退部届
◇◇◇玲奈がゆく◇◇◇
玲奈は、怪我をして辞めたいと言い出した女の子を引き止めた。
でも、その娘は辞めるの一点張り。
何度目かに引き止めた時
「私は弓道のことは何も知らない。
でもやってみようって思ったの。
弓道部の窮地を救いたいって思ったの。
その為に色々頑張ってみようって思ったの。
そう思わせてくれる魅力がこの弓道部にはあると思うの」
玲奈は熱弁していた
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お姉さんが、時折涙を浮かべながら語り出した。
青山先輩は1学年上で、サッカー部の特待生だった。
いつもレギュラーでプロになるんだろうなって皆思っていた。
2年生の地区予選の準決勝で、青山先輩に相手のディフェンスが3人ついて、結構ラフプレイが続出して、青山先輩は倒された。
膝前十字靭帯断裂だった。
復帰する為に、手術もしてリハビリもやってたんだけど、なかなかレギュラーには戻れなかった。
すっかり荒れた青山先輩は、同じチームのメンバーにキツい事言われて、手を出してしまった。
特待生の特権を奪われて、その後すぐに自主退学してしまった。
その時も、学年や競技関係なくみんなで青山先輩を訪ねたんだけど、もう心を開いてくれなかった。
それからしばらく会ってなかったんだけど、私の怪我をどこからか聞きつけて、バイト先に会いに来てくれた。
初めのうちは慰めてくれていて、同じ経験をしたもの同士だし心地よかった。
「頑張れ!戻って来い」ってうるさい彼氏の飛鳥と別れて、先輩と付き合おうかなとまで思った。
青山先輩と仲良くなってから、もう辞めちゃおうと思いだして、職員室に退部届を貰いに行った。
退部届の管理をしているのは、私の一年生の時の担任だった女の先生で
「退部届下さい」って言った途端に、大きな声でこう言った。
「あなたには、退部届はあげられません」
って泣きながら。
そしたら、他の先生達も集まって来た。
その元担任の先生に、
「あなたの取り柄は、足じゃないでしょう!
その剥き出しの闘争心と負けん気でしょう!」
「あなたの復活劇が見たいのよ」
って言われちゃった。