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『シンデレラに転生したけど王子と結婚したくない』

シンデレラに転生したけど王子と結婚したくない その2

作者: 安和

 前回の続き。

 ついにお城にやってきてしまったシンデレラ。送ってくれた青年は、「私が居ると貴女の邪魔になるでしょう」と言って去っていきました。あなたの行為が邪魔でしたなどとは言えないシンデレラ。謙虚で奥ゆかしい日本人だった、といえば聞こえはいいですが、ただ単に悪い人間になりたくなかっただけです。一般的に『悪い』と思えば口に出来ないシンデレラ、その所為で色々な事が全て悪い方向に流れていると気が付くことは無いのでしょうか。いや、きっと無いのでしょう。それがシンデレラが『シンデレラ』である所以(ゆえん)なのですから。


 言いたい事が言えず、挙句の果てに置き去りにされたシンデレラは、きらびやかな宮殿のきらびやかな女性達が居るホールで呆然と立っていました。どうやら状況が理解できず、いや、理解したくないようです。呆然としていた所為でお城の出入り口が分かりません。たとえお城から出れたとしても、お城の位置を大まかにしか知らなかったシンデレラですから、自分の家(小屋)に帰れるかどうかすら分かりません。それでも、迷子になったとしても早く出たいシンデレラ。とりあえずホールの中をうろうろすることにしました。そのうち出口が見つかるといいな、と思いながら。


 そうしていると、シンデレラは多くの視線を感じました。


(やっぱり化粧もそんなにしてないし、うろうろしているから目立つのよ。あぁっ、早く出たい。出口何所よっ!!)


 少し恥ずかしい思いをしながらキョロキョロと出口を探すシンデレラ。本人は忘れていますが、シンデレラは美少女です。薄く化粧がされただけの彼女は初々しさと、しかしそれを裏切る豊満な肢体が絶妙な色気を出していたのです。ホールに集まる男たちの視線が集まるのは当然の事です。もちろん女達の嫉妬の視線が集まる事も。そんな彼女が不安げにキョロキョロしていたら手を差し伸べてあげたくなりますが、そんな男たちよりも先に一つの女性の集団がシンデレラを取り囲みました。


(いったい何よ。王子が出てくる前に僻み? 私は平々凡々で、そして出てくる前に早くお城を出たいのにっ。時間かかるじゃないっ)


 内心ではそんな風に思いながらも、シンデレラは軽く微笑んでその女性達を見た。

そんなシンデレラを見た女性達は見下すような、女性としても余裕の笑みだと受け取りました。シンデレラの内心などは知らずに。まぁ、実際にお城に着ておいてすぐに帰りたいと思っているのはシンデレラぐらいのものでしょうから、考え付かないのも当然なのですが。


 苛立った女性達のリーダーと思われる女性が綺麗な笑みを作ってシンデレラに話しかけました。



「出口ならあそこですわよ」



 と。ご丁寧に軽くそちらを示して。シンデレラは軽く目を瞠りました。その表情に気をよくした女性達はくすくすと笑いながら、次々にそのリーダー格の女性の言葉に乗っかりました。



「まあ、お姉様。そちらの方はお手洗いを探していたのではなくて?」


「確かに。でもあまりにもキョロキョロうろうろされるのも迷惑ですわ」


「そんなに行きたいならお城のお手洗いを堪能して、もう帰ったらよろしいのではなくて?」


「道が分からないのなら、案内させますわよ?」


「まあ、そんな子ども扱いして。可哀相ではありませんか」



 口々に出されたその言葉。言葉だけ見ればシンデレラを心配するような言葉もありますが、扇で口元を隠しクスクスと笑いながら言っているので、ただの嫌味でした。そんな女性達はシンデレラが悔しがってどんな言葉を返してくるのか、それともどんな顔をするのかと内心ニヤつきながら待っていました。

 それに対するシンデレラの返答といえば、



「ありがとうございます!」



 喜色満面の笑みと嬉しそうな声でそう答えました。女性達は一瞬その笑みに見惚れてしまいましたが、ハッと気を正しました。嫌味を嫌味で返されたかと思いましたがシンデレラの内心と言えば、



(出口を教えてくれた上に、案内してくれるなんてなんて良い人っ!! って違うっ!! なんててナイスで嫌味なクソババア……いえ女なの!!)



