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LV4&5


俺たちはLV4ダンジョンに来た。俺一人でも攻略したことがあるとはいえ、二人は一度しかLV4ダンジョンを攻略したことがないらしく、かなり気合が入っている。


「LV3ダンジョンでも10分くらい攻略に時間がかかったし、サクッとLV4ダンジョン攻略したいもんだな。」


「まぁここまでの敵は僕たちはいっかくだし大丈夫でしょ。」


「ん?いっかくって何だ?」


「一撃で倒せるって意味だよ。」


ゲーム用語が出てきて質問をした俺に、二人は丁寧に教えてくれる。しかし、その意味を知って俺は驚く。


「はぁ?お前らそんな強かったのか?じゃあ何で今までLV4までクリアできなかったんだよ?」


「だってさ、二人でさばき切るにはここからのモンスターの量と動きはやばいんだよ。それに、他のPTが良PTとは限らなかったから、他の人と行くのも中々踏ん切りがつかなくってね。」


「嘘だな。お前らだったら二人でもLV4クリアできたはずだぜ。チキンだっただけだろ。」


「チキンいうな。計画的で用意周到と言って欲しいな。」


幹久も要もどちらかというとゲームの中での冒険は勇者のように勧めるが、いざ現実世界でとなると、しりごんでしまう節がある。俺の場合しりごみしていたら生きていけないほどの極貧生活のおかげで随分と鍛えられてしまっているので、現実世界でもそういうことはない。


「はいはい。ケンタッキーが食べたくなるからそこら辺で勘弁したるわ。」


「ガンちゃんには敵わないね。というか、僕たちよりも武器の切れ味が少ないガンちゃんが本当に大丈夫かの方が心配なんだけど。」


「一応俺も一撃で倒せるみたいだぞ。しかもスライディングとかじゃなくって普通の突きで一撃だわ。」


「範囲増加も無しに普通の突きをこんな素早く動いてる敵にあてれるのはガンちゃんだけだとおもうな。普通はスタンダードランスに切り替えるもんだよ?」


「プラス値の関係でまだマジックランスの方が強いんだから仕方ないだろ?」


どうやら敵にも弱点みたいなところがあるらしく、そこを的確に突けば俺の武器でも一撃で倒すことができる。どれだけ要や幹久の武器が強くなり過ぎているかが解るが、それでも二人でLV3ダンジョン止まりのチキンさに笑ってやる。


「まぁ確かにその通りなんだけど、納得いかないな。」


結局以前攻略していたこともあり俺がサクサクっと敵を倒し、後ろから二人に援護してもらって余裕を持ってボスへたどり着いた。相変わらずアイテムを拾わない俺だったが、LAのほとんどを取ってしかも薬草を使っていないのでカバンの中に薬草が大量に入っている状態になった。


「お前ら二人とも薬草足りてるか?」


「前でガンちゃんがほとんどの敵を倒すんだもん野兎の回復量の方が多いから薬草なんて使ってないよ。」


「だな。やっぱガンちゃんがいると違うぜ。このアイテム達をうっぱらったらかなりお金かせげるかもしれねぇぜ。」


「はいはい。ゲーム内のお金が貯まってもうれしくないだろっつの。」


「そのゲーム内のお金を現実世界へと持って帰れる奴のセリフじゃねぇぞ。第一LV6でどんな強い敵がでてくるかわからないんだから、今のうちに資金をためておいて薬草とか消耗品を補充しておくのはだいじなことなんだからな。」


あくまで堅実に進もうとする幹久、今回は負けられないのでそれが助かっているのだが、それでも慎重すぎると俺は思うが、ゲーム内のことに関しては知識の足りていない俺よりも頼りになるので、指示には従っておく。


「はいはい。俺も状態異常を直すアイテムは持ってないから次の街では買うようにするさ。光玉みたいな敵をひるませる消耗品とかはお前らに任せるぜ、ゲームの中に入ってる分カバンがすっごい見にくいからな。」


「それくらいは任せてよ。敵をさばききってくれてるから余裕だよ。」


要がそう言ったが、そういった役目は幹久の方が得意である。弓を構えている要はどうしてもカバンを使うと隙ができてしまうが、盾をもった幹久は防御しながら安全にカバンを確認してアイテムを使うことができるのだ。


