真っ当
◇◇◇玲奈がゆく◇◇◇
弓道部の練習場は、もともとやっつけ仕事な印象で、更には雨風に晒されてボロボロだ。
ひとりずつ、この狭くて閉鎖的な空間での練習では孤独すぎる。
本当に弓道に打ち込んでいる人でなければ、この空間では無理よ!
玲奈はそう思った。
「この練習場は本当に個人練習の場で、市内の弓道場に出向いての練習が主になっている」
3年生で今年が最後の安西部長が言った。
個人戦では、昨年上位に食い込んだという。
この環境でその成績って凄い人だと感じた。
私も、この人のようになれるかしら!
「せめて5人になって、一度は団体戦に出たいな!
そう思ってるんだ」
安西部長がそう言った。
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その時、お姉さんのスマホに電話がかかってきた。
お姉さんは、慌てて玄関のドアを開けた。
お姉さんの学校の制服を着た女の子が入って来た。
お姉さんに抱きつきながら、オイオイと大泣きした。
お姉さんは、その頭を撫でている。
髪の毛をビシッとシニヨンにしているのでわからなかったが、ユウカさんだ。
まつ毛は相変わらずバサバサだ。
つけまつ毛じゃなかったんだ。
お姉さんは、ユウカさんを自分の部屋に招き入れる。
私は、お姉さんのお弁当箱とコップを洗って、自分の部屋で着替えた。
ユウカさんは、興奮していて大きな声で泣きながら喋り続ける。
私は、聞きたくなくても聞こえてしまう状況だ。
「今日から、練習行ったんだね?」
「コーチに怒られたよ。
先輩達にも無視されるし。
やっぱり、もう辞めたいよー。
えーーーん!」
「じゃあ、もう辞めてどこかのクラブに入りなよ」
「できる理由ないじゃん。
うちは貧乏なんだよ。
体操部辞めたら、学費まるまる支払うなんて、うちには無理だよーー」
「じゃあ、我慢して続けるしかないじゃん」
「もう半殺しだよ、あの日から。
私が落ちて骨折して、団体戦負けてから。
もう辛いよ」
「前から言ってるけどさー、
怒られたり無視されたりするのは、ユウカのせいで負けたからじゃないと思うけど。
練習サボるからだと思うよ。
学費の為とは言え、部活辞めないって腹括ったんでしょう!
やるしかないじゃん!」
「わかってるよー、そんなことは。
でも、辛いんだよー。
えーーーーーん!」
お姉さんの言ってることは、真っ当だ。
物凄く!