 元来の口の悪さが少しだけ現れていましたが、そんなことは気にしていられません。シンデレラは早く此処から出たいのですから。 

気を取り直した女性達はまた何か言おうとしましたが、



「出口へ案内してくれる方はどなたですか? 出来れば女性がいいのですけど……」



と言ったシンデレラに口をパクパクさせて何も言えませんでした。そこで『どなた?』だけで止まるのならば『案内させる男を落とすつもりなのっ』といちゃもんをつけることが出来ますが、ホッとしたように、しかも女性が良いと言われてしまえば何も言えません。そこで女性達は気が付きました。



『この子、本気で帰りたがっている』と。



 半強制的に拉致されて連れてこられたシンデレラの事情を知らない人から見れば、何故この人は此処にいるのだろうという話になるのですが『早く、早く』と目を輝かせて訴えかけてくる、変な気迫を纏ったシンデレラに聞けるものは誰も居ませんでした。


 お姉様と呼ばれたリーダー格の女性が自分の傍付きの者を呼ぼうとした時、それはシンデレラの後ろからやって来た青年にやんわりと止められました。



「その子を帰されてしまっては困りますね」



 その聞き覚えのある声に、シンデレラはビクリと体を揺らしました。そうして恐る恐る後ろを見てその青年を目で確認すると、シンデレラは眩暈を起こしフラッとしました。周りから見れば助けれられて安心して気が抜けたと思うでしょう。しかし、実際はシンデレラは己に愚かしさに眩暈を起こしたのです。



(あぁっ!! あんなにもたくさんヒントがあって、予兆がたくさんあったのにっ。どうして気が付かないのよっ!! バカッ。私のバカッ!!)



 そんなシンデレラの腰に手を回して、支えた青年は、戸惑っている女性達に告げました。そう、シンデレラにではなく。



「この子は私の婚約者なのですから」


(何その確定事項っ!! 了承した覚えはねぇよっ!!)


 目の前に居る女性達は悔しさで泣き崩れました。シンデレラも泣きそうでした。もちろん、回りの人間が思うような嬉しさで、ではありません。当然の如く、悲しさで、です。

少しあふれ出た涙を、シンデレラに逃げられないようにがっちりと腰を掴んでいる、シンデレラを半強制的にお城に連れてきた青年―――王子は、ぺロリと舐めました。獲物手に入れて前にした肉食獣のような凄みのある笑みに、シンデレラは硬直しました。そして王子はそのままシンデレラの頬にキスをしました。シンデレラの脳の収容能力(キャパシティ)を超えた行為と状況は、シンデレラの意識を奪っていきました。そして気を完全に失う前に、シンデレラは思います。




(だれか、タスケテ……)




 あまりに切実過ぎるその願いは、誰にも聞き届けられる事はありませんでした。きっとどんなに抗っても『シンデレラ』が眠るその場所は、王子様の腕の中なのでしょう。




それを『シンデレラ』が本当に望んでいたかどうかは、別として。






―――――――――…………



 ふと目を覚ますとそこは異世界でした―――――。



そんな事を思いながら、シンデレラは寝かされているベットのから見える豪華な天井を見ていました。シンデレラはゆっくりと状況を考えていました。



(言ってみたかったのよね。こういうテンプレ的発言。でも、テンプレっていったい何の略で正しくはどう意味なのかしら……)



 一瞬浮かんだ現実を逃避するように自分に言い訳をして疑問を浮かべてみる。それでも疑問は消えてなどくれませんでした。

シンデレラはチラッと自分の格好を見ました。自分の身体には異変は見られませんが、豪華なドレスから簡易なネグリジェに変わっていました。



(何で変わって……いや、まさかね……)



「そのまま寝かせるのは苦しそうだったから着替えさせたよ。それ、可愛いでしょう?」


「ひっ……」



心のうちで呟いていた疑問に答えるように声が聞こえました。いきなり出された声にシンデレラは驚き、声を上げてしまいました。シンデレラは擦れた――いえいえ乙女などという可愛らしい女性などではなかった為「キャー」なんて言えず、引きつった悲鳴が出ました。と、言っても一瞬の事でしたし、シンデレラ自身「キャー」などという悲鳴を上げる女性は【ぶりっ子】だという偏見を持っていたため、死んでも口から出さないでしょう。


