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俺の召喚体(いもうと)たちが優秀(やり)すぎる!  作者: かみきほりと
試験に挑む召喚術士、王都滞在中も奮闘する

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85 新たな妹に心を込めて

 実際に目の前で召喚されたのだから、疑う余地はない。

 人間の召喚は可能なのだ。

 一度は疑心暗鬼に陥った者も、やる気を取り戻して召喚を試みる。


 それをただ待っているのも何なので、俺たちは念話で情報交換していた。

 実際には、新たな妹がサンディーとメイプルを交えて三人で話しているのを、俺たちが聞いているだけだけど……

 それに、いつまでも貫頭衣というのも可哀想なので、サンディーを付き添わせ、別室を借りて着替えさせた。


 彼女の名前はアメリア。

 得意なのは、相手のことを観察すること。

 話を聞くのが好きで、人を見る目には自信があるそうだ。

 その彼女(アメリア)の見立てでは、どうやら俺は「いい人」らしい。


 着替え終わった彼女が出てくると、みんなの手が止まった。

 目を奪われたまま、無意識にため息を漏らしている。

 俺も感心したが、その多くは、どこか中性的な彼女が、女性らしい衣装をまといつつもなお凛としている姿……というよりは、衣装に対してだった。

 隣に立つサンディーと同じ、仮面の軽装鎧姿なのだが、薄衣も含めて全てが純白だった。

 なんでそんなものが用意されていたのか疑問だったが、もしもの時のために、予備として材料を用意していたらしい。

 白色ならば、見栄えがいいし、誰が使うにしろ他の人と色が被らない……という理由らしいが、アメリアにはとても似合っていた。




 召喚の方は、どうやら苦戦しているようだ。

 そりゃそうだ。もし新たに召喚できるだけの余力──風精霊(フィーリア)に言わせれば、心の奥底に秘めている欲望ということになるだろうか──があれば、すでに何かを召喚しているはずだ。

