4.27日目
ちょっとプロットを変えていたため、予定よりずっと遅くなってしまいました。
たぶん今後は飛び飛びの日付で、サクサクっとダンジョン編を進ませて最強にしていく予定です。
前方の巨大スライム、後方のマッチョ。
ダンジョンの一番奥だと思われる場所へ3時間かけて到達した僕は、大部屋でボスと思われる巨大スライムに出会した。
楕円形のドームの奥で鎮座するスライムは、こちらへ攻撃してくることはなく、巨大だろうとノンアクティブのようで、僕は転生によって得たスキルを使い、妖精さんを召還して今に至ったわけである。
妖精の身長は驚きの2m、艶光りするツルツルの、スキンヘッドはムキ卵。芸能人もビックリの、白いその歯を煌めかせ、0円よりも金をくれ、そんなスマイル100万ドル。どんなプロテイン使っているの、と聞きたくなるのはムキムキ筋肉。ビキニパンツを身につけて、筋肉を見ろとポージング。彼は兄貴、妖精兄貴。
兄貴の応援を受けて、僕も負けじと筋肉を盛り立たせる。気持ちだけは攻撃力が上がった気がする。
深呼吸を数回、さぁ戦闘だ。
巨大スライムに手が届く位置まで移動し、ボクシングの基本姿勢アップライトスタイルで構える。
右足で地面を蹴り左足で踏み込み、その勢いを右拳に乗せて全力のストレート。
拳が巨大スライムに当たった瞬間、パンッと見事にハジケ飛んだ。もしかしてと思っていたが一撃でした。攻撃をくらわなかったので【筋肉酔い】になる事もなく終了。背後を見ると、妖精さんが親指を立てて消えてった。
短いため息を漏らした後、巨大スライムによって塞がれていた奥のドアへと歩きながら思い出す。15日前の転生後のことを。
白い光を抜けて前と変わらない黒の部屋で目覚めた僕の頭に最初に聞こえたのは『転生を完了しました』の声。
続けざまに、
ピリルン『称号【超越者】を取得しました。スキルを取得できます。お選びください』
と聞こえ勝手に暗転、“索敵”“鑑定”“武器術”“体術”“魔装術”“魔砲術”“信仰術”“精霊召還術”“妖精召還術”“魔獣召還術”と選択肢が現れた。
武器術と魔装術や魔砲術に信仰術は却下。体術には惹かれるが、たぶん索敵と鑑定の2つがあれば便利になるだろうと思う。
だがしかし、僕は迷わず“妖精を召還する”を選んだ。
だってもうずっと一人だし、そろそろ話し相手欲しいし。
妖精というのだから、様々な物語に出てくるフェアリーのように、小さくて可愛くてお喋りで、きっと僕を癒してくれるんだろうと夢見てた頃がありました。はい。
その後ステータスのアクティブスキル欄を見て絶望した。
【妖精召還術】:HPとMPを共に1%捧げる事で、妖精を召還できる。召還可能妖精【兄貴】
実際は大きくてムサくて無口で、まったく癒しの存在しない兄貴でした。
【兄貴】:筋肉から生まれたと言われる妖精。穏やかで純粋な筋肉を持ち笑顔を絶やさない。筋肉で魅せる後衛応援型。
しかも後衛応援型という後ろで応援しているだけ。
支援ではなく応援。ATKが上がった気がするのは、本当に気がしただけだった。確認済みだ。
他は称号に【超越者】が付いたこととLVが1(_20)になったこと。【筋肉の誓い☆】に変化してたけど説明は一緒。その他は変わってなかった。
そう変わってなかったのだ。転生する前の数字と転生後の数字が。
LVが1になったにも関わらず、ステータスが同じ。
その後の戦闘でわかったことだけど、LVが2になるのに前はスライム5体だったのに対して今回は10体かかった。単純に考えて経験値は2倍必要になったようだ。それでもステータスがそのままだったのは嬉しかった。僕の筋肉が減ってないって事だから。
その後13日の間をレベルアップに費やして、転生から15日目の今日やっとボスらしき巨大スライムに到達したのである。
戦闘はずっと妖精さんには応援してもらってたよ。熟練度が上がれば新たな妖精さんを得られる可能性があるからね。
そんなわけで、兄貴の応援を受けつつ一撃で巨大スライムを撃破したドアの先は、大きな木々がアーチとなって出来た林道でした。
道幅や高さは前のダンジョンと変わらず、景色が林道と変化しただけ、生い茂った木の葉の隙間から光が漏れているが、その光が太陽なのかどうかはわからない。ためしに木々の間に足を踏み入れようとしたが、見えない壁に阻まれて先へ進めない。
