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永田町へ行ってきます ~いろいろありまして、次の職場は国会議事堂に決まりました~  作者: のらりくらり


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第3話 課外活動

うーん。時間が迫っているのはわかるけど、どれもイマイチなんだよな……。


今年の春。中学生になった功は、悩んでいた。


それもそのはず。入学した中学では新入生は必ずどこかの部活動に所属しないといけないという暗黙のルールがあったからだ。


小2から野球一筋で生きている新平や興味さえ湧けば何にでも手を出す由紀子と違ってこれが好きとか、こういうことをやってみたいというものが一切なかった功には、この謎ルールが癪で仕方なかった。


「たけちゃん。入部届け出した?」


入部届の締め切りが3日後に迫ったある日の昼休み。


未だに空欄を埋められないでいた功は、小6の時、同じクラスだった松浦武史に訊いてみた。


「出したよ」


「そっか。因みに何部に出したの?」


「放送部だよ。ほら、俺って運動神経ないからさ」


松浦は、苦笑しながら言った。


「ところで、功ちゃんは出したの?」


「それが、まだ、決めていないんだよ」


「マジ?あと、3日しかないぞ。早く決めないと」


「大丈夫。それまでには決めるよ」


うーん。やっぱり、どれもこれもイマイチ興味が持てねぇよ。


家に帰った功は、オリエンテーションの時に貰った部活動案内の資料に何度も目を通したが、その中に興味が持てそうな部活動は1つもなかった。


そうこうしているうちに提出期限の日がやって来た。


「あっ。そうだ。立花。放課後、職員室へ来るように」


朝のホームルーム終了後。担任から直に呼び出しを受けた。


このタイミングで言うなよ。俺だけ提出していないってバレバレじゃないか。


未提出の件については何かしら言われるだろうと思って覚悟していたが、一時的とはいえ他の同級生達の注目の的になったのは恥ずかしかった。


「失礼します」


「おい。立花。こっちだ」


職員室へ入ると、担任が自席から手を振っているのが見えた。


「あのぅ。部活動の件ですよね?」


担任の右隣に立った功は、恐る恐る切り出した。


「そうだ。わかっているなら話は早い。提出期限は明日までだが、親の同意も必要だからあと2日。あと2日だけは待ってやる。その間に何でもいいから書いて必ず提出しろよ。話は以上だ。わかったらとっとと帰れ」


担任は、それだけ言うと軽く頭を小突いた。


時代が時代ならパワハラで訴えられる、もしくは、モンスターペアレンツが乗り込んできて社会問題になってもおかしくない行為だが、当時の公立校の教員(特に男性教師)は、全員が全員ほぼ例外なくこんな感じで威張り腐っていた。


あー。マジでどうしよう。


重い足取りで自宅の玄関を開けると、由紀子の靴があった。


姉ちゃん。今日は馬鹿に早いな。早退でもしたのかな?


因みにこの頃、新平は、高1の時よりもさらに練習の虫と化していて帰りはどんなに早くても夜の8時を回っていた。


「ただいま」


居間に入ると由紀子は、卓袱台に大好物のポテトチップスの袋を広げて漫画を読んでいた。


「ただいま。姉ちゃん。今日は早いね」


「これ見てよ。練習中に足首、捻っちゃったから今日からしばらく部活はお休みだよ」


あの姉ちゃんの口からそんな言葉を聞く日が来るとは……。


美術部。書道部。手芸部。中1から中2の夏まで、由紀子は、文化系の部活動を渡り鳥していた。元々がインドア派で気も多いタイプだったからそれについてはなんとも思っていなかったが、まさか、自他ともに認めるスーパー運動音痴が中2の秋から運動部へ入部。しかも、女子中学生がやる部活動の中でも1、2位を争う運動量の多いバレーボール部に入部するとは夢にも思わなかった。


<姉ちゃん。どうして、いまさら、運動部なの?>


何ヶ月前だったか。失礼を覚悟で1度だけ、その理解不能な行動をしたことについて訊いたことがあった。


すると、由紀子は怒るどころか至って真面目な顔で「身長が伸びて体重が減れば、バレーでもバスケでもどっちでもよかったのよ」と言っていた。


言葉は乱暴だが、当時の由紀子の体型やお年頃を考えるとこれ以上、わかりやすい動機はないと思った。


「あっ。そうだ。姉ちゃん。ちょっと、相談に乗ってほしいけどいいかな?」


功は、カバンを置くと卓袱台を挟んで由紀子の真正面に座った。


「あー。皆まで言わなくてもわかっている。部活動のことでしょ?後輩であんたのクラスの子から聞いて知っている。それで、あんたは何をどうしたいわけ?あの担任、私が1年の時の担任だったからしつこさもわかっているつもりよ」


凄い。全部、お見通しじゃないか。恐るべし、体育会ネットワーク。


「特にやりたいことも興味もない。でも、強いて挙げるなら」


功も馬鹿ではない。先生や周囲から「何かやれ」だの「関心を探せ」と言われ続けて「結局。何もないです」と答えるのはさすがに芸がないと思っていたので、ヒントを探す努力だけは続けていたのだ。


「強いて挙げるなら何?」


「柔道を習ってみたい。って言っても本格的な物じゃなくて護身術程度の技を2つ、3つくらいマスターしたらそれで十分」


「それ、いいじゃない。わかったわ。でも、うちの学校には柔道部はないから私の知り合いの伝手で柔道を教えてくれそうなところを探してあげる。だから、あんたも担任にはっきり言いなさいよ。大丈夫。うちの先生達って部活動をしていない人間=不良予備軍と決めつけているから入部するように指導しているだけ。習い事をやることにしたので部活動はやりませんって言えばそれで納得してくれるわよ」


これで、無理に部活動に入る必要はなくなったぜ。やっぱり、持つべきものは、ちんちくりん、じゃなくて、顔の広い姉ちゃんだな。


午後10時。宿題を済ませた功は、敷布団の上に体を横たえた。昨日までの寝つきの悪さが嘘のように消え、この日は数分とかからず眠りに落ちていた。


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