5.28日目~36日目
28日目~30日目
フロア2に現れたのは枝が寄せ集まって人型を象ったブランチャーという名のモンスターだった。
アクティブモンスターのようで、こちらに気付くと攻撃してくるのだが、適当に殴ったらバラバラになる。
フロア2を探索する。偶に見つける宝箱からお金をゲットするが、特にトラップ的な何かがあるわけでもなく、ボス部屋らしき広い空間に到達したのは、探索を始めてから3日目の昼頃、現れたのは動く木だった。
高さが3Mほどの木は先端に瘤のある長い枝を2本振り回している。
遠距離からの攻撃手段の無い僕は、近づいて攻撃しないとならないが、今の僕なら多少被弾しても勝てないはずは無いだろう。
とりあえず背後にいる妖精さんにアイコンタクトで行くぞと見ると、筋肉を盛り立たせて応援で返事をする兄貴。僕も筋肉を盛り立たせると木へと向かった。
僕が近づいていくと、枝を振り回すのを止める木。
そのまま約15mまで近づくと枝が振られる。
右からの1発目――しゃがんで避ける――成功!
左からの2発目――前に転がって避ける――成功!
転がった勢いからそのまま立ち上がり前にダッシュすると頭上に瘤が見えた。予想しなかった3発目――避ける暇もなく背中に衝撃。ダメージ自体は1と少ないが、ノックバックで走りが止まり、そして頭のスイッチが切り替わる。
俺は後6歩ほどの所にいる木に向かい大きく一歩前に出る。
右から振られてくる瘤。
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
バキャァッ!
右拳で殴り粉砕。一歩前に出る。
左から振られてくる瘤。
「ぬうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!」
バキャァッ!
左拳の裏拳で粉砕。一歩前に出る。
頭上から振り下ろされる瘤。
「ふん!ぬぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
両手で掴み頭突きで粉砕。一歩前に出る。
木にはもう攻撃手段が無いのか、ただ佇むのみ。
「これで俺の番だな」
俺は肩の筋肉を解すように右腕を回すと、
「ぬおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
木の中心へと拳骨を叩き付けた。
バカンッ!
「もいっちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
ドガンッ!
バキバキバキバキッと殴りつけた中心から縦に避けていくと左右に倒れ消えていった。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
勝利の雄叫びのまま頭のスイッチが切り替わる。
確かに避けるよりも迎撃した方がよかったなぁっと戦闘を振り返る僕。
でも迎撃といえどダメージはくらうので、ノックバックで身体が止まるだろうと考える。【マッスルハイ】のノックバック無効で成り立つ戦闘方法なので参考程度に納めることにしたのだが、よく考えてみれば別に迎撃しないでも相手の攻撃無視できるじゃんっと思い直した。まぁボスも倒したことだしと意識を戻す。
広間の奥に見覚えのあるドアを発見し先へ進んだ。
ドアを閉めるときに広間に放置したまま忘れていた妖精さんが親指を立てていたが、消えて良いぞと念じるとそのまま消えてった。最近ちょっとわすれがちな兄貴でした。
『ブランチャー41―――410
トレンチャー1―――2000
フロア2攻略――――2000 TOTAL4410』
フロア2としての成果は特になく、レベルアップ無し。日付が変わる頃に30日目の徴収金3000が所持金から減った。
31日目~33日目
フロア3はフロア1と同じ洞窟だったのだが、出てきたモンスターはかの有名なゴブリンだった。
身長は140㎝ほどと以外と大きく、緑色の肌と理性を感じさせない人に似た醜悪な顔。片手剣や片手斧を持ち汚れた皮鎧を着たゴブリンは必ず2体以上の集団で現れ、襲いかかってくる。
2体で現れるならまだ反撃をくらう前に倒せるのだが、3体以上のゴブリンに襲われるとどうしても1撃はくらってしまう。
ダメージ自体は今だ1なので痛くはないのだが、【マッスルハイ】になってもすぐに戦闘が終わるので、本能が満足していないというか、発散不全でイライラが溜まっていった。
そんなイライラが頂点に達しようかとする2日後、早くもボス部屋かと思われる大部屋に到達した。
しかしそこにいたのは今までのような大型のボスではなく、5体ほどのゴブリンとゴブリンを身長だけ伸ばしたひょろ長いゴブリンが1体。その長いゴブリンは拗くれた木の棒を持っている。
もう早く戦闘がしたくてしたくて仕方がない僕は、背後の兄貴に目配せすると応援を待たずに駆けだした。
長いゴブリン以外のゴブリン達が武器を振り上げて一斉に迫ってくる。
戦闘のゴブリンの顔を殴り、スプラッタにした後、簡単に他のゴブリンの攻撃をくらい、頭のスイッチが切り替わる。
「はっはぁっ!」
まず1体。
「はぁぁぁ!」
2体目――っと目の前に30㎝くらいの炎の玉が迫る。
「はっ!」
拳で殴りつけたら消えた。ちょっとHPが削れたみたいだが、こんな程度は熱いうちにはいらねぇ。
「はっはぁっ!」
3体目。
「はっ!」
4体目。また炎が迫るが殴りつけて消滅させる。楽しいじゃねぇか!