 そんなシンデレラを放っておいて、眠っていたはずの淑女の部屋に侵入したマナーのなっていない王子様はシンデレラを見てニッコリと微笑みました。



「あれはまだ早いと思うなぁ」


「……何がですか?」


「ん? 黒が。その年齢ならピンクか白ってとこかなぁ。意外に大胆なんだね」



 何を言われたのかすぐに理解できないシンデレラ。ゆっくりとその言われた意味を咀嚼していくとあることに思い当たりシンデレラは顔を赤くさせた。



「な、な、な……」


「ん? 侍女に着替えさせるのは何かもったいない気がしたから俺が着替えさせたけど、何か問題あった?」


「問題大有りじゃボケッ!!アンタの常識はいったいどうなってんのよ!!」


(……はっ?!)



 感情的になって叫んでしまった後に気が付いたシンデレラ。相手は一国の王子様。そんな相手に暴言を吐いたとあっては不敬罪でつかまってしまっても文句は言えません。()の魔法使いのようにするわけにもいかないのです。そもそも王子様を殴る事は言語道断です。



「フッ、ハハハハハッ。聞いてた通りだ。やっぱり貴女は面白い」



 一人でアワアワと慌てるシンデレラに王子様は声を出して笑っていました。その様子にシンデレラはポカンとなります。聞いていた通りとはいったいどういう事なのでしょうか。シンデレラのこの性格は長年隠してきたものですから、他に知っている人間などいないはずなのです。そう、居ない筈―――――……アレ?

 シンデレラはそこで疑問を覚えました。最近、感情的になって怒った事がありました。髪は綺麗な銀色の変態――――いえ、魔法使いにです。王子と魔法使いが関わりあるなんてシンデレラは知りません。そもそも魔法という概念があるなんて知らなかったシンデレラですし、『シンデレラ』のお話は絵本程度でしか知らないのですから実際の所わかりません。そして、ここが彼女の言う『シンデレラ』の世界とは限らないのですから。その定義から間違っているかもしれないなんて思えないシンデレラには、もう一生分からないでしょう。


 ともかく、シンデレラは何か情報はないかと王子様の顔をジッと見つめました。物語でよく出てくる王子様と同じ金髪碧眼。金と青の色をもつ王子様と銀一色の魔法使いは全然違います。が、シンデレラは違和感を覚えました。



「そんなに見つめられると照れますね」


「……もう、一生色ボケていてください」


「俺は貴女しか愛せませんよ。もう、ね」



 勘違いの言葉を不敬に当たる言葉で返したにもかかわらず、怒る事無くしかもシンデレラにとってはゾッとする(鳥肌が止まらなくなる)ような返事を返してきました。



(こんな気障な台詞が言えるなんて………いや、これがこの世界の男の人の普通なのかもしれないし)



 皆が皆、そういう人ではないということはシンデレラにもわかっていました。流石に初対面から気障な―――いや、口説き文句を言う人は居ないでしょう。まあ、信じられないのは『一目惚れ』を信じていないシンデレラらしいと言えばらしいのですが。

 あの人と雰囲気が似てる。なんて思ってしまったシンデレラは、自分に言い聞かせるようにそう呟いていました。しかしそれを裏切るようにシンデレラは後ろからガバッと抱きしめられました。



「あげないよ。これは僕のなのだから」


(いやぁぁぁぁぁぁぁっ。何で居るのよコイツっ!!)



 抱きついたのはさっきまでシンデレラの頭の中に居た人物―――――銀髪銀眼の魔法使いでした。明らかに不法侵入である魔法使いに、王子が何を言うのかとシンデレラは気になりました。シンデレラの意見は無視しても、この状況だけを見ればこの侵入者と仲が良いと思われてしまいます。びくびくしながら王子の出方を待っていると、



「駄目だ。例え兄上でも、俺は『王太子』なのだから。俺のだよ」


(……兄上っ?!)



 王子様の言葉に驚いているシンデレラに魔法使いはシンデレラに後ろから抱きついたまま微笑みました。それを見たシンデレラは恐る恐る王子様の方を見れば、そちらも微笑んでいました。



(ど、どうして二人して微笑んでいるのっ?! 怖い!! 眼福通り越して恐いよっ!!)



