セカイ創造
“貴女の命が一週間限りのものだったら貴女は何を残しますか?”
唐突に投げかけられた質問に私は戸惑った。
「私が残したいもの、か。」
少し悩んでペンを取る。
そして、大好きだったお話と、いつか見た幼い夢を描き出す。
―一日目 題名:大好きだったお話
夢のようなセカイ。
真っ白なセカイ。
そこに一粒の種を植えた。
―二日目 題名:大好きだったお話
今日はずっと雨が降っている。
種は芽吹かない。
セカイが真っ白なままなのはあまりにも寂しいため、緑を増やそうと土を耕す。
風が強いから、植えた種はどこかへ飛んでいってしまうのではないだろうか少し心配。
―三日目 題名:大好きだったお話
大きな嵐がやってきた。
嵐の影響で耕した土は荒れてしまった。
セカイは余計に寂しくなってしまい、それが悲しかった。
―四日目 題名:大好きだったお話
雨が止んだ。
雨上がりの澄んだ空気と青空に太陽の光が明るく照らす。
なんだかとても気分が良い。
最後に仕上げとしてそこに虹を描いた。
「まだ時間があるからちょっとだけ、つけたそうかな。」
―五日目 題名:いつか見た幼い夢
満天の青空。清々しい空気。
足元には堅い大地。
虹が輝くと種が芽吹いた。
それを合図に優しい風が吹くと、辺り一面に草木が生える。
太陽の光は輝き、草木はあっという間に大きくなった。
その景色はまるで楽園のよう。
―六日目 題名:いつか見た幼い夢
だいぶ色づいた景色。
自然に囲まれたセカイ。
今度は嵐が来ても壊れないように護り人を創ろう。
護り人はたくさんの『いし』で造られたゴーレム。
大自然の楽園を、綺麗に光り輝く虹を、誰かの愛を護るゴーレム。
ちょっと素敵だと思うんだ。
―七日目 題名:完成図
今日は安息日。
何もやらなくて良い日なんだ。
辺り一面に広がる緑。葡萄の木は誰かの愛を吸って大きく育ち、美味しそう。
葡萄の他にもいろいろあるけど私は葡萄が大好きだから、この楽園には葡萄が多い。
ゴーレムはたまに、ちょっとだけ葡萄をつまみ食いしている。
そんな景色になんだか笑ってしまう。
―八日目
病室に置かれたスケッチブックには印象的な大きな虹と、色鮮やかな緑の中でゴーレムの膝に座って微笑む少女の絵が描かれていた。