「そろそろボスだぞ。ガンちゃん先に光玉を投げるから、眼が眩まないようにね。」


「了解した。」


俺が一人で来た時はボスの攻撃を避けながらチクチク槍で突き刺していたのだが、本来の攻略方法的には光玉を使って怯ませてから倒すらしい。俺は要が光玉を出したことを確認すると、ダッシュでボスの懐にかけ込んでスライディングからジャンプ突きのコンボを決めて一旦距離を開ける。そこにライトウォーリアーの幹久が突っ込んできてボスに切りつける。単純なダッシュ切りだが武器の切れ味が全然違うので俺と同じくらいのダメージがあるかもしれない。


「このまま一気に叩きのめすか?」


「いや、一旦俺は距離を取る。こんなボスに近付いて攻撃を避けられるのはガンちゃんくらいだぜ。」


「じゃあ俺はこのままチクチク刺しまくるから、光玉を投げる時は教えてくれ。」


「はいよ。ガンちゃんまで目を回したら意味がないからな。」


そのあとの連携は完璧といっても良かったかもしれない。遠くからの狙撃と俺の攻撃でボスをどんどん弱らせてさらに的確なタイミングで幹久が光玉を投げて切りつける。その時は俺も先ほどのスライディングジャンプ突きコンボかダッシュジャンプ突き下段突きコンボで一気にライフを削って3分ほどでボスを退治した。


「嘘だろ?前に四人PTで攻略した時も10分以上かかったのに、ボスが厄介すぎることが、このLV4ダンジョンを避けてきた一番の要因だったはずなのに。」


「そりゃそうだろ。基本的にガンちゃんが前でチクチクやってくれてたから、タゲが固定されてこのボスの一番厄介な突進がなくなったからね。」


「あれは嫌だったな。光玉をうまく使わないとすっげえ勢いで遠くから攻撃してたアーチャーとかマジシャンに突っ込んで瀕死にされるもんな。追撃されたら即死って異常なダメージ過ぎるだろ。」


「ん?マジシャン?ひょっとしてこのゲームにはまだキャラクターがいたのか?」


「おま・・・リアルダンジョンの勇者様ともあろうものがそう言うことを言うんじゃねぇ。」


「俺がゲーム苦手なの解ってるだろ?」


俺は本当にゲームというものを理解してないらしい。ボスを倒した後のストーリー語りになったので、余裕もあって俺はゲーム内で足りていない知識を手に入れるべく二人に説明を要求する。


「そうだったな。このゲームにはガンちゃんと要の職と、俺みたいな職ともう二つ職があるんだ。」


「一つはさっき言ったマジシャン&ビショップだね。攻撃の杖で敵を攻撃したり癒しの祈りで味方を回復したりするよ。これは絶対にガンちゃんには扱えないだろうってあきらめたんだけど、もう一つならガンちゃんにはぴったりだったかもね。」


「もう一つってのはなんなんだよ?」


「ファイター&スナイパーだね。」


「なに?そっちの方が俺好みじゃねぇか。」


「だってスナイパーもファイターも女性キャラの格好があんまり可愛くなかったんだよ。それに元々支援に徹してもらう予定だったから、スナイパーよりもアーチャーの方が動かしやすかったから仕方がないんだって。」


「そうそう。最近忘れかけてたけど、お前は俺たちの潤い担当だったんだからな。」

俺のキャラを決められた理由を聞いて唖然としてしまうが、それよりも気になることがあったのでそちらを優先する。


「勝手にそんな担当決めんなよな。それに支援に徹して欲しいんだったらマジシャン&ビショップの方が良かったんじゃないのか?」


「それこそ潤いが足りないよ。二人ともシスター萌えってわけでもないのにわざわざ露出の少ないキャラを選ぶわけがないじゃないか。」


「お前らの気持ちは十分理解したぜ。ところでボスを倒してみて思ったんだが、要はランス使わないんだから俺のランスと交換しちゃいけないのか?」


「「あ・・・」」


「お前らなぁ。よく考えたら俺がいない間にランサ&アーチャーじゃなくて要は新しいキャラ作っておけばもっとバランスの良いPTになってたんじゃないのか?」

ゲームのこととはまったく関係ないのだが、それでも気になったことをつらつらと述べていくと、何故か二人から悔しそうな声が返ってくる。


「まさかゲーム初心者のガンちゃんにまともなことを言われるなんて・・・」


「要落ち込んでないでここはガンちゃんにお前の武器をやれよ。ガンちゃんならいっかくできるんだったら野兎のライフ回復で十分なんだからわざわざマジックランス使わないで要のスタンダードランスを使った方が圧倒的に楽だろう。」


