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LV8


四人PTで雪兎も四匹いて、薬草などの消耗品も充分にそろえられた俺たちは、LV8ダンジョンも攻略することにした。ただし、あまりにも長時間プレイになってしまったので、これが終わったら前回と同じように倉庫に武器を預けてゲームを一旦止めることにしたが。


「なぁガンちゃん。俺らの武器ってこれ以上鍛冶屋であげれなくなっちまったな。」


「俺はまだ弓を少しあげれるが、これももうすぐ鍛冶屋いらなくなるな。」


「そうなるとガンちゃん手持ちのお金が増えすぎるだろ?そんな大金を現実世界に持って帰ったらえらいことになるし、わざともう一個新しい武器でも鍛えてお金を少し削った方がいいと思うぜ。」


「そうだな。前回も大金をゲーム機内に散らかして散々な目にあったし、それもいいかもしれないな。」


LV7の報酬も高く、LV8ダンジョンをクリアしたあと、どうにかしてお金を使う方法を考えないと、かなりの高額を持ち帰ることになってしまう。


「まるで宝くじを当てるような感覚だな。しかし大金を手に入れたらどうやって使う?」


「貯金するに決まってるだろ?」


「そうよ。ガンちゃんはあんた達と違って浪費家じゃないんだから、将来のためにとっておくのよ。」


「桂ちゃん。それじゃあまるで二人の将来のために貯金するって言ってるみたいに聞こえるよ。」


「うふふ。それもいいかもしれないわね。」


「ちょま。桂お前・・・」


「どうする要?今年の賭けは俺らの負けみたいだぜ?」


「そうだね。でもまぁお金に関してはスポンサーがいるんだから今回くらいは負けてあげようよ。」


「ん?どういうことだ?」


「と、とにかくLV8ダンジョンに行こうよ。どうせ敵が大量発生するんだから、一気に進まないでゆっくり時間をかけて進もう。」


「ああ、それはいいけど、何でこんな大量の水筒が必要なんだ?」


「行けば解るよ。お金に余裕があったから、かなり大量に購入したから急ぐ必要はないからね。」


「あ?ああ・・・」


LV8ダンジョンに潜ると水筒のありがたさが分かった。LV8ダンジョンはLV6ダンジョンとは正反対で火山の近くなのかものすごい暑いダンジョンだった。前回来た時は死ぬつもりだったから水筒なんていらなかったが、幹久いわく5分に一回水分補給をしないとライフが減りだすんだとか。


しかし、大量の水を確保した俺たちは無理に進むことはしないで、薬草の消費をできるだけ抑えて桂の回復で間に合うように進んで行った。


「桂ちゃん良いの?あの岩倉翼だよ?結婚したら桂ちゃんも岩倉翼になっちゃうんだよ?」


「ガンちゃんから聞いたの?確かにあの時はいいわけがそれしか思いつかなかったからそんな風に断ったけど、今のガンちゃんなら私が断る理由がないじゃないの。」


「それはそうだけどよ。それにしても、女になったらオッケーなんて軽過ぎだぜ。」


「それだけが理由じゃないに決まってるじゃないの。あれだけ私のことを好きって言ってくれたんだもの、男の子でもガンちゃんなら良いかなって最近は思っていたのよ。」


「おいおい、ってことは今回のことが無くっても近々俺たちの賭けは負けてたってことか?毎年の翼会議の賭け金は俺たちのものだと思ってたのに。」


「まぁね。その時は事前に知らせて二人には負けないようにしてあげる気ではいたけどね。」


「流石、桂ちゃんだよ。俺たちのこと解ってる。」


「越後屋たちよ。そちらも悪よのう。」


「「お代官様ほどでは。」」


「「「あ~はっはっは。」」」


お前ら三人とも・・・戦闘中は無口になってるから聞いていないと思ってるんだろうけど、ちゃんと聞こえてるんだぞ?LV8終わってゲームをやめたら覚えてろよ。あのあほどもは、俺の気持ちを知っていて翼会議なんてわけわからないものを開いて毎年俺が桂のことをあきらめるかどうか賭けていたんだな。そして桂もそのことを知っていて掛け金の何割かをピンはねしてたんだろう。


「ガンちゃん。敵をさばききれてないよ。こっちは女の子が一人いるんだから、ちゃんと前衛で倒してよ。」


「うるせぇ。これでも一杯一杯やってらぁ。」


「がんちゃん。私精一杯回復するから頑張ってね。」


「お、おう。」


桂の声援でやる気出してさっきまで以上に敵を寄せ付けないように退治していく俺って・・・。


LV8ダンジョンの敵モンスターは連続攻撃をしてくるわ、数は多いわでかなり苦労したが、武器もきちんとしたものを持っており、桂が後ろから回復してくれることもあって案外サクサクと進むことができた。以前幹久が絶対に固定ダメージには理由があると言っていたが、本当にアメーバ状のモンスターが幹久の固定ダメージの付いていないライトウォーリアーの武器で切り付けても倒せずに、そいつが出た時はジョブチェンジをするようにしだした。ずっとヘビーウォーリアーでも良いと言ったのだが、元々のダメージがかなり高くなっているので、できるだけステップワークで回避したいんだとか。