 そう内心で恐れ戦いているシンデレラの身体に抱きついている魔法使いは、震えているシンデレラの身体に気が付いたはずなのに、無視をしました。そして魔法使いはそのまま王子様に向かって言います。



「違うよ。この子は王家に入れば問題ないのだから。だから僕の方で良いんだよ。それに僕の方が先に会ったからね」


「愛に順番なんて関係ありませんよ兄上。俺が惚れた。それだけだ」


「良い事言っても駄目だよ。選ぶのはこの子だ。それに、………この子のパンツは僕の方が先に見たんだから!!」



 魔法使いがそういった途端、シンデレラの心臓以外の機能が全て停止しました。そのあとやっと機能し始め、言葉の意味を咀嚼し終わったシンデレラは近くにあった枕を手にとって魔法使いの顔を殴りました。



「失せろこの変態魔法使いがアンタには恥じらいとかモラルと言うものが無いのかていうか私は誰とも結婚しないっ!!」



 そう叫んだシンデレラはぜいぜいと肩で息をしていました。王子様の前では大人しくしていようと思っていたシンデレラでしたが、どうやら魔法使いの所為でプツリといってしまったようです。しかも魔法使いに初めて会ったときは【勘違い魔法使い】と叫んでいましたが、今回は【変態魔法使い】にグレードアップしていました。先にパンツ見たのだからと声高と自慢げに言われてしまえば誰でもそうなるでしょう。こんなのも王子で大丈夫なんでしょうか、この国は。


 殴られた魔法使いと言えばうれしそうにしていました。どうしましょう、この男。変態だけでは留まらずM属性だったようです。シンデレラは離れようとしましたが、魔法使いはシンデレラのお腹に手を回してガッチリと拘束して抱え込みました。どうやらこの兄弟、シンデレラをガッチリ抱きこむのが好きなようです。


 ジタバタと暴れる手足を拘束されたシンデレラはプルプルと震えていました。もちろん悲しみで――――ではなく怒りで、です。でもシンデレラの顔つきは怒りを通り越して無表情でした。でも、俯いていた為に兄弟にはわかりませんでした。そんなシンデレラの首筋に、魔法使いはキスをしました。驚いてビクッとなったシンデレラは顔を上げると至近距離に居る王子様に驚きました。顔を背けようとすれば顎をつかまれました。



「そんなに怯えて……兄上が恐いか?」


「怯えているのは僕にじゃなくてお前だろう」


「俺に? ………可愛いなぁ。その怯えた顔」


(へっ?! 何で兄貴がMで弟がSなの?! やめてよっ! 放してぇぇぇぇぇぇぇ!!)



 シンデレラはそう叫びました。内心で。今回も声に出す事は叶いませんでした。そもそもこの兄弟は中身と外見が全く合っていないのです。精悍な顔つきで、若干釣り眼で見た目肉食系の兄である魔法使いは変態でM属性。儚げな顔で猫目で柔らかい笑顔をする見た目草食系の弟はS属性だったのです。シンデレラは混乱していてまだ気が付いていないようですが、最初私と言っていた王子様はいつの間にか一人称は俺になっています。因みに怪我を治療してくれた彼は、彼の外面です。大きな猫を飼っているのです。


 美形兄弟(しかも王子)に迫られるという乙女の夢(だがシンデレラにとっては悪夢)の体現にシンデレラは思考を停止させました。そんな中、誰かがその部屋に入ってきました。その音にハッとシンデレラはしました。この状態は褒められたものではないのです。しかし、



「お、熱いなぁ二人とも」


「父上。ご無沙汰しております」


「父上、邪魔」



(王子様酷いっ!! じゃ無くて国王様?! その発言はどうかと思います、そして私を助けてください)



 嫌がるシンデレラを意図的に無視した国王様。シンデレラはそれが意図されたものだと気が付かずに目で助けを求めます。父親の意図を汲み取った兄弟は顔を見合わせてニヤリと笑いあいました。二人の息子達が気が付いたのを確認すると国王様は話を続けました。



「それにしても二ヵ月後に挙式なんて急ぐなぁ」


(は?)


「それまでにどちらか選んでおきなさい」


(え?)


「父上はどちらに?」


「いやぁ、この娘と我が息子が結婚すると言ったら隣国から抗議の手紙が来てな。どうやら隣国の王子も惚れていたらしい」


「チッ、あの色ボケが。あの程度の(ツラ)でつりあうわけねぇだろ。身の程知らずが」


「父上、僕が国ごと消し炭にしようか?」


(え? 王子様口悪……え? 消し炭? 国ごと? そしてこれはいったい何事?)



