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ピーピーピピピピッピ!


「認証番号一致、リアルダンジョンにようこそ。あなたの名前はガンちゃんさんですね?今からリアルダンジョン、始まり都市、セイラへ転送いたします。」


眩しさに閉じていた瞼を開けようとするが、辺りが真っ暗で良く見えない。しかし、耳にはどこかで聞いたことがあるような音声が流れてくる。そして、徐々に視力も回復し、自分の状態を確かめることができるようになり、心も落ち着いてくる。


「幹久の奴だな・・・ガンちゃんさんなんて敬称がだぶっちまってるじゃねぇか。」


先ほど渡されたカードはゲームを始める前にキャラクターなどを設定できるものだったらしい。全て幹久に決められたのはムカつくが、ゲームのことをあまり知らない俺が決めようと思ったら何をして良いのか分からなかっただろうから、それはそれで助かった。


「うお、何じゃこれ超リアルじゃね?」


最初に始める人には色々なナレーションがつくらしく、目の前を様々な画像が流れているのだが、残念ながら回復仕切っていない俺には音声のみしか正確には判断できない。音が消えると本当にゲームの世界に入っているような気分になる。というか、手足を動かしたらその通りに動いてくれる。


「なんだぁ!?体験型RPGって、自分の体をそのままゲーム内に持ち込めるんだ。これなら操作とかじゃねぇから、めっちゃくちゃ楽じゃん。」


「全部独り言が俺たちに聞こえてるってわかってんのか?」


「恥ずかしいよ・・・」


マイクでつながっていることを忘れていたらしい。ちょっと自分の発言に恥ずかしくなる気持ちもあったが、それ以上にこのなんとも言えない高揚感の方が先にでて、そしてそのことを悪友たちに告げる。


「おう。幹久に要。これなら俺にも操作できるぜ。しっかし俺のコスチューム、エロいなぁ。」


「おう。そいつはアーチャー&ランサーって言って弓と槍を武器チェンジしながら使って攻撃するキャラだぜ。」


なるほど、このキャラクターはランサー&アーチャーというのか、俺の質問にさらにそのキャラの特性などを幹久が説明してくれたが、そんなことよりも気になることがでてきたので、俺は幹久の言葉を無視で質問を投げかけた。


「なぁ・・要も槍を持ってるのに、何で男キャラなんだ?」


「ん?男女の区別は職とは関係なく選べるからな。」


「じゃあ何で俺だけ女キャラにしやがったんだよ。俺もカッコ良い男キャラがよかったし。」


「バカ野郎。それじゃあむさっくるしいパーティ(PT)になるじゃねぇか。お前はいや、お前のキャラは俺たちのPTの潤いなんだ。」


馬鹿なのか?こいつは?いや・・・馬鹿なんだったな。こいつとはかなり長い付き合いになるが、頭の回転は決して遅くは無い、推理系のゲームやパズル系のゲームも得意な幹久はむしろ普通の人と比べたらすごく能力が高い方だろう。しかし、残念ながら、頭の使い方が悪いのだ。


「ほざけ、結局中身は男だろうが。」


「黙れ、お前は今後操作で解らないことがない限り口をきくことを許さん。」


「はいはい。どうせ俺は集中しだしたら、無口になんだからおしゃべりは二人でしてろよ。」


一応正当な理由をあげて抗議してみたのだが、そこは幼馴染、俺の癖や行動パターンは理解しているらしく、言いくるめられてしまう。


「うむ。やはりガンちゃんを選んで正解だったな。」


「僕たちの夢をせいぜい壊さないように頼むよ。」


「へいへい。」


どうせゲームはそれほど得意でもないし、悪友たち二人の様にゲームセンターに入り浸り?むしろ住んでいるのかな?というような奴らと違いこだわりはないのでやる気のない返事を返して、俺たちはとりあえず街を出てダンジョンへ向かうことにした。二人は既に一度プレイしたことがあったが、LV1のダンジョンですらかなり難易度が高いらしく、まだクリアしたことはなく、ネットの情報でのみ知りえるLV1ダンジョンクリア後の情報を元に動いているらしい。


