101号室
「すまない、娘が眠そうなので庭の隅で寝かせても良いだろうか?」
申し訳なさそうに、オークの父親が訪ねてくる。
俺は食事しながら、考えていた提案をしてみることにする。
「行く当てが無いならここに住みます?
そうですねー、住む条件として何かしら仕事を手伝ってもらう。
まだ何をするかも考えてないので、そういった話は要相談ということで。」
「こちらとしてはありがたい提案ではあるが、本当に良いのか?」
「俺が一人じゃ寂しいってのが一番の理由かもですがね。」
「フフッ。貴方、お言葉に甘えてお世話になりましょう。」
「あぁそうだな。よろしく頼む。」
「改めて自己紹介だ。俺はオーク族のムツ。こいつが妻のサラだ。」
「サラです。この子はメイです。」
眠るメイを胸に抱きながらサラさんがほほ笑んだ。
「んで、あんたの名前は何だ?なんて読んだらいい?」
「名前か・・・」
正直、前の名前を名乗ってもあんまりしっくりこないような感じだ。
心機一転こっちの世界で新しい名前を名乗ろうか。
「そうだな・・・俺はオーヤ。オーヤと呼んでくれ。」
「オーヤさんか。いい名だな!これからよろしく頼む!」
「あぁよろしく!じゃぁこっちに来てくれ。この部屋を家族で使ってくれて構わない。」
俺は101とドアに貼ってある扉を開け、オーク家族を案内する。
部屋の中を見て驚いたが、何もない空間であった。
「うーーーん。これはちょっと要望聞いて間取りとか考える必要があるね。」
「壁があるだけでもありがたいのだがまだ何かあるのか?」
「それはちょっと後にしときます。とりあえずはここで休んでください。
晩御飯位になったら外に出てきて食事にしましょう」
「あぁ助かった。ありがとう」
「ありがとうございます。助かりましたわ。」
「ではでは、また~」
そう言ってニンゲンの男、オーヤさんは外に出て行った。
「助かった・・・のか。」
「えぇどうやら。」
妻と娘と逃げ続けていた終わりのない不安。
最初はどうなることかと思ったが、食事どころか休む場所まで用意してもらえた。
「これから先どうなるかはわからないが、受けた恩は返していこうと思う。」
「そうですね。願わくばメイが安心して暮らしていけるような。そんな未来が来ることを願います。」
「あぁ」
そう言ってサラのほうを見ると、眠そうである。
俺もそろそろ限界だ。
「疲れたな・・・俺たちも少し休もうか・・・」
そうしてすぐに俺も眠りにつくのであった。
数時間後、目を覚まし3人でオーヤさんの元へ向かう。
「先ずは寝具かなー趣味に合うかわからないけど”創造”」
俺がスキルを使いベット、布団、枕の3点セットを部屋に生成する。
「なんだこれは!?」
「寝る場所ですよ。3人で寝れるようにちょっと大きめのキングサイズのベットにしてみました!
後々、バラバラが良いとか要望あったら教えてくださいねー」
慌てふためくオーク夫妻をなだめつつ説明する。
「いやそうではなくて、何もないところにいきなり物が現れたように見えたのだが?」
「あぁ、なんかそういうのが出きるっぽいです。理由はわかんないです。」
「うーむ・・・まぁニンゲンとはそういうものなのか?」
「そうみたいです。」
「先程の食事の時も何かしら道具を作っていたようですし気にしても仕方ないですよ貴方。」
「あ?あぁ・・・まぁそうか。」
「そうです。」
「わーいおっきいお布団だー!」
寝起きのメイちゃんはっこりである。