幹久も要も俺と違ってゲームのキャラを操作しているはずなのに、既にその動きは俺に近いものがある。まぁ実際一番近くで俺の動きを見てきたからというのもあるんだろう。そう考えるとまだまだ桂の動きはぎこちないが、これでも二週間毎日特訓したらしく、そこまで悪くはない。


「そろそろボスだぞ。今度のボスはどんな奴なんだ?」


「攻略した人によると、雑魚モンスターみたいに連続攻撃をしてくるボスみたいだぞ。流石のガンちゃんもこいつは回避するのが難しいだろうから無茶しないでね。」


「了解。LAさえとらせてくれたら俺は何も問題ないぜ。今回は薬草も普通に使ってたから薬草使い忘れるなんてへまはしないだろうしな。」


LV8ダンジョンにはモンスターがあふれていたし、敵の攻撃が連続ということもあって、パターンを呼んでできるだけ避けるようにはしていたが、時々ラッキーパンチのようなものを食らってしばしば薬草を使う機会があった。


「あのねぇ。あれだけ大量の敵がいてあれだけしか薬草を使わないってすごいんだよ。桂ちゃんが楽できていいとはおもうけどね。」


「べ、別に桂のためだけに頑張ったわけじゃねぇよ。」


「そうそう。ガンちゃんは俺の下僕だからな。俺のために働いたんだぜ。」


「下僕はご主人に給料を払うはずがないから幹久には今回は無料でいいな。」


幹久が調子にのっているので、釘をさしておいた。幹久も要もおれよりも余裕のある生活を送っているが、それでもここ最近はリアルダンジョンでもうけたお金があったので随分楽しい思いをしていた。その分お金が無くなったらきっと困るだろう。


「がんちゃぁぁん。よ、社長・大統領・太っ腹。」


「太いとか女に向かって言うな。」


「す、すまん。とにかく下僕発言は取り消すからお金は援助してくれ。欲しいゲームがあったから限定発売のやつをもうすでに申し込んじまったんだ。」


「はいはい。わかったぜ。」


ピルルの言っていたことは本当らしい、時間にすると数時間しかゲームに入っていないはずなのだが、それでもどんどんゲーム内の体に心が引っ張られている気がする。合宿で師範代にはバレたがそれ以外の人たちには隠し通せたのはまだ女の子と男の子との間にいたことが大きかったのだろう。詳しく自分の体を見る勇気はまだなかったが、それでも男性としての部分がまだまだ沢山残っていたことは確認済みだったのだが、今度現実世界に帰った時はそれも変わっているかもしれない。


「ところでさ。クリア後の鍛冶屋での追加効果どっちだとおもう?」


「んなの連撃に決まってるだろ?ブログにもそう書いてあったじゃねぇか。」


「そうかな?あの文章だと明らかに釣りくさくなかった?俺はダメージ増加だとおもうけどなぁ。」


「じゃあ賭けるか?」


こいつらは賭けごとが好きだ。俺は賭けるためのお金が無かったので今まであまり参加していなかったが、賭けごとの対象になっていたことは先ほどの会話で間違いないので、あとで何かしらのペナルティは必要だろう。


「いいよ。俺はダメージ増加で幹久は連撃ね。」


「なにもつかないって可能性もないかしら?」


「む・・・確かに。何もつかなかったら引き分けにしよう。」


「良いぜ。」


「お前らの言うことはよくわからん。」


何かについて賭けたらしいことは解ったが、それが何についてかは俺には解らなかった。リアルダンジョンに関係がありそうなことはなんとなく解ったが、それでも全部理解することができなかった。


「結構簡単なことだぜ?今まで追加されてきた効果は全部第二段階の武器のどれかだっただろ?」


「なるほどな。そう考えるとランサーってすっげえ恵まれてるよな。吸収が二段階武器でついちまうんだもん。」


「どあほう。遠くから攻撃できるアーチャーでなんとかLV7をクリアした人がいるからその人は今頃ランサーしてるかもしれないが、基本的にランサーってのは防御ができないし接近しないと攻撃できないんだから、ガンちゃん以外にランサーをメインで使える奴なんていないんだよ。」


「なんでだよ?多少攻撃力が落ちても吸収すればいいじゃないか?」


「吸収で回復する量を考えてみろよ。盾で防御している俺ですら薬草が必要なのに一撃で倒すことで被ダメを避けるしかないランサーがマジックランスなんて使って普通はクリアできないっつの。」


