現実世界G
「よし、四人とも合鍵を持ったし、四人とも遺書を書き終えたんだから問題ないな。」
「おう。誰が向こうの世界に行くことになっても、恨みっこなしだぜ?」
俺たちは一旦俺のアパートに集まった。向こうの世界に行くということは、こちらの世界では死んだことと同じことになってしまうので、残った二人はその言い訳のためにゲームが終わった後は一旦ここに戻ってきて失踪した云々を家族に伝える役目を負う。現実世界に残るものも向こうの世界に行くものも、互いにかなりのリスクを背負うというのに、この三人は俺のために許してくれたのだ。
俺はこの三人のためにも、他の世界の危機を知らない人のためにも、絶対にここともうひとつのセイラの世界を救わなければならないと心に誓った。
「んじゃま、武器の切れ味は十分に上げといてやったから、さっさとダイブして雪兎を捕まえたらLV10ダンジョンに乗り込むとしますかね。」
「じゃあ、ゲームセンターに行くか。」
俺たちがゲームセンターに着くと、もう恒例となりつつある順番を譲る行為を受けた。俺たちが向こうに向かうために準備として潜った一週間前からLV9ダンジョンまでクリアした人が増加したらしく、LV10ダンジョンをクリアできるだろう俺たちへの期待は日に日に大きくなってきていたのだとか。
「そんなにLV10ダンジョンは難しいのか?」
「難しいなんてレベルの話じゃないですよ。大量のモンスターに一発でも攻撃されたら薬草を二個は使わないといけないんですから、どれだけ薬草を買いこんでもLV10ダンジョンの攻略は不可能だといわれてるんですから。」
「なるほど、せめてモンスターの数が減ったら、薬草を大量に買ってクリアできるかな?」
「そりゃカバン一杯に買っていけば半分くらいまでは進めるって誰かがサイトに載せてましたけど、カバン一杯で半分ですよ?そんなのボスまで行けるわけないですよ。」
「なるほどね。じゃあ俺たちがクリアしたらカバン一杯に薬草を詰めてクリアしてみてほしいもんだね。」
「は、はい。がんばってみます。」
ゲームセンター内の俺への信仰はすでに神の領域に達しようとしているようだ。今話をした子たちの中にもLV9を昨日クリアした子が何人かいたらしいので、これが終わったら残った仲間たちと一緒にLV10ダンジョンに潜ってもらうのも悪くないだろう。そうすれば、こっちの世界をつなぐ扉は閉じられることだろう。
「さて、じゃあ俺たちはダイブするとしようかな。」
「そうね。誰が一番にダイブして向こうの世界に行くかは早い者勝ちよ。」
「そういうこった。負けてらんねぇぜ。」
俺を除く三人は俺のことを置いておいて、さっさとゲーム機の中に入っていくと、カードとお金を入れだした。
「みんなごめんな。みんなと今まで過ごせてすっごく楽しかったよ。」
俺はみんなよりも後にゲーム機にはいると、お金とカードを入れてゲームを始める。