 ただ真似をすればいいってわけじゃなく、要は心の在り方だと風精霊(フィーリア)が指導しているのだが……

 全ての手順が完成された召喚術を完璧に会得してる者ほど、俺のことを理解するのは難しいだろうし、苦労すると思う。


 意外にも最初に歓声を上げたのは、男子学生(ガーランド)だった。

 だが、現れたのは人間ではなく、闘牛だ。

 それでも、やっと二体目が召喚できたと、大喜びしている。


「どうやら、あの子は、大きなものや力の強いものに憧れているようね」


 風精霊(フィーリア)が、そう分析する。

 結局、新たに召喚されたのは、この闘牛のみだった。


 時間も時間だ。すでに、昼の弐つ鐘が鳴って久しく、窓の外では太陽も低くなってきているとあって、解散することとなった。

 それならばと、元クラスメイトで、今は新任教師のクーナ・リリーベルが、外門まで付き添うと申し出てくれた。


「あー、そうだ、リリーベル。その前にちょっと、別室を使わせてもらってもいいかな?」


 そう耳打ちすると、新任教師(リリーベル)は、少し挙動不審になりながら、おずおずと答える。


「えっ、構わないけど……、何か重要な話?」

「まあ、そうだね。ここを出る前に、彼女と契約しておこうかと思って」


 なんだか少し落胆した様子のリリーベルだったが、どうぞと快く別室へと案内してくれた。

 そして、内側から鍵をかける。……リリーベルが。


「えっ、なんで中に?」

「契約するところを、見学させてもらおうかと思って。……ダメ?」


 そんな、おもちゃを取り上げられた子供のような目をされても困る。

 別にダメってわけじゃないけど、召喚印の場所によっては、服を脱いでもらったり、とても説明できないような状況になったりする。

 ともあれ、召喚印の場所を探すのが先だ。


『あっ、お兄ちゃん。それなら、右のお尻の下にあったわよ。横のほう、少しだけ布をめくれば見えるはず』


 そうか。服を脱がなくてもいいのなら大丈夫だな……


『ああ、兄さん。少しだけいいだろうか』

『ん? アメリア、どうした?』

『そう、それだ。だが、まずは順を追って話すとしよう』


 なんだろう。何か深刻な話だろうか。


『そうだな。契約の前に、互いのことをもっと知った方がいいからな』

『そう身構えなくてもいい。全員が妹という事であれば、当然、自分も妹であるべきだと思うのだが、それでは年長組三人で、三つ子ということになる』

『まあ……そうなるな。さすがにメイプルと双子っていうのは無理があるしな』


 俺の下となると、サンディーとディアーナで、双子という設定になっている。さらに下となるとメイプルとなる。

 俺とサンディーの間や、サンディーとメイプルの間というのも無理がある。

 あくまで俺の妹という設定にこだわるのならば、サンディーやディアーナと同い年、三つ子とするのが最良だと思う。

 だが、言いたいのは、そういうことではないらしい。


『聞けば、サンディーさんの本当の名はアレキサンドライト、ディアーナさんはディアミリアスフィリーナというらしい』

『たしかに、そう聞いたな』

『そこで、私にも略した名というものを頂きたいのだが』

『いや、二人の名前は長いから略すことになったけど、アメリアだったら略す必要がないように思うんだけど』

『三つ子というのならば、こういう所でも共通にしておかなければ、思わぬところで足を掬われかねないからね』


 どんな深刻な話が出てくるのかと思ったら、そういうことかと拍子抜けする。

 とはいえ、本人にとっては真剣な問題なのかも知れない。


『そうだな……。ちなみに、アメリアは何がいいと思う?』

『単純にアメリというものを考えたのだが、やはり、ここは呼びやすさを重視して、ミアというのはどうだろうか』

『ミア……。うん、いいんじゃないか? とても可愛い響きだ』


 おっ、笑顔がすごく可愛い。……いやまあ、見えているのは口元だけだけど。


『兄さんに気に入ってもらえてよかったよ』

『あっ、それで、三つ子の順番は決めたのか? 一番下は、サンディーだよな』

『そうだね。妹の中の妹は譲らないって、言われたよ』

『あはは……、サンディーはブレないな。じゃあ、一番上は?』

『なぜか自分が一番のしっかり者に見えるからと、上の姉を仰せつかったよ』

『なるほどな。いきなり五人の妹ができて大変だと思うけど、頼んでいいか?』

『もちろん。自分はみんなを支える柱として呼ばれた存在だからね。もちろん、兄さんのことも、しっかりと支えさせてもらうよ』

『ああ、よろしく頼む』


 目を合わせて、同時にコクリとうなずく。


「じゃあ、召喚印を」


 俺の声に従って、ミアは後ろを向き、腰を突き出すようにして、お尻の脇の布をめくる。

 それにしても、本当に美しい肌だ。

 ……あー、これはダメだ。冷静に考えたら、見た目がよろしくない。これでは、どんな理由があろうとも、俺の評価が地に落ちそうだ。

 それに、俺自身、こういう行為にかなり耐性が付いたと思っていたが、さすがに人が見ている前でコレは辛い。

 とはいえ、ぐずぐずしていたら、変な空気になる。


 大きく息を吐き出すと、これは儀式なんだと自分に言い聞かせ、召喚印に唇を当てる。

 これも慣れた感覚だ。目の前の召喚印が輝き、俺の中にミアの存在が流れ込んできて、温かい気持ちで満たされる。


 俺は立ち上がると、ミアと向かい合って、今後もよろしく……とばかりに、ガッチリと握手を交わした。


「えっ、終わったの? ウォーレンくん、聖句は?」

「まあ、俺たちは、言葉にしなくても心で通じ合ってるから……」


 そういえば、聖句のことをすっかり忘れていた。

 念話でのやりとりが、聖句の代わりになったのだろうか。


「俺さ、退学になって分かったことがあるんだ。大切なのは心を込めること。儀式はその為の手段に過ぎないって」


 俺の言葉に、リリーベルはキョトンとしている。

 それはそうだろう。正しい儀式を教えるのも教師の役目だ。


「俺の場合、儀式があると、正確に儀式を進めなきゃって思いが強くなり過ぎて、それが雑念になってたんだと思う。だから、今の成功は、儀式を忘れて心を込める事に集中したからだって思うんだ。もちろん、心を込めて儀式が行えれば、それが一番なんだろうけど……」


 真剣な表情でリリーベルを見つめる。


「教師になったのなら、俺みたいな生徒がいるってことを覚えておいて欲しい。リリーベルには、努力しても上手くいかない生徒を無能だと斬り捨てるんじゃなくて、どうして上手く行かないのかを一緒に考えられる、そんな先生になって欲しいと俺は願ってるよ」


 契約の儀式とはいえ、女性のお尻にキスをしたのだから、ドン引きされても仕方がない……と思う。

 だけど、その心配はなかったようだ。それどころか……


「うん、分かった。肝に銘じておくよ」


 学院で教わった手順を無視した言いわけに、ほんの少し本音を加えた言葉だったが、リリーベルは感銘を受けたように、俺の両手を取って約束してくれた。


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