第14賞 再戦 中夏・日本友好競馬会
さあ、両国ともに垂涎の的である中夏・日本友好競馬会が始まろうとしていた。
前回の競馬会では中山競馬場へ、17万人と言う多くの人々が観客席へ入り埋め尽くされたが、その時の観客は、全て中夏人だった。
今回は洒落た服装や会話などから、観客の殆どが日本人だと見受けられた。
期待されたこの競馬会が前評判の割に残念だったのが観客数が1万人程度で何故かしら少なかった。
なぜだろう。日本の競馬ファンは日本の新たなエース馬のイダテンヤリオルと中夏のエース馬のハオハオメイメイとの一戦を楽しみにしていなかったのか、会場に来ていた日本の報道関係者達は理解に苦しんだ。
その頃、ペルド(イダテンヤリオル)は輸送車で中山競馬場に入り、パドックで他の競走馬や騎手達を見て記憶が蘇って来た。
そこには、あいつ(騎手の李天宇)やハオハオメイメイもいた。あの嫌なことを・・・、思い出してしまう。他の中夏の騎手どもや馬達も前回と一緒。日本の騎手のメンバーや馬4頭までも一緒。どういうことだ。
・・・もしかして、今日の競馬会は、中夏・日本友好競馬会の再戦なのかも知れないな。
あの時はあいつら9頭とも結託しやがってぇ。
卑怯な手に乗って、レースの途中で怪我を負ったハヤブー(ハヤブサイチバン)の生き死にはどうなったかは、馬になった俺には分からないが、相当の痛手を被ったに違いない。あいつら許さねえ。
そんなことを考えていると、ペルドの脳裏には、おぞましい歓声が蘇って来た。
観衆(中夏の人民)から発せられた、「死ね!」「死ね!」「やったぁ、死んだ!」と言う声が・・・。
まっ、まてよ。冷静になれ。レースが始まったら、あいつらへ体当りをして鬱憤を晴らしたいのが山々だが、反則行為をしたらユ・キ・ノが悲しむよなぁ・・・。
あいつらに正々堂々と勝ち、これまでの連勝を続けるようにしよう。そうしよう。
ペルドは、レースにかける集中力がより一層高まっていった。
さあ、レースの時間となり、各馬がゲートに入りスタートの合図を息まきながら待っていた。
ガシャンという音と共にゲートが開き、颯爽と10頭が走り出した。
ペルド(イダテンヤリオル)は、レース展開を読むため、最後尾に付こうとしたことが誤りだった。
他の9頭は、瞬時に前に出て、9頭で隙間がないよう横一線となった横隊を組んでいた。
しまったー。
ペルドは、何とか前に出ようと、仕掛けようとしたが、9頭が呼応して全く出ることが出来なかった。
観客席から、「汚ねえぞ。」「日本の馬も敵かぁ。」「ヤリーを前に出してやれよ。バカヤローが。」と、数多くの怒声が出てきた。
横一線となった集団は、レースが中盤となったが、相変わらず緩やかな走行をしていた。
その時、ヤリーは走るのを止めてしまった。
ペルドは、自分の意思が伝わなくなったヤリーの身体に戸惑っていた。騎手の源太までも。
クソー、動けマーズ(ヤリオル)よ。
ペルドは、苛立っていた。もう終わりかな。負けだと思った瞬間だった。
レースも集団がゴールまで後、200mとなった時に、マーズが急に超疾風の如く走り出した。
あっという間に集団との距離が近づき、集団もそれに気が付いた。
疾風のとなって駆け寄るヤリオルが、勢いに任せて集団の中央突破をすることを李天宇が読み、突破できないように隊列の幅を狭くした。
きたー!きたー!
ヤリオルがぶつかってくるのを覚悟の上で、それども9頭は馬のスピードを上げ何とか逃げて行こうとしていた。
「みんな、ゴールまで逃げ切れー。」李は大きな声で叫んだ。
パカラ。パカラ。パカラ。パカラ。大きな蹄の音が近づいてくる。
鬼馬となったマーズは集団のど真ん中を目指し迷いもなく進んでいた。
マーズと集団の馬達の鼓動も大きく速くなって来た。
バカラッ、バカラッ、バカラッ、バカラッ、ぶつかるーー!




