一章 秘密は守ろう!
「あー。2の1やだ。本当にやだ。」
夕岐に肩をたたかれながら、震えた声で千秋は言った。
「じゃあ俺のクラスくる?」
「2の1でいいです。」
「おい!!」
千秋はメガネをかけると、夕岐から借りた本を読み始めた。
「5組ってだれか仲いい人いたっけ?」
「んー。3人くらい。」
俺はまだ薄いクラスとの記憶を探り、なんとか3人見つけ出した。
「なんか・・・。お昼休み日和だよなぁー。ぽかぽかしてる。」
「それは春だから。」
窓の外に広がる青空を見上げて夕岐はつぶやく。
「そういえばさ、4月29日・・・。さ、」
俺は途中途中言葉を詰まらせ、夕岐の顔をうかがう。
「なに?」
千秋の肩たたきをやめて、夕岐が俺のほうを見る。
「いや、なんでもない。」
「ふーん。」
俺はとっさに夕岐から目をそらしてしまった。
夕岐は、千秋の肩たたきをやめ、教室を出て行ってしまった。
「あ、ここ夕岐にはほこりっぽかったか。」
千秋は教室を見渡す。
「お前、なんて言おうとしたんだ?」
千秋の言葉に心臓が大きな音を立てる。
「え・・・。真琴のお墓に行こうかって・・・。」
「・・・・。」
背もたれにおなかをくっつけながら、椅子を左右にゆらした。
「・・・・・・。ってかここなんの教室?!」
沈黙に耐えきれず、話題をどうでもいいことに変えた。
なるべくならこの話はしたくないから。
「いらなくなった本を置いてる教室。」
「へぇ・・。」
いくつかにわけられてそびえる本の山。
窓からはあたたかい日差しがさす。
椅子も何個かあり、よくだれも見つけなかったなというほどいい場所だ。
「俺図書委員だから鍵持ち出せるんだ。」
「なんでみんな俺の心の言葉わかるんだよ!」
千秋は本から目を離して俺のほうチラッと見ると、また本に視線を戻し、
「・・・・たまに声に出てるから。」
ページをめくりながら、ため息に交えた。
そうなのか・・・!!
「ほら、また。」
千秋は口をほころばせて笑った。
***
4月21日
もうすぐ真琴の誕生日だね。おめでとう。
そういえば、クラス替えで千秋と同じクラスになったよ。
それもそのはずか。だって1年生の時とられたアンケートの友達希望の欄に、
「的場千秋」としか書かなかったから。夕瑚って書いてもきっと離されるだろうし、
部活の仲間は誰となってもよかったから、書かなかった。
真琴が存在していれば、真琴の名前を一番最初に書いたと思う。
それにしても、クラスの女子にはいつも怒りがわき出てくるよ。
お前らが死ねばよかったってね。
真琴の代わりに。
まったく、キャピキャピ騒ぐし、ウザイのかなんなのかよくわからない生物だよ。
***