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第17賞 コンビ復活へ

ペルドは病院のベットの上から永い昏睡状態から抜け出ることが出来た。

翌日、ペルドの意識が戻ったとの報告が報道関係者へ連絡が入り、都心の駅前では『ペルド復活』との見出しの号外新聞が民衆へ配られた。

新橋駅付近で、何気なく号外新聞を受け取った長沼は大井競馬場へ戻り、長沼厩舎の休憩室で、新聞を開き読みだした。

「長沼さん、何が書いてる新聞ですか?」

休憩中の吉村が聞いてきた。

「昨日、天才騎手、如雲ペルドが復活したらしい。」

「そうですか。」

まるで、業務上の会話みたいで、それ以外、表情が暗い二人には会話を続けようとはしなかった。

長沼厩舎の主達みんなは、マーズが壮絶な最期を迎えた昨日から、お通夜状態で、無口になっていた。

もう一人のぬしの雪乃は、この日もマーマーズことを忘れようとし、厩舎にいる他の馬の世話を懸命にしていた。

この状態はいつまで続くのか・・・。永遠かも知れない。


それから3日後、ペルドは体調もある程度、回復でき、同じ病院内で早くもリハビリを始め、ハヤブサイチバンとのコンビ再出発を目指していた。

ペルドの目標は、このコンビで年末の最大イベントである有馬記念で優勝を勝ち取ることだった。


ペルドはきついリハビリに耐え、1ヶ月後には、騎手の練習が出来るようになり、更に2週間後には、奇跡的に競馬場での騎手としてレールへ出れるようになった。

最初のレースは、5着と不本意な結果となってしまったが、徐々に順位を上げ、同じく復活したハヤブサイチバンとの再コンビを組むようになってからは連戦連勝だった。

この日も、ペルドとハヤブサイチバンのコンビはレースで勝ち、ペルドは報道関係者から取材を受けていた。

「ヒトヤマTVですが、如運ペルドさん、本日は優勝おめでとうございます。連勝続きで黄金コンビ復活と考えて宜しいでしょうか?」

「いやぁー。ありがとうございます。自分ペルドとハヤブー(ハヤブサイチバン)も事故前よりパワーアップしていて、その結果として勝ちが続いていると思います。」

「次は有馬記念レースがありますが、勝ちに行きますか?」

「当然、レースに出る限り(勝ちに)拘りたいと思いますが、レースに出られる方、皆さん素晴らしい騎手の方ばかりで勝つのは難しいですが、有馬記念には思い入れがありますので、全力で当たりたいと思います。」

「ご覚悟が聞けまして、ありがとうございます。最後に、もしイダテンヤリオル(マーズ)が生きていたら、レースで勝てますか?」

「イダテンヤリオルの冥福をお祈りいたします。んぅ~ん、難しいご質問ですね。イダテンヤリオルが存命でレースに出て活躍していた時、自分は昏睡状態で、どういう名馬だったか判断はしかねますが、多分、皆さんが喜ばれるような素晴らしいレースになったでしょう。」

「ありがとうございます。」


大井競馬場の職員室では、職員2人が、このテレビ放送を見ていたが、その内の一人が、「あれ?如雲ペルドって、こんな髪の色をしてたんだっけ?まるで、ヤリー(イダテンヤリオル=マーズ)の馬体やたてがみの色、なんていったかなぁ。そうだ!薄墨毛うすずみげ色だ。」

「イメチェンで染めただけだろ。」もう一人の職員が、そう答えた。

たまたま、ある職員へ書類を提出に来ていた雪乃は、ヤリーという言葉にビクッと反応しテレビ画面を見始めた。

如雲さんの髪の毛の色があの身体(馬体)にそっくり。雪乃はマーズを思い出し、しゃがみ込み泣き崩れてしまった。

少しずつ、マー君を忘れようとしてたのに・・・。

「長沼厩舎の社長、如何いたしましたか。」「虎谷さん、大丈夫ですか。」

雪乃の周りには、心配して大井競馬場職員の人垣が二重、三重と出来ていた。

外では季節的にはちょっと早い淡い初雪が舞っていた。

ユキノの悲しく切ない想いがユキと化したのか。

それとも、死んだマーズの雪乃への叶わぬ想いをのせて、故郷の北海道から薄墨色に染まった雪を都心へ連れてきたのか。

運命はユキノように消え行くもの・・・ではなく、想いがあれば、必ず。


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