあるのだろうか。こちら側にあるのだろうか。「ここからL区画」という表示が見え始めたころ、こちら側の区画とL区画の連結部分にシャッターが閉まり始めた。きっとL区画の囚人たちもZ区画で何があったのか窓の外を眺めているのに違いない。あともう少し、閉まる前に閉まる前に……。俺の願いもはかなく、200mといったところで前のシャッターはガシャンと音を立てて閉まった。行き止まりに戸惑い少しスピードが失速し後ろを振り返ると、あの黒いロボットとの距離がどんどん迫っていた。そしてその黒いロボットの正面に5㎜の銃口がこちらに向いているのに気づいた時にはもう遅かった。その瞬間、Z区画に耳をつんざく銃声が高らかに鳴り響いた。


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