勇者と妖精δ
ピーピーピピピピッピ!
「認証番号一致、リアルダンジョンにようこそ。あなたの名前はガンちゃんさんですね?今からリアルダンジョン始まり都市、セイラへ転送いたします。」
「よう。決めたぜ、やっぱり俺は一人でセイラに行くことにした。」
「そうっぴか。じゃあ勇者様のお婿さんはピルルたちで用意するっぴ。」
「は?お婿様?」
「そうっぴ。またこんなことが起きるとも限らないのに、勇者様の血を絶やすわけにはいかないから、向こうに着いたら、結婚してもらうっぴ。」
ピルルの衝撃的な発言に唖然とする俺だったが、そんなことを考えている間もなく、違う声がピルルの発言を否定する。
「それは無理よ。がんちゃんは私のお嫁さんになるってきまってるんだもの。」
「か、桂!?どうしてここに?」
というか、さっきの発言はなんだ?混乱する俺をそっちのけで桂はここにくることができた理由を簡潔に述べる。
「おかしいと思ったのよ。早いもの勝ちなんてルールがね。がんちゃんがゲームに入ってないのに、私達がゲームの中に入れるはずがないって思ったから、がんちゃんがゲームに入るまで待ってたの。」
なんてことはない。俺がゲームに入ってすぐにゲームに入れば引き込むことができるというピルルの言葉を、嘘をついて伝えていたことがバレていたようだ。
「じゃあ幹久と要も?」
「もちろん気づいていたわ。一応本当かもしれないからってどっちかが先に入るって言ってたけど、私が入れたみたいね。」
「まさか三人ともにバレていたなんて・・・」
「がんちゃん。嘘をつく時、目が泳ぐのよ?知らなかったの?」
「まさかそんな癖があったなんて。」
俺のことを理解してくれている友人たちに感謝していいのか、この場合は感謝しにくい気がするのだが、それでも一人で行くよりも安心できる気がして楽になった。
「えっと、話を進めてもいいっぴか?」
「どうぞ。私のことはお構いなく。」
「そうはいかないっぴ。勇者様の体は不死身だから死なないとはいっても、長い人生飽きてしまわれたら、大変困るっぴ。死ぬ方法がないわけではないからっぴ。だからそれまでに勇者様の血をセイラに残してほしいっぴ。」
「じゃあ、私のことを男にしてよ。がんちゃんを女にできたんだからできるでしょ?」
「ちょま、だったら俺が男に戻った方がはやいんじゃね?」
「勇者様の体を元にもどすことはできないっぴが、ツバサ様の体を今から変更することは可能だっぴ。その代わり勇者様と違って突然変化させることはできないっぴ。かなりの時間がかかるけどいいっぴ?」
「問題ないわ。ついでに私の寿命も長くしてもらえると嬉しいんだけどできるかしら?」
「勇者様みたいに死んでもよみがえることはできないっぴ。でも不老くらいはお安いご用だっぴ。」
寿命が延びればもうけものといった雰囲気で桂は言っていたが、どうやら老いることがないようにできるらしい。ピルルもこんな小さい姿をしていても妖精で勇者の従者という大任を任されるほどなのだ、中々に力をもっているのかもしれない。
結局桂と俺の二人がこのままLV10ダンジョンをクリアしたらセイラに向かうことになり、桂もこのまま時間がたつにつれ徐々に体が男になっていくんだとか。
「それよりも大変なことがおこったっぴ。LV10ダンジョンのボスが何かやっていると思ったら、今まで作り上げてきたモンスターたちをセイラに送り込んできたっぴ。このままではセイラの世界は一カ月ももたないで、モンスターに支配されてしまうっぴよ。」
「おいおい、そんなご都合主義な展開あるのか?」
「あるっぴ。だってボスは勇者様がこの狭間の世界に現れたことに気づいたみたいだっぴ。勇者様が現れる周期は決まっているから、それに合わせてセイラへの進軍を開始したみたいっぴ。」
「ああ、すっごい納得がいったよ。そんで、俺たちはどうしたらいいんだ?」
「LV9ダンジョンに今回はボスが増えていないから、LV10のダンジョンのボスを倒してすぐにセイラに飛んで欲しいっぴ。LV10ダンジョンのボスを倒せばピルルがこの世界を自由に移動できるようになるから、勇者様たちを迎えに行くことができるっぴ。」
「なぁ、この世界で起きたことは現実世界にも影響するって言ってたよな?」
「そうだっぴ。だから勇者の槍も癒しの杖もセイラの世界に持って行けるから、限界まで強くしておくっぴよ。セイラの世界についても武器が切れ味の悪い武器しかなかったら勇者様が来てもセイラを救うのに時間がかかってしまうっぴ。」
「了解。ところでほかの武器はどうする?持って行った方がいいか?」
「そうっぴね。セイラの世界ではこのリアルダンジョンほど良質な武器はないから、少し持って行ってくれると助かるっぴ。でも強い武器は災いも呼ぶから、モンスターを退けたらピルルが責任を持って狭間の世界に返しにくるっぴよ。」
「なるほど、とにかくLV10をクリアしたらピルルとコミュニケーションもとれるみたいだし、後のことはそれからでもいいかな?」
「そうっぴね。モンスター軍の侵攻がもうすぐ始まるし、早いことLV10のボスを倒してセイラの世界にいるガムンルドラスを倒してほしいっぴ。」
「まだボス的な奴がいることをおしえてくれてサンキュ。」
「どういたしましてだっぴ。それでは良いダイブをっぴ。」
ピルルに皮肉は通じないということを最後に理解して俺と桂はリアルダンジョンの世界へと旅立って行く。
FIN