不思議な国の真菜になった理由?
真菜は周りを見回してみるとそこはもう自分の部屋ではなかった。手術台のようなところで、部屋にはなにもなく、ただ奥に銀色の重そうなドアと手前にガラスのドアが見えた。そして…
ガラスの向こうには知らない30代ぐらいの男の人がいた。身長が高く、体型はもやしのよう、猫背で、表情からは嬉しそうだが目に何か光がない…いわゆる死んだ魚の目をしていた。目は細く、鼻は少し大きめ、さらに引きつったような笑みはちょっと気持ち悪かった。
男はガラスのドアを開け入って来た。反射的にかかっているバスタオルのようなものを真菜は引き寄せた。男は白衣を着ていて、手にはカルテのようなものを持っていた。
「自分の名前言える?」
「山吹 真菜…」
「体に違和感はある?」
「ないです…ていうかまっまさかあなた私に何かしたんじゃないでしょうね…」
「状況がわかんなくて困惑しているよね…。まあそりゃそうか…」
男はカルテのようなものに少し書いた後、顔をあげた。
「なにも君にはしてないよ…。俺が記憶喪失でもしてない限り…。とりあえず、着替える服と着替えるところを用意するから少し待ってて…」
真菜は顔を赤らめた。男はガラスのドアから出て、ガラスの向こうで、服の詰まった洗濯カゴのようなものを持った。そして、左にあるデパートにある試着室のようなものの中に服を入れ、試着室ごと、ガラスのドアから入ってきた。
「一応持ってきたよ…。俺は上で用事を済ましてくるからカゴの中の服、好きなの選んで着ていいから」
そういうと男はガラスのドアから出て行き、奥の方へ歩いていった。真菜はそれを呆然と見届けた。真菜自身今どうなっているかを理解していなかったが、とりあえず、男の言う通り手術台から起き上がり、試着室に入った。
「えっと…昨日は部活行って…」
カゴの中を服をとりあえず真菜は漁ってみた。
「なんで、下着まで入ってんの…やっぱりあの男怪しすぎる……ちょっちょっと待って…どの服もサイズが私用になってるわ。なんであいつは私のスリーサイズまで、知ってるの…」
カゴの中には若干真菜の趣味に似てるようなチョイスの服ばかりだった。何から何まで自分のために用意したものとしか考えられなかった。そう思うと、少し身の毛がよだった。今まで無防備だった体にどんどん装備が加わって行った…。完全防備された真菜は港から出た。ちょうどその時、男が奥から戻ってきた。
「おっ、ぴったりだね、当然か…」
「あなた誰なのよ、言わないなんて私に失礼じゃない?それ以上に私の寝込みを襲って拉致ったことで警察行きだけどね」
「だから、寝込みを襲ったとかじゃないから!…まあまあ、警察とか言わないで落ち着いて…。俺の名前を言うから…、俺は湊 ミハイエル…」
「あなた、日本人よね。喧嘩売ってるの?」
「悪かった、悪かった、一度言ってみたかったんだよ…湊 誠司…それが俺の名前だよ」
「誰よ、なんか私のこと妙に知っているけど、ストーカー?私を持ち帰って何したの…警察呼ぶわよ」
男は真菜の顔を少し気にするようにチラチラと見ていた。
「いやいや、君がここにいるのは…そっそうそう…この間…うちの地下に、うっ埋まっていたんだよ…」