「とりあえず、お前はランサーじゃなくてアーチャーになっておけよ。お前みたいなゲーム初心者が肉弾戦なんて無理だろうから、遠くの方から矢でも打ってろよな。」


「これだけ自分の体みたいに自由に動かせるんだ。ランサで行くぜ。俺の格闘技センスを見せつけてやるぜ。」


「しゃあねぇな。一回死んでコンテニューし直したらアーチャーになれよ。」


「わかったぜ。」


あ、さりげなくこいつらが満足するまでに死んだら500円で済まないことが、今、確定した気がする。まぁあいつらの口車に乗せられたのは悔しい気もするが、これだけ自由に動けるならまず死ぬことはないだろう。


「とりあえず、ダンジョンに入ったら俺らについてきな。どうせアイテムを拾ったりするのはなれないがんちゃんには無理だろうから、ラストアタック(LA)だけ取ったら二分の一の確率で薬草だけは出るから、それを使いながら行けばいいさ。ベルトに、今ある薬草だけセットしておけよ。そうしたら自動で補充してくれるからさ。」


「ベルト?」


「カバンを開いてみて、そうしたら薬草があるから、それをベルトのところに置くんだよ。そうしたらすぐに使えるよ。」


「了解。」


俺はカバンを開くといきなり立体映像が現れ、ベルトセットというメニューがあったのでそこを触ると、カバンの中から三つほどベルトに薬草が動いたので、それを確定してカバンを閉じる。


「カバンはやっぱりゲームなんだな。」


「当然だろ。持ちものの限界まで持って行って、ダンジョンクリア後の街で売れば結構な金になる。とりあえず武器が強くなるまで、そうやってお金をためるんだよ。」


「でもさ。お前らLV1ダンジョンクリアできなかったんだろ?どうやって金ためるんだよ?」


「一応敵が落とした金が少し貯まってるからそれで薬草をたんまり買い込んだぜ。あと、要の奴は第二武器も手に入れてるしな。偶然落ちたんだとよ。」


「なるほどな。じゃあもう、第一段階の武器はもってねぇのか。」


「いや。このゲームは鍛冶屋システムの影響で、初期武器が最終的には一番強く化けるらしいからな。初期武器は絶対に捨てないのが鉄則なんだ。」


「へぇ、じゃあ俺もこの武器が一番強くなるんだ。」


「そういうことだ。俺はウォーリアーだから防具に盾があるが、お前らは武器しかねぇから初期武器だけは絶対にすてんじゃねえぞ。」


「はいはい。まぁこんだけ扱いやすそうな槍なら、第二段階もいらねぇぜ。」


「制限プレイじゃねぇんだから、第二武器が落ちたら使えよな。」


「アイテム拾いは任せたぜ。」


そんなことを言いながらも、ダンジョン転送場所までついた。ゲーセンには4台しかないリアルダンジョンのゲーム機も全国各地に置かれているのだから、当然全国から人が集まっており、そこには人だかりができていた。


「すっげぇ。なんか強そうな武器を持ってる人もたくさんいんじゃん。」


「まぁそうだな。とりあえず、俺たちは上級者様たちにはまだ追いつけないからLV1ダンジョンに向かおう。」


幹久と要にタイミングを合わせてLV1ダンジョンへと行く。マイクとイヤホンは同じゲーセン内で通信可能だが、同じダンジョンに行くにはあそこでタイミングを合わせて1分以内に入る必要があるんだとか。偶然LV1ダンジョンに入る人は俺たちだけだったらしく、三人で入ることができた。


「まぁ明らかに友達三人で入ってるんだから、遠慮したんだろうけどな。同じゲーセンで同時に入ってるときには割り込まないのがマナーってもんよ。」


「そうなんだ。とりあえず、どんな技ができるのかだけ教えろよ。」


「簡単だぜ。立ったまま突き、ダッシュ突き、ジャンプ突き、下段突き、あとは薙ぎ払いの5パターンで攻撃すればいいだけだからな。お前の選んだランサーってキャラは攻撃手段が多い代わりに防御手段がないから、避けるしかないんだ。どうしても避けきれない敵にはアーチャーになって遠くから攻撃ってわけさ。」


しゃべるなと言っていた割には丁寧に色々なことを教えてくれる。幹久も要も、以前二人で遊んだ時にはクリアできなかったこともあり、多少とはいえ戦力として期待しているので、情報は包み隠さずにおしえてくれる。


