先輩マネージャー田中
◇◇◇玲奈がゆく◇◇◇
玲奈が弓道部に入って2週間になろうとしていた。
弓道部の部員は20人になっていた。
一年生はロードワークと筋トレからだ。
毎日毎日、体力作りの日々だ。
この時点で、一年生の半分以上が脱落した。
弓道にロードワークや筋トレが必要とは思わなかったのだろう。
玲奈は、辞めていく一年生を引き止めた。
安西先輩は、
「軽い気持ちで入部してきた奴らは、皆ここで脱落するんだよ。
淘汰されたと思って諦めよう」
軽く言う。
玲奈は思った。
「私はどうなの?」
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私は決意した。
部活をやってみよう。
弓道部のマネージャーを引き受けてみよう。
なんだか明るい高校生活が待っている気がした。
しかしだ、
毎日のロードワークに、マネージャーも参加させられる。
マネージャーも体力いるんだからと言われて。
私はいつも途中棄権だ。
でも、マネージャーだから許されているところもある。
弓道部の一年生マネージャーは、私と説明会の日に残っていた女の子のふたりだ。
小澤 杏里さん。
お姉さんにしっかり者と言われて浮かれていた私が、目を覚まされる程の落ち着きようの持ち主だ。
しっかり者としての自負もあり、入学時からどこかの部でマネージャーをやりたいと思っていたと言う。
そして、もうひとり。
2年生の男子のマネージャーで、私達に仕事を教えてくれる。
そして1年生をしごく。
事務的なことから、道具の管理、弓道の心得なんでも卒なくこなす。
田中 清流先輩だ。
眼鏡をかけて真面目そうだ。
積極的な杏里さんと違って、いつも出遅れてしまう私は、田中先輩によく怒られる。
私はマネージャーになってから3日後に、あることにやっと気付いた。
田中先輩の右腕は義手だった。
だって、なんの違和感も支障も感じなかったんだもの。