「解った。どうせ鍛冶屋の値段も変わらないしこれはあげるよ。新しいキャラについてはガンちゃんが合宿に行っている間に考えておくから今回は待ってね。」


「おう。幹久と相談して一番いいキャラを選択してくれ。幹久と二人だったら武器の切れ味が少なくってもLV3くらいならクリアできるだろ?」


二人に足りないのは勇気だけなので、俺が合宿に行けない間にできるだけ二人にリアルダンジョンを攻略するための依頼をしておく。


「そうだね。できれば二人でもLV4クリアできたらいいんだけど、そうも言ってられないみたいだし、がんばってみるよ。そのためにも軍資金は置いて行ってね。」


「そうだな。このゲームをクリアしないと世界の危機的な雰囲気もあるし、金は置いて行ってやるよ。」


「ありがとう。じゃあ今度は50万ほどでいいよ。」


基本貧乏人の俺は50万という金額に驚いてしまう。


「二週間しか合宿に行かないのに50万もいらないだろうが。」


「いやいや、実際にゲームをするのは3週間だし、正直いってガンちゃん無しじゃあノーコンテニューなんて普通無理だから。」


「そうなのか?」


「そうなんだよ。武器が敵を一撃で倒せるようになるまでは何度もコンテニューしながら強くするのがこのゲームだからな。金は大量に必要だ。」


「そうだったんだ。何かおれ合計2000円くらいしか使ってない気がするんだがそれってゲーセン側からしたらすっごい迷惑?」


以前500円とゲームの中に入れなかったときに一度コンテニューしたので1000円そして今回ので本当に2000円しか俺はこのゲームに使っていない。ゲームセンター側からしたら何度もコンテニューしてお金を落として言ってくれることを期待しているはずだ。


「そうだろうねぇ。でもいいじゃないか。ゲームクリアができる人がいたって情報が流れたらそれだけで客は集まると思うし。」


「そうだな。それに俺がボスを倒さなかったことがこのゲームの難易度を各段に上げていたらしいからな。これからは敵の数が少しはへるんじゃねぇかな?」


「そういえばそんなこと言ってたね。」


「LV6までクリアしたら一回一度行ったダンジョンに潜ってみるか?そうすれば敵が本当に減ってるか解るんじゃないか?」


「そんな一度に減ることはないとは思うが、それも一理あるな。とにかくLV5もLV6もサクサクっとクリアしちまおうぜ。」


俺の宣言通り、LV5ダンジョンは結構簡単にクリアできた。というのも、前回貫通を持っていなかったために苦戦してやられたモンスターが要からもらったスタンダードランスを使ったら一発で倒せて、要や幹久も一撃で敵を倒すことができるのでダメージよりも野兎の回復の効果もあって薬草の消費<薬草の獲得になったことが大きいだろう。LAを取りまくっていた俺は薬草が余って来たので中堅でがんばっている幹久にあげた。それでも薬草のお世話にならない俺とピルルいわく増えすぎた雑魚モンスターの影響でたくさんの薬草が手に入ったのだがな。


「薬草を使わない人が一人いるだけでこんなに楽だとはね。」


「そうだな。俺たちに回ってくる薬草が多いから、その分野兎の回復待ちで進むのを自重したり、街で大量に買い込んだ薬草がなくなるってことがないもんな。」


「そういってもらえるとダイブした甲斐があったぜ。これならLV6も何の心配もしなくていいんじゃないか?」


ここまで一気にきた俺は随分と気が大きくなっていた。野兎もいてしかも武器の切れ味もすさまじい今の状態で恐れることなんてないのではないかとすら思えてくる。


「いやいや、街に着いたら説明するけど、あるアイテムがないとLV6はクリアができないようになってるんだぜ。今のうちにお金は貯めておいて損はないってわけだ。」


「お前ら薬草使ってるのにお金貯まってるのか?」


「ボスのクリア報酬だけのガンちゃんと違って俺と幹久はアイテムを拾ってるんだから当然だよ。というかボスのクリア報酬だけでお金が貯まっていくガンちゃんが異常すぎるんだよ。」


