第6賞 大国の謀略
この頃、日本の首都東京から海を隔て2100km離れた隣国の首都では、ある画策が進められようとしていた。
その国とは、数十年でGDP(国民総生産)が世界第2位に登り詰めた中夏権民協調国であった。
その首都喜京のある権民政府弁公庁の豪華な一室(執務室)では、国家主席の儲併兵は、苛立ちで、いつも無表情である温和な顔が、引きつっていた。
その原因は、国の経済面の失策が続き経済をけん引してきた消費と投資のどっちもが脆弱となり、生活に困窮する民が増え、凶悪犯罪が大幅に増加して来ているのだった。
各地で小さなデモらしき事も多々起こって来ているが、国家権力(弾圧)によって徹底的にもみつぶしている・・・。
しかし、このままでは、1989年の天新門事件のようなことが起きるかもしれない。
いや、もっと、もっと、大規模な・・億人という群衆による大暴動が・・・。
この日も儲の頭の中は恐怖で一杯だった。過去にいた独裁者達の悲惨な最後が頭をよぎる。
「おい、秦傲を呼んでくれ。」と、儲は秘書へ頼んだ。
秦傲とは、中夏で国家安全部長をしている冷徹無比な秦傲蒙至と言う名前の男だった。
間も無くして、秦傲が急いで執務室へやって来た。
「儲様、何か座いましたか?」
「まあ、そこへ座りなさい。」
儲は、自分の座っている一人掛けのソファーの前にある対面のソファーを指差した。
「秦傲君、我が党の人気が下がっているらしいじゃないか。」
「ご心配は、ございません。我が国の政党は中夏協調党だけですから。」
「そんなことを言ってるんじゃない。国内で頻繫にデモが起きていることを言ってるんだ。」儲は言葉を荒げて言った。
「我が国の津々浦々まで及んでいる監視カメラによって、全人民を掌握出来てるのは世界を見ても我が中夏だけです。それに盗聴の精度は抜群にアップし下流の人々の日々の会話までチェックしております。更にネットの制限も十分にかけておりますし、数十億のパソコンや携帯電話も監視できております。」
秦傲は、平然と申し開きをした。
「なのに、どうしてデモが起きるのかあ。」
「儲様、各家庭の部屋から部屋まで、すべて盗聴器を置きましょうか・・。そのような、いたちごっこより不満を取り除いた方が良いと思いますが。」
「民の鬱憤は、生活苦だろ。」
「良い方法があります。日本から全て奪うのです。お金も誇りも。」
「どういう方法があるのか。」
「日本のアホ政治家のお陰で、労務費タダ同様(エイグル人強制労働)の太陽光発電システムで我が国は日本から儲けており、更に日本全国民から毎月、再エネ賦課金という形で我が国へ納付させ潤っていますが、中夏14億人の人々の糧には、まだ足りないのです。日本人達には強制労働をする属国になってもらわないといけないのです。それを実現させるには、日本国を根本から奪うしかないと思います。まずは、日本のアホ政治家の力で、日本国全ての屋内外問わず監視カメラの映像や音声までも中夏へと転送させ、政治や防衛に関する全ての情報を入手することが肝要であります。それによって日本の弱みを握り骨抜き(抵抗できない状況)にしてから、戦争を起こし奪うのみです。まずは、日本の誇りを奪うことから始めようと考えます。それには、中夏の人民達に経済悪化の起因は日本のせいだと反日活動を更に植え込み、考えたことは、怒りの矛先の日本に競馬で勝つことです。」
「なんで、競馬なのか。」
「日本には、ハヤブサイチバンと言う、かつてない世界に誇る名馬がいます。それに騎乗しているのは、如雲ペルドと言うアイドル的な有名騎手がいるんですが、それに中夏の馬が勝てば中夏の全人民は熱狂するでしょう。」
「勝つことが出来るのか?」
「勝つのではなく、勝たせるのです。」
「その方法は?」
「まずは、日本のアホ政治家の力を借り、中夏・日友好競馬会を催すことにします。中夏の馬5頭VS日本の馬5頭をレースに出場させ、ハヤブサイチバン以外の日本の馬4頭については馬主や調教師、騎手に於いても中夏の息がかかった者達とします。ハヤブサイチバンの対処ついては、大型動物用の合成麻薬が我が国の新薬品として出来ていますので、JRA(日本中央競馬会)には、我が国のハニートラップにかかった職員が多々おり、その者に、合成麻薬が入った注射器を渡し、レース前にハヤブサイチバンへ打てば、レース中にまともに動けなくなってしまいます。ハヤブサイチバンはラリった(非正常)上に、他の9頭の馬は敵だらけ、勝てるわけはございません。」
「面白い、やってみるがよい。」
「承知致しました。」
儲の細い目に怪しい光が揺れ動いていた。
これで、我が栄華が続けるられるな。