「なるほどな。まぁ充分だろ、てか敵出てこねぇぞ。」


「すぐに出てくるって、僕の槍さばきを手本に見てなよ。」


要はそう言って、少しダッシュすると俺よりも前を歩きだした。俺は真っすぐ歩いてるつもりだが、要の奴はカクカク動いているから、やっぱりそこら辺はゲームなんだなと実感する。


「てかお前本当にガンちゃんか?俺たちですら最初はまっすぐ歩くのにも苦労したのに普通に俺たちについてきてるじゃん。」


こんな簡単に動かせるのに、と思いながらも、普段散々俺のことをゲームが下手っぴといっていた二人にゲーム内で自分とは違う体になって少し膨らんだ形をした胸を張る。


「俺のセンスを見損なうなよ。体感型ってことは俺みたいなゲームよりも、実戦に強い奴には当然有利なんだよ。」


「なんだか、お前にゲームで負けるのは悔しいぜ。」


「言ってろ。お?敵が出てきたみたいだぜ。お前も行かないでいいのか?」


「とりあえず、最初の敵は雑魚だから問題ないだろ要の動きを見ておこうぜ。」


幹久の言う通り、要はダッシュで敵に近付くとそのまま突きをして一撃で敵を一匹倒すと、薙ぎ払いをしてもう一匹いた敵を吹き飛ばし、今度は倒れている敵にしゃがんで下段突きをして敵を倒してしまった。


「流石に二段階の武器を持ってると一撃で倒せるんだな。このまま要一人でもボスまで行けるんじゃないか?」


「まぁ余裕だろうけど、ここらでガンちゃんの操作慣れをしておかないとボスで即死だよ?」


「確かにその通りだな。じゃあ次はガンちゃんやってみようぜ。」


「ヘイヘイ。」


そのあと何十匹も敵が出てきたが、俺は先ほど見た薙ぎ払いで、敵を寄せ付けない方法などを使って軽々と敵を葬り去っていく。ダッシュ後にジャンプして、突きをくらわせると一撃で倒せることが判明して、6つ目の隠し攻撃コマンドとしてダッシュジャンプ突きがあることまで見つけてしまった。


「どうだ?俺の実力思い知ったか?」


「ああ、驚いたぜ、しかも初心者にありがちなごり押しじゃなくって、全部の敵からの攻撃を避けてノーダメージで進むなんて、やるじゃねぇか。」


「よし、このまま俺を前衛にして進もうぜ。俺が一撃加えて倒しきれなかった奴に、お前らもダッシュジャンプとか下段とかやってみろよ。どうせ俺たちの方が攻撃速度速いんだから、ミスったら適当に切りつければいいんだしよ。」


「あ、ああ、そうだな。俺たちもコマンドの練習させてもらうぜ。俺は盾をもってるからジャンプコマンドの代わりに防御コマンドだけどな。」


俺たちはそのあとも順調に進んだ。アイテムは全て二人の手元に行ってしまったが、正直攻撃を受ける気がしないので俺は問題なく薬草を少し使うことはあっても基本ノーダメージでボスまで進んでしまった。


「おいおい、ここまで10分ほどで来ちまったぜ。めちゃくちゃすげえじゃねぇか。」


「そうだな。このままサクッとボスも倒せるといいんだけど・・・。」


「ガンちゃんがいれば問題ないっしょ。俺はボスの動きにはついていけなかったから、今回はアーチャーで遠くから狙撃にさせてもらうよ。」


「了解。間違っても俺にあてるんじゃねぇぜ。」


「くそ、こいつ調子に乗りやがって。」


幹久から恨み事が聞こえたが、その声は普段ふざけ合っている時の声で、怒っているわけではない。


「がっはっはっは。俺のところに来るとは運が悪い。この宝は俺のものだ。誰にもわたさねぇぞ。」


「おいおい、典型的なボスキャラのセリフを言い出したんだが、こいつがボスか?」


「ああ、あの大きな腕に気をつけろよ。一発でライフゲージの半分は持ってかれるぞ。」


「はいはい、どんなに強い攻撃も当たらなければ意味がないってのを教えてやるぜ。」


俺は宣言通り、ボスの攻撃を紙一重で避け続け、サクッとボスをやっつけて見せた。遠くで狙撃していた要もフィールドの端に追いやられて攻撃されて一回死んで、幹久も盾でうまく防御していたがライトウォーリアーの盾は貫通ダメージがあるらしく薬草が切れて奴も一回コンテニューしたが、俺はノーコンテニューでLV1ダンジョンをクリアしてしまった。


