現実世界D
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!」
「が、ガンちゃんどうしたの?」
「あけるな。と、とにかく着替えを。」
「う、うん。」
要にもらった着替えを着た俺だったが、テンパリ過ぎていてカバンからお金を出すのを忘れて装備解除をしてしまったために、お札がバラバラに散らばって着替えを終えてもそれを回収する必要があった。
「ガンちゃんどうしたの?二度目なんだから、衣装に驚いたわけじゃないんでしょ?」
「こいつは俺らにチキンとか言ってたやつだが、俺らよりもチキンだってことが判明しちまったぜ。」
リアルダンジョンの閉鎖空間から出てきた俺に声をかける二人に向かって俺は恨み事の一つも言いたくなったが、とにかくこの場ではまずかったので、移動しようと促す。もちろんバカなことをいった幹久に拳骨をお見舞いしてからだが。
しかし、そうもいかないらしく、俺たちは周りをたくさんのゲームマニアたちに囲まれてしまった。
「あなたがガンちゃんさんですか?今のプレイずっと見させてもらいました。すっごいですね。ファンになりました。」
「ガンちゃんさん本当の名前はなんて言うんですか?良かったらメル友になってもらえませんか?」
「お願いします。握手してください。」
難攻不落と言われたリアルダンジョンを実質ノーコンテニューでLV7までクリアした俺たちは一躍ゲームセンター内のヒーロー?になっていたらしい。外からプレイ内容を見れるようになっているが、この画面は各地のゲームセンターと通信でつながっているらしく、ここにいない人もご丁寧にどこのゲームセンターでプレイしていたのかまで表示されるらしく。全国的にファンができただろうと幹久などは鼻高々だ。
「悪いんだけど長いことゲームしていて疲れているから後にしてもらえないかな?俺の名前だけは教えてあげるよ。岩倉翼だよ。」
「翼さんっていうんですね。ボーイッシュなところもカッコ良いです。本気で俺惚れました。」
「おいおい。こいつは・・・」
「ちょっと話があるから来て。」
「お、おう。」
幹久と要を連れてとりあえずゲームセンターを出ると駅にある公衆トイレへと向かう。障害者用のトイレなら三人が入っても全然問題ないくらい広いので、そこに誰にも見つからないように入ると、二人に奇声を上げた理由を説明する。
「俺、女になっちまった。」
「「はぁぁ?」」
二人が驚くのも無理はない。俺だって信じられないが、本当になってしまったのだから仕方がない。乙女の恥じらいという感覚がなぜか存在するため現物を見せたり触らせることは断ったが、マイクを通していたから変だと思っていたがゲーム中から声が高くなっていたと要が認めて、スウェットの上からでもわかる胸の膨らみをもって幹久も納得する。そのあと二人を追い出して俺はそのまま我慢していた用を済ませると男と違い面倒なことがたくさん起こったが、公衆トイレから出て幹久と要ともう一度合流する。
「とりあえず、やっぱり今回も服屋にいくぞ。下着を買う勇気はまだないが、それでもなんだか落ち着かないからある程度の服を買おう。」
俺たちは服を買って少し落ち着くと、ゲームセンターにたくさんのファンたちを待たせたままだったことを思い出して向かう。一時間以上待たせたにも関わらずそこには何人かのファンたちが待っており、どうやって攻略したのかを俺がゲームの世界に本当に入って動いていることを避けて説明すると、体感型ゲームの神だと崇められることになり、結局そのあとも長々と説明をさせられた(ゲームがわからない俺は基本的には幹久と要にすべて投げ槍だったが)