 混乱するシンデレラを放っておいて親子三人は物騒な話し合いを続けていました。そして魔法使いの物騒な発言に首を横に振った国王様にシンデレラはホッと胸をなでおろしましたが―――――



「大丈夫だよ。最近あそこ目障りだったから、あること無い事騒ぎ立ててついでに潰してくるから」


(え?えぇぇぇぇぇぇぇぇっ?! 何その物騒?! 戦争ってこと?!)


「流石父上。尊敬する」


「避難民の誘導は任せて、とりあえず王家だけなければ良いから」


(なんであんた達はそこに疑問を持たないのよっ)


「わかった。じゃ、行ってくるから後のことは頼んだぞ」


「解ってる」


「いってらっしゃい、父上。僕が必要になったら呼んでね」


(何であんた達は戦争吹っ掛けに行く父親をのん気に見送れるのよっ?!)



 内心突っ込んで疲れてきたシンデレラに、国王様から最後の爆弾が落とされました。



「あ、招待状はもう各国に送った後だから、絶対二人から選んでね」


「え?」


「いやぁ、ウチの息子達に急かされてねぇ……。じゃ、花嫁修業頑張って。それまでには終わらせるから」



 その言葉にシンデレラは王子様のほうを見ました。王子様はシンデレラの視線に気が付くとニッコリと笑いました。初めて会った時とは違う、なんとも真っ黒な笑みで。



(やられたぁぁぁぁぁっ!!)



 招待状を出されてはもう確定事項と変わりません。破談となってしまえば王家の体面を傷つけることになってしまいます。不敬罪です。牢屋行きになってしまいます。それに、目の前に居る二人はそんな事を許してくれる人達には見えません。完全に外堀を埋められたシンデレラ。もう、逃げる事は叶わないでしょう。



「さぁ、我が姫」


「僕を」


「俺を」


「「選んで?」」



 片膝をついてシンデレラに手を差し出す王子様(二名)は多くの世の女性から見れば羨ましい限りでしょう。しかし、その多くの世の女性に入らないのはこのシンデレラ。顔が引きつっていました。


「い、いやぁぁぁぁぁ!! 無理っ、無理ったら無理だから!!」


「選べないの? 我が儘だなぁ」


「しょうがないから、二人で相手をしてあげようか?」



 二人のシンデレラに対する勘違いっぷりはどうやら健在のようです。勘違い野郎ばかりで可哀想だと思われていたシンデレラでしたが、どうやら王家に捕まったことが、一番の不幸のようです。シンデレラよりも策士だった王子様に捕まったことが運の尽き、とでも言っておきましょう。



 お城から出る事が叶わなくなったシンデレラ、それでも彼女は自由を目指して花嫁修業のために出てきている指南役から逃げて、今日も廊下を走っています。



「修行はお辛いでしょうが、そんな事では王子と結婚は出来ませんよっ」



 そう言って追いかけてくる指南役に、シンデレラは何時ものように返します。走っているそのスピードを落とさずに。



「私は、王子と結婚したくないのよぉぉぉぉぉぉっ!!」






(完?)





王子様→弟……腹黒策士肉食系見た目草食系男子。S男

魔法使い→兄……変態勘違い草食系見た目肉食系男子。M男

 因みに弟の方の勘違いはわざとです。シンデレラの反応を楽しんでいるに過ぎないので(笑)




これで一応完結です。『続きか関連話見てみたいなぁ』なんて言ってくれる安和に優しい方がいらっしゃれば……わかりませんよ?←『書きたいなら書けばいいのに……』とか言わないでっ。私は優しさが欲しいのっ!!(シンデレラのような愛は要らないが。だって重苦しいよね? あの二人……)


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― 新着の感想 ―
[良い点] きゃー!って叫ぶ子をぶりっ子だと言い切る 作者さんに厚い感動と尊敬、同感を覚えました。 とても楽しかったです!(*´ω`*)
2014/06/15 22:31 退会済み
管理
[一言] 魔法使い良いですね。魔法使いと結ばれてほしい!!
[一言] この国の王家は最強ですね。 魔法使いと王子が兄弟という設定はおもいっきし笑えました。 しかも取り合い・・・・ 自由目指してガンバレシンデレラ!! 私は続き希望です。 いつまでも、チャンスを狙…
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