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第4賞 金・金・金

あれから、5日が過ぎた。

期限は後、2日しかないが、長沼は資金の工面が出来ないでいた。

自分が用意できる最大のお金は2000万、雪乃さんから400万を借りるとしても残り3000万が必要となってくるが、5日間、親戚、知人や、学生の時の同級生の家を回ったが集まったお金は120万。

殆どの人は、話を聴いて、「ぶんちゃん(長沼)が困っているなら、その馬のために寄付するから、返金は要らないよ。」と、有難いお言葉を頂いたが、みんな5万~10万位で、百万単位で貸す話は出てこなかった。

長沼は、行く先も無くなり新橋駅近くをとぼとぼと、歩いていた。

後ろから左肩をぽんと叩く音と、「しゃちょうぉ。」と馴れ馴れしい声がした。

振り向き相手の顔を見ると、そこには、長沼厩舎を辞めた吉村が立っていた。

吉村は、長沼厩舎にいた時は、髪は丸刈りだったのに、今は真ん中分けで髪型や着ているものは、韓流アイドルのようだった。しかも化粧もしていた。

長沼は、吉村にいやな印象しか残ってなかったので、その場から立ち去ろうとしたが、吉村は長沼を離さず近くのスターバックスへと無理やり誘った。まるで、馬場から厩舎へ馬を追い込む牧畜犬のように。

店に入ると吉村の自慢話が始まった。

長沼厩舎を辞めた後、ホストクラブで働き始め、新米だったが、上得意の熟女に気に入られて、高級マンションで悠々自適な日々を過ごしているらしい。

しかし、吉村の頬がこけて、化粧で誤魔化しているが生気がないように感じた。

吉村から長沼厩舎の状況について聞かれたので、つい、ある馬を助けるため資金集めをしている最中だと言うを話してしまった。

「社長、ここで10分ほど、待ってもらえる?」

「いいが、なんで?」

吉村は、「いいから。」と、言いながら店を出ていった。

10分を過ぎた頃、吉村は戻ってきた。

椅子に座ったら、「社長、はい。」と言い厚い封筒を長沼に差し出した。

「手元に50万しかなかったから、銀行へ行ってきたんだ。200万円ある。その馬に使って。返金はいつでもいいからね。」

それを言うと、唖然としている長沼を後にして、店の出口へ向かった。

「あっそうそう。俺、馬肉を食うのやめたんだ。」振り返り吉村は言った。

「吉村君、本当にありがとう。またぁ、厩舎で働かないか。待っているから。」

吉村は微笑みを浮かべながら、長沼へお辞儀をして出ていった。

長沼は涙を流しながら、吉村がいた席を眺めていた。

数十分後、長沼は店を出た。

長沼は、新橋駅から電車に乗ろうとし歩いていたら、また、後ろから左肩にぽんと叩く音がした。

「ぶんちゃぁん(長沼)、おっす。元気にしてたか。」

振り返ると、クマのように大きな男が立っていた。

「城さぁん。」

城と呼ばれた男は、若い頃、長沼と一緒にやっていた草ラグビー仲間で、今は中堅建設会社の社長をしていて、それに中央競馬会の馬主をしていた。

「もう夕方だ。飲みに行くぞ。」

いつもながら長沼に有無を言わさず、城は歩き出した。


城は虎ノ門にあるカウンターが主の小さな小料理屋の七福神に長沼を誘った。

七福神の女将は、福岡出身の人で、博多弁での会話が面白く九州出身の大企業の社員の人達で店は常に人気があった。

早くに店に着いたのに、既に混みだしていた。

「女将さん、二人だけど入れる?」

「やあ、城さん。ちょっとさぁ、待っとってね。」

お客さんに、席を変わってもらい二人が座れる場所が確保でき、城と長沼は椅子に座った。

「女将さん、冷えたビールを大瓶で。」

「うちのビールはみんな冷えとるばぁい。」女将は笑いながら答え、瓶ビールの栓を開け、二人のコップにビールを注いだ。

すぐにお通しとして、ほうれん草と厚揚げのみぞれ和えが出された。

七福神は食べ物のメニューがなく、その日の決まった料理が順番に出され、それを食うだけ。全て美味しいが、たまに出るしめのカレーライスが天下一品だった。

店に入って1.5時間が過ぎ、しめのカレーライスを食べ始めたら、

「ぶんちゃん、なにか悩み事あるんじゃない。」と、城は長沼へ聞いた。

「ええ・・・。」

長沼は城と飲みに行った時は常に饒舌となるが、今日は会話に頷くだけだった。

「ぶん(長沼)、同じ男に股の間を握り合わせた仲じゃないか。悩みがあるんだったら言ってみな。」

「いやらしかぁ。お二人はそんな趣味を持っていたとは、それも3人で。」その会話を聞いていた女将がつい大声になり言ってしまった。

「そうそう、複数プレイで、3人でなく8人だが。」

女将は呆然となっていたが、城と長沼は大きな声で笑いだしていた。

「城さん、女将さんは勘違いしてますよ。」

「いやぁすまんすまん。いいですか。ラグビーの競技でスクラムは、両チームが各々8人で組むが、フッカーのぶん(長沼)とプロップの俺(城)が、スクラムを組んだ時に、その後ろから押す役のロックが腕を二人の股を通してジャージーを掴み二人の尻を肩で強く押しあげる。そのことを言ってたんだが。」

「そげなこともしらんで・・・恥ずかしかぁ。」女将は顔が真っ赤となり、カウンター越しから、城の左肩を右手でピシャリと叩いていた。

城と長沼は更に大きな声で笑った。

お陰で長沼も和んできた。

「ぶん、さあ、聴こうか。」

「はっ・・い。」

長沼は抱えている問題をぽつぽつと話し始めた。

「あの吉良のとこのジュニアだな。知ってるよぉ。しばきにいってやろうか?なあんて、暴力はいかんし・・。

よし、分かった。今まで貸してくれた人へは、お金を戻してきな。3400万は俺が払うから、しかし条件がある。マーズとか言う馬の馬主は俺とぶんの二人で新たな会社を立ち上げ対応すること。馬主登録については、登録条件があるが俺の馬主実績で大丈夫だろう。もう一つは、ぶんは長沼厩舎を手放すこと。後継者は、雪乃さんだっけ?従業員の?ぶんの説明でしっかりした子だと言うことが分かったし。新しい厩舎主は虎谷でいいな。」

長沼はうんと頷き泣いていた。年なのか、城ももらい泣きをしていた。

ぐすっ。「それがよか。よかよ。」えっ女将さんまでも、聴いていたの。イチバン凄く泣いていたぁ。


七福神の神々が導いてくれたのかも・・・。

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