急接近〜同衾
◇◇◇玲奈がゆく◇◇◇
なんとなく落ち着きを取り戻した弓道部。
玲奈は、すでに1年生の部員のリーダー役として見られている。
ある日、弓道場での練習の帰り道、安西先輩に呼び止められた。
「女の子あと1人いれば、団体戦にも出られるよね。
誰かいないかなぁ!
声かけてみてよ!」
「声かけてみますね。
それより、私の形、先輩からみてどうですか?」
「まあまあだな」
20分のそんな道のりに、玲奈は少しドキドキしていた。
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気が付いたら、朝だった。
私はお姉さんのベッドで、お姉さんの横に反対向きになって寝ている。
私の体にも、お姉さんの掛け布団がかけられている。
話をしているうちに、ふたりとも眠ってしまったんだ。
スマホの時間をみる。
ヤバい!
寝坊している。
お姉さんを起こして、私は自分の部屋に戻る。
トロい私は、お姉さんに洗面所を先に取られた。
朝食を食べる時間はない。
お弁当だけ持って、制服に着替える。
お姉さんは、私より一足先に家を出た。
私が起こしてやったのに。
ぎこちなく歩くお姉さんに、私は追い付いた。
そして、少し話しながら歩く。
「ねえ!
私達、何て言われてるか知ってる?」
「私達って?」
「優香とツムと蒼太と私。
リタイア予備軍って言われてるんだよ。
酷くね!」
「みんな怪我なんですか?」
「ツム以外はね。
ツムは家庭の事情、前言ってなかった?
1年目で怪我って、情けないよね」
「でも、引退までまだ時間あるじゃないですか」
「莉乃ちゃんって優しいね」
そんな話をしながら歩いた。
いつから、こんなに距離が縮まったんだろう?
一緒に暮らし始めて、
急にお姉さんだと言われて、
まだ1ヶ月なのに。
これも単にお姉さんの人懐こさのおかげだ。
でも、怒らせたらイビリ倒される恐怖もある。
改札口で、お姉さんと別れた。
お姉さんは、ぎこちない歩き方をしているのに、後ろ姿は颯爽としている。
そして、今日も、何人もの高校生に挨拶されている。
そして、今日も、2メートルはあろうかという男の子のお腹をぶん殴っている。