つまりダンジョンの新しいフロアに移動したのだろう。背後を見ればドアはそのまま道を塞ぐように存在している。
戻れるのかとドアを開けたその先は、どういうわけだか赤い光の黒の部屋だった。
もう一度ドアを開けるが、先は林道。前の洞窟には戻れないのか。
とりあえず自室へは簡単に戻れるようなので、戻ることにしよう。
「ワープ!マイルーム!!」
赤い光から青い光へ。いつもの青い光の黒の部屋へと移動する。
『スライム33―――――165
スライムキング1――1000
フロア1攻略――――1000 TOTAL2165』
なんとボスだろうスライムキングのお値段1000でした。ボスだからだよね。
今日はフロア攻略記念と一人ビール片手にお祝いしようと決めた。寂しいけど兄貴は呼ばない。
翌日、朝食を済ませ準備を終えた僕は、日課となったステータス確認をする。
名前:高田 勝 年齢:21歳 種族:日本人☆ 所持金:17110
LV 10(_20)
STR 125 AGI 17 DEX 17
VIT 125 INT 1 MND 1
FP 0
HP 8250/8250 MP 1100/1100
ATK 417 MATK 1
DEF 417 MDEF 1
SPD 7 MSPD 1
WEIGHT 12
職業:―
称号:【超越者】
信仰:【筋肉の誓い☆】
アビリティ:【ワープ】【シルバーの拳】【シルバーの肉体】【無形種殺戮体】
アクティブスキル:【妖精召還術☆☆☆】
パッシブスキル:―
状態:―
武器:シルバーの拳★★★☆☆
防具:シルバーの肉体★★★☆☆ 黒のボクサーブリーフ
他:4次元ドックダグ 皮革地下足袋
シルバーの拳★★★☆☆はATK+180、シルバーの肉体★★★☆☆はDEF+180。シルバーはアイアンの★が5つとなった後に変化した。初期で+100だったのが☆1つにつき10増えていき現在180となった。そしてSTRとVITの極振りの結果、ATKとDEFは共に417まで成長したのである。
そこに無形種に対して2倍の攻撃力になる【無形種殺戮体】が発動しATK834がスライムキングに向かった。自分でやっといて言うのもなんだが、ご愁傷様と最後の言葉を贈ろう。
ちなみに皮革地下足袋はSPD+1してくれる12000で買った装備である。足袋を初めて履いたけど、これは素晴らしすぎる。性能以上に柔軟で動きやすく、SPDが上がるのも納得と言えるだろう。
【妖精召還術☆☆☆】は☆が増えてるが、いまだ兄貴以外出てこない。
そして【ワープ】で行ける場所が〈バルバレイダンジョン フロア1~2〉〈マイルーム〉に変化していた。
またフロア1にも行けるようだが、スライムキングと戦えるのならまた行っても良いと思う。とりあえず今は先に進もうと思っているが。
ステータスを閉じた後、鏡に映る自分の姿を見て思う。ずいぶんと変わったなと。
転生したことで骨の太さ、骨格が変化したようで、身長も心なしか伸びた。体重は驚きの20kg増量。転生前に量ってないので転生が原因とは限らないが。
筋肉は言わずもがな増量中。体重分増えているはず。そして最近のお気に入りは上腕二頭筋。昔の僕には出来なかった力瘤がモリッと出来上がるこの瞬間がたまらない。カッチカチ言ってたあの芸人の何処がカッチカチなのかと言えるぐらいのカッチカチさも自慢だ。
ああ、早くこの僕の筋肉を誰かに見せたい。いや魅せたい――――はっ、僕は何を……筋肉を見せたいだなんて、思ったこと無かったはずなのに……いやでもこの筋肉を見せたいと思うのは自然なことだよ。そうだよ。おかしいことは何も無い。うん。
だからもっと、もっと強くなろう。筋肉を増やそう。
何かに急かされるように僕は、パンツ一丁に地下足袋姿で黒の部屋へと飛び込み、フロア2へとワープした。
ちなみにフロア1の適正クリアLVは7だったりします。
AGIを優先的に上げるとSPDが上がり、スライムに対して攻撃回数が上がり、被攻撃回数も下がり、貯めたお金で買った武器の攻撃力で十分勝てるようなフロア1でした。
ボスの一撃クリアは想定外すぎる事態ですねー。巨大スライムのアクティブスキルまで作ったのに無駄に終わった。
妖精さん《マッチョ》の今後の活躍にご期待ください。