「まったくガンちゃんには驚きだぜ。本当に全部の攻撃を避けちまうなんて、ありえねぇほどゲーム操作をマスターしてるじゃねぇか。」


「まぁ俺に言わせればあんなノロイ攻撃避けられないお前らの修行がたりんわ。」


普段から道場に通って体を鍛えている俺からしたら、師範代の突きの方がよっぽど恐ろしい、あんな攻撃はゲームの世界でなくても何ら恐ろしいことはないだろう。まぁ、俺が通っている道場は結構特殊な道場らしいから、それも原因かもしれないが。


「こいつ、言わせておけば・・・」


「まぁまぁ幹久、何と言ってもガンちゃんのおかげでLV1クリア報酬の10万円と第一の街にこれたんだから良いじゃないか。」


「確かにそうだな。さっそく鍛冶屋に行ってみようぜ。」


街の中を探索しようとおもったが、フィールド自体も先ほど見たセイラと比べると、半分ほどの広さしかなく、それだけ狭いにも関わらずセイラよりも広く感じてしまうほど第一の街は始まりの都市とは違い人はあまりいなかった。というかダンジョンをクリア後の街なので用事さえ済ませればチャッチャと通り過ぎる街なので当然かもしれない。


「なぁ、この切れ味ってのは上げておいた方がいいのか?」


そんな中、先ほど幹久が言っていた鍛冶屋という場所にはかなりの人数が詰めかけており、そこで俺はよくわからない説明文が描かれた紙を見つけたので、二人に尋ねる。


「当然だな。この切れ味ってのを、上げていくことによって武器の強さが上がるんだからな。」


「ふむふむ。デスペナルティは30以上からマイナス1で40以上からはマイナス5、50以上はマイナス10・・・・ってことは50以上の武器を持ったらデスペナルティやばいんじゃね?」


「当然だろ。デスペナルティも無しだったら武器が永遠に強くなって難易度が急激にさがるじゃないか。とりあえず30までは切れ味は上がる一方なんだから上げておくぞ。」


俺たちは今、手持ちの武器をすべて切れ味プラス1にし、鍛冶屋をでると、鍛冶屋ほど人は多くはないが、また人が集まっている場所、道具屋に行った。要と幹久は始まりの都市で買った薬草をボスで使い切ってしまったので補充して無一文になっていた。


「お前ら俺と違ってドロップアイテムとか大量に仕入れてお金もちになってたんじゃないのか?」


「その分燃費が悪いんだよ。ってかお前みたいにノーダメージ狩りなんてできねぇから当然だっつうの。」


そう言われてみればそうである。というか、LAを何度かとって手に入れた薬草だけで十分カバンの中には薬草が増えていたので、俺はボスクリアの報酬で得た10万のうち2万を使って鍛冶屋で武器を鍛えたので9万も手元に残ってしまった。


「どうする?LV2ダンジョンに行くかもう一度LV1ダンジョンに行くかどっちがいい?」


「当然LV2だろ。たとえ死ぬことになったとしても、新たなダンジョンに希望の光を見い出すんだ。」


「そんなの言ってるが、お前ら1000円しか持ってこなかったんじゃなかったか?次死んだらゲームオーバーだろ?」


俺がまさかの健闘をしたことで、本来ギリギリでもLV1をクリアできたら良いなと思っていた二人は良い意味であてが外れたため、次のステージに関しても、クリアを目的というよりも、新しいダンジョンを楽しむために進む考えのようだ。


「んじゃお前が前衛で俺たちが死なないようにしてくれよ。もちろんアイテムはくれよ。」


「ヘイヘイ。LAの薬草だけで俺は十分だから任せとけよ。」


「頼もしい限りだぜ。」


こうして俺たちは少しだけ武器が強化された状態でLV2ダンジョンへと向かうのだった。ついでに、ボスが落とした宝箱には、ヘビーウォーリアー用の第二武器が落ちたので幹久はヘビーウォーリアーにジョブチェンジをしてノロマだが防御の高いキャラに変身している。


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