事件〜男が乗り込んできた③
◇◇◇玲奈がゆく◇◇◇
ボロボロの弓道場もどきの横で体幹トレをしていた時だ。
サッカーボールが凄い勢いで飛んできて、1人の1年生の女の子を直撃した。
周りの人達も巻き添えになり、数人が転んで怪我をした。
その様子に、ボロ弓道場で練習していた先輩達が慌てて出てきた。
サッカー部員達も集まってきた。
ボールの当たった女の子は、顔を強打し鼻血が出ていた。
煽りを受けて倒れた男の子も手を捻挫していた。
玲奈と春斗は、怪我をしたふたりを保健室に連れて行った。
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母がアパートに着いた時、同じアパートの人に、
「娘さんが男の人と凄く揉めてたけど、大丈夫?」
と聞かれたそうだ。
母は、慌てて帰って来た。
玄関で大泣きしているお姉さんと私を見て、
「何があったの?」
と聞いてきたが、ふたりとも何も答えられないで泣くばかり。
母は、警察呼んだ方がいいかしらとか慌てふためいている。
お姉さんが、
「もう大丈夫です。
友達と喧嘩していただけです」
と泣きながら答えた。.
「本当に大丈夫?」と何度も聞いて慌てふためく母。
お姉さんは、私に「ありがとう」と言って部屋に戻っていった。
お姉さんは、その手に握っていたバドミントンのラケットを、ダンボール箱に無造作に戻した。
震えが止まらない私を心配して、母が何があったのか問い詰めるが、話せなかった。
恐怖心もあったが、これはお姉さんが話すべきことだと、そう思った。
その後1時間位して、チャイムが鳴り、優香さんとツムギくんとソウタ君がやって来た。
「夜分遅くにすみません」
3人は、すぐさまお姉さんの部屋に直行した。
すぐに駆けつけてくるお友達がいて、私は羨ましかった。
お姉さんのオイオイと泣いている声が、しばらく聞こえてきた。