どうやら俺が今までやってきたことはゲーム内ではかなり非常識なことらしい。マジックランスの回復があれば時間さえかければ進めるんだとばかり思っていたが、そう言われてみれば幹久も要もダンジョンに入った時にあんなに沢山持っていた薬草が野兎や雪兎がいるにも関わらず減りまくっていた。


「そんなもんなんだ。だったら兎の回復で間に合わせてスタンダードランスで一撃で倒せばいいんじゃないのか?」


「それこそ回復よりもダメージの方が多くなって薬草が切れて終了だっつの。」


「う~ん。とにかく俺以外にランサーできる奴はいなかったってことか?」


幹久や要の動きを見ていると俺と同じ動きができてもおかしくないのではと感じてしまうのだが、それでもゲームの中に入って肌で危険を回避できる俺とそうでない普通の人とでは難易度が随分違うらしい。


「もうそれでいいぜ。そろそろ雑魚も減ってきたしボス行かないか?こうしてボスの前で止まってるだけでも敵が出てくるんだしよ。」


「できるだけ多くの雑魚モンスターを倒しておいた方が二回潜らなくていいんだけどな。じゃあ水筒を一個つかってボスに行くか。」


「「おう。」」


要と幹久から良い返事が返って来たので、俺たちはボスのいる場所へと歩みを進める。LV8のボスは今までのボスよりも攻撃の間隔が狭く、確かに最初は避けきるのが難しかったが、絶対距離みたいなものを見つけると、ダッシュジャンプまたはスライディングをして一定距離まで下がることによってさほど怖くはないボスとなってしまい。ライフが少なくなったら他の三人には間違ってLAを取らないようにケンセイのみにしてもらい俺のダッシュジャンプ下段突きのコンボが決まってボスを倒すことに成功した。

ボスを倒した瞬間、俺はいきなり強い頭痛を感じた。頭痛の中、何かが見えた気がしたが、三人が街に出て俺のことを待っていたので、何くわぬ顔で合流した。


「相変わらずあり得ない動きするぜ。追加効果無しで連撃と同じような状態なんじゃね?」


「いやいや、連撃はもう少し早いし、素早く二回攻撃するのと一回の攻撃が二回分なのは違うよ。」


「とにかく、街でお金の調節をしたらさっさと戻ろうぜ。これでも合宿からかえってきたばっかりで疲れちまったからさ。」


「そうだな。」


街に着いた俺たちはその街の以前までとは違うところに驚いてしまった。

なんと、武器屋が存在したのだ。そしてその武器屋の主人はすごい頑固者で、武器を大事に扱える奴じゃないと絶対に武器を売らないと言いだし、手持ちの武器が全て鍛冶屋で限界値まで達していない人間には武器を売ってくれない仕様になっているらしい。俺は弓を鍛冶屋で鍛えるとすべて限界値になり、しかも資金が豊富だったため、幹久と二人で試しにそれぞれ一つずつだけだが買うことにした。


「すげぇ。勇者の槍だってよ。ものすごい強いぞこれ。」


「フムフム。スタンダードランスの効果をそのまま受け継いだ様な槍になってるわけだな。鍛冶屋に持っていかないでも攻撃力100超えてるとかありえねぇぜ。んでもって、連撃以外の追加効果がついてるわけだ。ってことはさ。次の町で連撃をつけたらもう一度買い直しってことか?」


「さぁ?そこら辺は俺にはわからん。」


「そうだな。ガンちゃんに聞いた俺が馬鹿だったよ。LV8をクリアした人の情報にこんなの乗って無かったけど、こいつはわざと情報を隠しやがったな。」


「そうなんじゃないかな?ここまでクリアするような人だったら、普通鍛冶屋の効果は99になってるだろうからね。LV8の途中でコンテニューしてたら買えてはいないかもしれないけど、武器屋があるってことくらいはみんな見てるはずなのに情報が流れていないのは第三武器の情報をわざと隠した人がいるとしか考えられないね。」


「とりあえず、今回はかなり収穫があったことだし、そろそろ終わろうぜ。倉庫に行って武器預けたらこのまま死んでも問題ないくらい適当な金額になったしよ。」


「そうだな。帰ったらその200万円でパーっとうまいものでも食いに行くか。」


「おいおい、俺の金だと思って・・・」


「ガンちゃん。私ステーキが良い。」


「仕方がないな。」


俺たちは倉庫にスタンダード武器を預けると、デスぺナの関係ない武器だけを手にLV9ダンジョンに入った。勇者の槍はどうなるのか分からないから倉庫にとチキン幹久と要が言っていたが、どれだけ強いのか見てみたいという桂の言葉に従ってLV9に持って行く。もちろん幹久は刀を預けてしまったが、案外これ一本でLV9もクリアできちゃいそうな勢いだった。三人が薬草を使わずに死んでいったのを期に、俺もわざとマジックランスに持ち替えて殺され現実世界へと帰っていく。



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