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再びの召喚

懐かしい浮遊感と視界が黒く塗りつぶされる感覚。そして無理やりこじ開けられるように私はこの世界と再び接続された。この世界にとってみれば私のような異世界人は異物でしかない。それを力技で世界に認識させ、繋ぎとめるのだからそれなりの反動を受ける。


わずかなめまいを感じながら辺りを見渡す。神聖な雰囲気を抱かせる石造りでできた空間。儀式を行う部屋のようだ。


「ここは……どこだ?」


前回とは違う場所のようだ。おかしい、と私は内心で考えながら注意深く世界を再認識する。だが結果は前回と同じ世界であるという答えだ。私が間違えるはずもない。何よりも強くアレの存在を感じているのだから。


私の推測ではここは同じ世界であっている。ということは時間がずれているのだろう。魔王と対峙した時よりも未来だろう。それが何年、何十年それとも何百年かの問題だが。そして前回とさらに違うことは私以外にも召喚された人間がいることだ。男が二人、女が一人。私を含めて計四人召喚されたようだ。


「おお、勇者様方、どうか世界を救いください」


私たちが召喚が無事完遂され、感動のあまり言葉を失っていたローブの集団の代表格が私たちに言う。私以外の三人の勇者たちはまだ事態を飲み込めていないのか「はい?」と声を上ずらせて返答する。


「えっと、いったいどういうことなんですか?」


三人の勇者の中で、一番しっかりとしていそうな青年が尋ねる。何故、何が起こっているのかを問いただす。


「色々と込み合った事情がある故、ご理解できるように申しますが、あなた方様はこの世界を救う勇者として召喚されたのです」

「この世界は今、存亡の危機に立たされているのです。どうかお力をお貸しください」


勇者たちは顔を見合わせ、この事態を理解しようと必死だった。いや、一人はにやりと笑みを浮かべ「世界を救えってか。いきなり呼んでおいて無茶いうなよ」


絶対にこれからの展開を予想したのだろう。勇者となって、魔物を倒し、ハーレムを築き、魔王を滅ぼす。そんな夢物語のような冒険譚を。勇者の先輩であるこの私から言わせると、そんあ甘い夢のようなことはない。否応なしにここは現実である。


にやつく男はさらにいう。


「人の同意なしにいきなり呼んで罪悪感もないのかよ、お前らは?」

「そうよね。いきなりそんなこと言われても無茶よ」


少女も同意したように非難する。だが一番最初に声を上げた男は「話はわかりました。僕でよければお力になりましょう」と正義感で満ちた表情でいう。


「おいおい。いきなり決めるなよ。俺を巻き込むな」


にやついていた男は真顔になりさらに続けた。


「だが報酬次第では考えてやってもいいぞ」

「そうねぇ。それに元の世界に帰れるのかも聞きたいわ」

「その件につきましてはまず王様と謁見していただきたい。褒賞の相談はその時にでもお願いします」


そしてローブの集団に呼ばれたメイドに私たちは王へと案内される。その最中、一言もしゃべらずにいた私に正義感あふれる男が話しかけてきた。


「君、ずっとしゃべらなかったね。やっぱりまだつらいよね。いきなりこんなとこに呼ばれたら」


実際はずっと召喚に使われた魔法陣を解析していたからだ。いったいどんな効果があり、何を呼ぶものか、契約は何かなどをすぐさまに把握したかった。


「そうだな」

「でもきっと大丈夫だよ。勇者として呼ばれたんだ。何かすごいチカラが僕らにあるはずだしね」

「俺もそれは同感だな。こういった小説や漫画なんかでは定番だしな」

「そうよね。それになんだかチカラが湧いてきて、身体が軽い気がするわ」


あまり彼らと会話をする気がない私はそっと話の輪から離れる。窓から外をのぞく。

どこまでも空が高く、そして異世界らしい町並みがどこまでも広がっている。そんな町並みに長く目を向ける暇はなく、私たちは廊下を歩き、謁見の間にたどり着く。


「ほう、こやつらが今代の勇者か」


謁見の間の王座に腰掛ける、豪華絢爛な衣装に身を包んだ偉そうな老人が私たちを値踏みして呟いた。こうも舐めるようにみられては不快な印象を受ける。それに私はこいつを知らない。


「ワシがこの国の王、アージェイル・ローランドだ」


その名を聞いて私は今いる国を把握した。前回呼ばれた帝国の西隣にあるローランド王国か。それがなぜ、勇者召喚をいているのだろうか。確か勇者召喚は帝国だけの秘術のはずだったのだが……


「さて、まずは事情を説明せねばなうまいな。我が世界は滅びへと向かいつつある」


簡単に話をまとめると、およそ五十年前に封印された邪悪なる魔王が復活し、その脅威に晒されている。その証として次元の亀裂が発生しており、凶悪な魔物が大量に亀裂から発生している。このままでは魔族の侵略を阻止することはできず、前回にのっとり、勇者召喚が行われた。というのがことのあらましだ。


「話はわかりました。力の限り勇者としての使命を全うしましょう」

「いやいや待てって。召喚された俺たちはただ働きしろと」

「そうですね……助ける義理もないですし。ただ働きした挙句、平和になったらはいさようならとかされたらたまったのじゃないわ。というか帰れる手段はあるのか聞きたいですし、そのあたりはどうなのですか?」

「君たち、そんな非情なことをいってはいけないよ。こうして呼ばれたのも何かの縁だ。助けてあげようよ」


あまり乗り気ではないふりをする二人を正義感が強い青年が説得する。いや、お前の眼は節穴なのかと私は言いたくなる。見てみろよ、にやにや笑っているではないか、楽しそうに。


そんなことよりも私は気になることがある。何故、魔王が復活しているといわれているのか。


「もちろん、勇者様方には存分な報酬を与える予定である」


さらに付け足すように臣下のものが言う。


「他にも援助金の用意ができております。ぜひ、勇者様方には世界を守っていただきたく、そのための環境を整える所存です」


そこまで言われたらしょうがない、といった風に二人の勇者は納得したように、頷いた。


「では勇者たちよそれぞれの名を聞こう」


正義感がある青年が一歩踏み出し、「僕の名は月島光輝。16歳の高校生です」外見は美少年と表現するのが一番しっくりするだろう。顔のつくりは端正で、体格は170程度だ。切れ長の瞳と白い肌。意志の強さが伺える。


「じゃあ次は俺だな。黒月真宵。18歳だ」


一言でいえば小悪党といえばいいのだろう。顔のつくりは平凡だが、彼の持つ目は一際特別だ。酷く薄汚れた黒の眼。先ほどの様子を見るに頭は回るのだろう。


「私は大山美月。17歳よ」


どこかのアイドルにでもいそうなほど、容姿は素晴らしかった。整った顔、豊満な胸、くびれた腰、引き締まった尻。魅力的な身体の持ち主である。だが私から見れば、女の武器を磨き上げ、それを利用して利益を得ている人間だろう。


そしてここにいるすべての者の視線が集まる。


「十六夜紅月。23歳だ」



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