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永田町へ行ってきます ~いろいろありまして、次の職場は国会議事堂に決まりました~  作者: のらりくらり


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第17話 サラリーマン復活

「立花さん。ちょっと、いいかな?」


タイムカードを押そうとした時だった。声のした方に顔を向けると事務所の中にいた若い女性事務員と目が合った。


座ったまま。しかも、手招きで人を呼ぶって……一族だか何だか知らんけど、マジで態度悪いな。まさか義務教育すら受けてないってことはないよな?


暑さと長時間労働の疲れもあって多少カチンときてはいたが、下手に毒づいてまた就職活動なんてことになるのも嫌だったので、精一杯の作り笑顔を浮かべて事務所の中へ入った。


「何か用ですか?」


「立花さんって、今、アルバイトだけど7月には契約職員に格上げになるじゃん」


「はい。先日、社長からもそう言われました」


「そしたら、社会保険加入の手続きをしなきゃいけないのよ。それで、悪いけど、明後日までにここに書いている書類を提出して欲しいのよ」


女性事務員はそれだけ言うと席に戻り、机の上に置いてあった鏡を見ながら髪の毛をいじり始めた。


手招きの次は髪いじりですか……俺、とんでもなくやばい職場に就職しちゃったみたいだな。でも、まぁ、これで時給生活とおさらば出来るからいっか。


再就職先の介護施設『双葉』は、典型的な一族企業で厨房の時給は同業他社の相場よりもかなり安く設定されていた。


そういう事情からなのか。自分を除く人達(といっても自分を含めて4人しかいない)は、いずれも生活に余裕のある年金受給者だった。


お金に余裕があると心にもゆとりが生まれるとはよく言ったもので、そういう人種と関わっているうちに少しずつではあるが以前の自分に近づいている感じがしていた。


「立花さん。昇進決まったらしいね。おめでとう」


「そんなぁ。昇進っていっても契約職員ですよ」


「時給から月給取りになるんだろ?立派な出世だよ」


「そうですかぁ」


「功ちゃんもこれで少しは生活が楽になるね」


「そうですね」


我が事のように昇進を喜んでくれる厨房の『女帝』こと辻晴美さん。些細なことでも大袈裟に褒めちぎる厨房の『ダンディー』こと加納隆一郎さん。そして、時給生活中いつも生活のことを気にかけてくれていた厨房の『肝っ玉母さん』こと沖田芳美さん。


この3人と知り合えたことは本当にラッキーだった。


「これ、辞令よ」


こいつ、マジで態度悪いな……3歳くらいからやり直さないとダメだな。


翌7月1日。どうにかこうにかムカつき爆弾の暴発を抑えた功は、作り笑顔で辞令を受け取り時給生活から脱却した。


もう少し働いて今度こそ調理師免許を取得するぞ。


この日から功は、次なる目標を胸に秘め日々の仕事に励んだ。


しかし、その目標が達成することはなかった。


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