入学式
◇◇◇玲奈がゆく◇◇◇
玲奈は1年A組、特進クラスだ。
国立大学を目指している。
医療関係の仕事がしたいからだ。
尊敬する父の影響だ。
クラスの中に知っている顔はいなかったが、そんなの心配御無用。
玲奈は、持ち前の人懐こさで乗り切れる娘だ。
誰にでも分け隔てなく接する。
初日から、クラスのほとんどの子と電話番号の交換よ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日は入学式。
お母さんは、いつものピンクのスーツ。
小学校の入学式も中学校の入学式もそうだった。
お金がなくて新調できなかったんだろうな。
でも、体型が変わっていないのも凄い。
私は、下ろしたての制服に袖を通す。
グレー系のブレザーと、紺系のチェックのスカートそしてネクタイ。
先輩達が着ているのをみて、可愛いなと思ったのに、私が着ると、地味に見えちゃうの?
なんだかしっくりこない。
「そのうち、慣れるわよ。しっくりくるわよ」
母が言う。
入学式が終了し、それぞれの教室で挨拶や諸々の説明がある。
私は1年A組、特進クラスだ。
お勉強を頑張って、国立大を狙っているからだ。
学費が安いからだ。
部活には入らないで、バイトするつもりだ。
母も義父も、お金の事は心配しなくていいからとは言ってくれるが、母との苦しかった生活が長かったせいか、染み付いちゃってるみたい。
自分でも嫌になる。
何だか貧乏くさいよね。
同じクラスには、同じ中学校の友達はいない。一人だけ話したことのない男の子がいるだけだ。
一からお友達作りだ。
人見知りの私には、ここが一番の不安要素だ。
帰り際、前の席の子が話しかけてきてくれた。
「その苗字なんて読むの?」
「かつらぎです」
「かっこいい苗字だね。
私、織田 沙也加。よろしくね」
「同じ中学校の友達がいなくて不安だったの。
よろしくね」
「私も。色々情報交換しようね!
電話番号教えて!」
できた。
初日で友達ができた。