「そうだぜ。今は俺たちも薬草を買ってないが、本来大量に薬草を買っていってもボスの時にコンテニューしないといけないほど難易度の高いゲームなんだからな。」


「そんなもんか?そうこういってるうちにボスまで着いたみたいだぜ?」


「そうだね。今度のボスは光玉が効かないからさっきみたいには行かないと思うけど、がんばろうね。」


「幹久死ぬんじゃねぇぞ。大量にある薬草を使って生き延びろよ。」


「解ってるぜ。デスぺナで武器の切れ味が落ちたらこのままLV6突入ができなくなっちまうからな。」


「そういうことだ。街に行けば薬草は買えるんだからケチケチすんな。本当に無理だと思ったらヘビーアーウォーリアーにでもなっとけ、攻撃は俺がやってやるからさ。」


「ヘイヘイ。」


こんなことをいってLV5ダンジョンのボスに向かって行ったはずなのだが、盾を使ってうまいこと回り込む幹久と遠くから敵を狙撃する要と武器の威力があがって俄然さきほどよりもやる気の出ている俺の敵ではなかった。


「楽勝だったじゃねぇか。思ってた以上に雑魚だったな。」


「本当だね。ガンちゃんがいるってことがこんなに違うとは思わなかったよ。」


「そうだぜ。俺たちがLV5クリアした時なんてもう一人ライトウォーリアーの人とビショップの人がいて何とか辛くも勝ったって感じだったのに、お前ってやつは。」


幹久と要がクリアした時は4人PTでしかも二人と同じくらい手なれた人達で結成されたPTだったらしい。上級者は事前にPTを募集してからゲームに望む云々といろいろとこのゲームのうんちくを言っているが、せっかく聞いたこのゲームの情報も今後三人でダイブすることになる俺たちにはあまり関係の無い話しだった。


「そうだったんだな。そこまで誉められると本当に俺が勇者とかいうのになっちまったきぶんだぜ。」


「いやいや本当に勇者様なのかもしれないよ?だって俺たちと違ってゲームの中に入り込んじゃってるんだからね。」


「まぁ俺がボスを倒さないとモンスターがあふれるなんて言われても実感できねぇけどな。」


「それはボクらだって一緒だよ。」


「まぁ本当かどうかなんてわかんねぇけど、LV6のボスを倒しておけばそんな心配しなくて済むんだからサクッとやっちまおうぜ。」


「了解勇者様。」


「やめろよ、要。」


そうはいったものの、ここまで順調に進んでおり、40分近くもゲームを続けてきた俺たちは今まで行ったことがないLV6に早くいきたくてうずうずしていた。


「鍛冶屋は何にも変わったことがないじゃないか。」


「ここで一番重要なのはアイテム屋だぜ。アイテム屋に売っているカイロを買わないと次のLV6は絶対に攻略できねぇ。」


「カイロだぁ?それってひょっとして俺たちが普段使ってるあのあったかい奴か?」


「たぶんそうだね。攻略した人の話によると、LV6のダンジョンは寒いらしくってカイロ無しだと自動で野兎より少し少ないくらいずつだけどライフが減っていくらしいよ。」


「なるほどな。つまり野兎の効果がずいぶん薄くなっちまうってわけだ。だったらこのカイロってやつは購入決定だな。」


「何個買っていく?攻略した人の話だと4人PTで一時間くらいかかったみたいだし、余裕を見て20個くらい買っていく?」


「そんなに必要か?」


20個と言ってもカバンの中に入っており、しかもベルトのところから使う俺はそんなに気になる物でもない。しかし、元々貧乏が体にしみ込んでいる俺はできるだけ節約しようと勝手に頭と体が反応してしまうのだ。


「一個で五分間しか効果がないからね。これくらいは必要だと思うけど?」


「まぁお金は余ってんだからいいんじゃねえか?ノーダメージのガンちゃんは良いかもしれないけど、要の言う通り俺たちにはこれくらいあった方が安全だとおもうぜ。」


「すまん。守銭奴してる場合じゃなかったんだったな。世界のピンチと俺の初合宿参加がかかってるんだ。これくらいの出費は多めに見よう。」


「そうだね。これをクリアしたら合宿に参加できるのが決定するんだもん。とりあえず今のところは用心して多めに買っておこう。もし余ったら、モンスターが減っているのか見るためにもう一度クリアしてもいいしね。」


「なるほど、じゃあ二十個買っていこうか。」


こうして俺たちはついに目標だったLV6ダンジョンに準備万端で向かうのだった。

あれ?俺ってまた薬草かってねぇ。まぁそれはいっか。



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