「はっはぁっ!ひっひっひっ!ふっ!へぇぇぇぇ!フォォォォッ!」
5、6、7、8、9体目終了!
「ふっ!はっ!」
炎を殴り消し、10体目のゴブリンを殴殺する。
さぁ最後の仕上げだ。
長ゴブリンは何か喋ると杖をこっちに向ける。その杖の先っぽから炎の玉が出た。
「ほれっ!」
俺に迫る炎の玉を殴り消す。ゆっくりと一歩前に出る。
「んなもんよりよぉ」
再び迫る炎を殴り消す。一歩前に出る。もう俺の拳が届く距離。
「こっちの方が熱いぜ。見ろコレを!」
左腕の力瘤を魅せる。俺の筋肉サイコーだろ!あちーだろー!
呆けた顔をする長ゴブリン。
「んじゃ、さよならだ――はぁぁぁぁっ!」
右拳を長ゴブリンの顔面に叩き付ける。そのまま顔面がハジケ飛び消えてった。
ピロリロリーン
音と共にスイッチが切り替わる。
久々のレベルアップだ。今までのイライラを解消できたので、スッキリした気分のまま前方にあるドアを開けて帰った。
『ゴブリン91 ――――1820
ボブゴブリン1―――3000
フロア2攻略――――3000 TOTAL7820』
結構お金入ってきたなと思ってたら思い出した。。妖精さんの事を。まぁ勝手に帰っただろうとそのまま部屋に入る。
翌日召還した兄貴の目が少々赤かったので、ごめんと素直に謝ったら、白い歯を煌めかせ笑って許してくれた。喋らないから勝手な僕の想像だけど。
34日目~36日目
フロア4は洞窟に魔法を使う長ゴブリン改めボブゴブリンが2体で現れるフロアだった。
しかも火だけでなく水であったり風(?)であったり土であったりと、1体のボブゴブリンにつき1つの属性なのだが、遠距離攻撃の無い僕は先制攻撃ができず、1撃50前後のダメージをくらいながら【マッスルハイ】になり、2体のボブゴブリンを殲滅する。
1戦闘で最低2発100前後のダメージをくらうのは非常に痛かったのだが、何よりも痛かったのが炎の魔法がお腹の辺りに当たったときだ。別にダメージの事ではない。萌えたのだ。間違えた燃えたのだ。パンツが。
相変わらずパンツ一丁に足袋姿で戦闘していたのだが、骨格が変わりピチピチになった僕のボクサーブリーフが燃え落ちた。
どうしようかと考え、目に入った兄貴のビキニパンツ。奪ったら泣かれるかなっと考えてみたが、少し冷静になってみると兄貴の温もりを感じる想像をしてしまい、自己嫌悪に陥る僕だった。
その日は赤い光の黒の部屋の近くでHPが尽きる頃合いまで狩ることにし、ブランブランさせながら戦った。
服を着て戦うモンスターとブランブランさせながら戦う僕。更に自己嫌悪に陥った。
良い事もあった。なんと20体倒したらLVが上がったのだ。今までのゴブリン達に比べて格段に経験値が増えたのだろう。
結局その日はHPが500を切るか、LVが3つ上がるまで頑張ろうと思い、LVが3つ上がった所でHPも738だったので帰った。
ショップで耐魔法のパンツを探すと、25800でMDEF+20だけが上がるパンツを発見。ビキニタイプとボクサータイプで考えて、ビキニタイプを買った。ほら、ボクサーだと足の筋肉が綺麗に見えないというか、べ、別にビキニが格好いいわけじゃなくて筋肉の為なんだからね。勘違いしないように。ちなみに物は〈四弦蜘蛛のビキニブリーフ〉という4色の糸を紡ぐ蜘蛛から抽出した糸で作ったパンツらしい。四弦蜘蛛の糸は抗魔素材として他の防具にも多く使われているのを見かけた。高いが特にレアというわけではないようだ。
翌日魔法をくらっても燃えるどころか、ダメージを軽減するビキニパンツ一丁で戦闘する僕。
そして探索を始めてから2日目、1時間でボブゴブリンを30体倒せる鬼沸きスポットを発見。持てるだけ回復アイテムを買い込み、第2の修行を開始することにした。
長くても10日間の修行と考えていた僕だったが、2日後に得たアビリティによって60日にも及ぶ修行の日々になるとは、まだこのときの僕は考えもしていなかった。
ある程度の基本的な強化が終わったら、同じような繰り返しになるので、その場面をドッカンと飛ばしてダンジョン終わらせる予定です。
次回、妖精さん少しだけ活躍します。
明日更新予定