事件〜男が乗り込んできた②
◇◇◇玲奈がゆく◇◇◇
ロードワークはサッカーグラウンドの柵の外を3周走る。
慣れたらもう一周増えるらしい。
玲奈だって、こんなに走ったことなんてない。
そんな時
サッカー部員の数人が、ヘロヘロになっている弓道部員をからかって笑う。
負けるものか!
ロードワークが終わったら、ボロボロ練習場の前で体幹トレーニングだ。
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すると、お姉さんが私からラケットを取り上げて、男に振りかざす。
男が両手を上げて、こう言った。
「お前は、もうこっち側の人間なんだよ。
何迷ってるんだよ。
膝前十字靭帯損傷は、致命傷なんだよ。
アスリートとして終わりってことなんだよ。
たとえ現役復帰できても、もう元の様には戻れないんだよ。
悩んでないで、早くこっちに来れば、楽になるんだよ」
すると、お姉さんがこう言った。
「たとえダメだとしても、
私は、あんたの様にはならないからな!
もうこれ以上、私に近づくな!」
「復帰すれば、ますます傷つくだけなんだよ。
もう諦めちまえばいいんだよ」
「あんたは、何をした?
何もしないで諦めただけじゃないか。
たとえ、ダメでも、あんたみたいにはなりたくないんだよ!
わかったら、さっさと出て行って!
もう2度と私の前に現れるな!」
「お前、飛鳥と別れて、俺と付き合うんだろう?
お前、俺とヤッたよな!」
「うるさい!
もう二度とごめんだよ。
今度ここに来たら、ぶっ殺すからな」
そう言って、
お姉さんは、ラケットでその男を何度も殴りつけた。
男は睨みつけて出ていった。
お姉さんは、すぐさま鍵を掛けた。
そして、座り込んで大声で泣いた。
私は、震える手でお姉さんを抱きしめた。
私も怖かった。
そして、一緒に泣いた。
そこに、母が慌てて帰って来た。