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俺の召喚体(いもうと)たちが優秀(やり)すぎる!  作者: かみきほりと
試験に挑む召喚術士、王都滞在中も奮闘する

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73 昼食休憩の教室で

 俺一人だけ教室に残るよう言われて待っていると、昼食が運ばれてきた。


 二人の生徒がいないのは、食堂を使っているのだろう。どうやら、部外者である俺は、特別扱いされているようだ。

 だがこれは、学院側の配慮だと考えられる。

 今ごろ食堂は生徒で一杯だ。そんな場所に部外者が放り込まれたら、少なからず騒ぎになるだろうし、落ち着いて食事なんてしていられないだろう。


 ミルク入りのクルミパン、ヒュージャー肉のステーキ、スクランブルエッグにジャガイモのスープ。それに紅茶までついている。

 紅茶がなく、ステーキが豆料理だったら、俺が昔によく食べていたもので、セットの中で一番安いものになる。

 当時はこれでも十分に美味しかったのだが、サンディーの料理に舌が慣れたせいか、もし感想を求められたら、物足りないと思いつつも普通だと答えるだろう。

 それに、一応、クロエの分もあるのだが……


「こっちのを二人で分けるか……」


 深皿に入ったミルクはまだいいが、もう一つの皿に乗っているのは、恐らくペット用の飼料だろう。さすがに、そんなものをクロエに食べさせたくはない。

 サンディーに相談したところ、ケットシーハウスで用意してもらえることになったので、クロエには向こうで食べてもらうことにした。

 用意してもらったペットフードは、残して無駄にするのも悪いので、向こう(ケットシーハウス)に送って何かに活用してもらうことにする。


 どうやら、風精霊(フィーリア)もどこかへ行ったようで、姿を現さない。

 俺も向こうで一緒に食べたかったな……と思いつつ、広々とした教室で一人寂しく、懐かしくも嬉しくない少し冷めた料理を食べることにした。




 廊下から足音が聞こえてきた。

 また通り過ぎるだけだろう……と思っていたのだが、扉の前で音が途絶え、コンコンコンとノックされた。

 ほとんど食べ終わり、残っているのはスープが少しと、食後用に残しておいた紅茶だけだ。

 どうぞと返事をすると、さっきの女性試験官が入ってきた。

 残された実技試験の説明だろうか。……なんて思っていたが、意外な言葉が飛び出した。


「お久しぶり、ウォーレンくん。……って、やっぱり覚えてないか」

「失礼ですが、どなたでしょうか。見たところ、まだお若いようですが」


 王都で俺の事を知る者は限られる。

 少なくとも、三年ほど前に会った人物なのだろう。

 あの当時は、召喚術士になろうと必死で、他の記憶が希薄だった。

 お世話になった先生や、当時の生徒ならば、かろうじて思い出せるかもしれないが、それ以外となるとお手上げだ。


「突然、ごめんなさい。その私、一緒にここで学んだ、クラスメイトのクーナ・リリーベル……だけど、やっぱり覚えてない?」


 まさかの同級生(クラスメイト)だった。……なのに、思い出せない。

 国家召喚術士のブローチをつけているので、同じ召喚術科の生徒だったんだろうけど……

 当時から廃れていたので、同学年の召喚術科の生徒は、全部で八人しかいない。しかも、俺より先に退学したものや、すぐに精霊術科に転科した者がいたので、俺を除けば残り五人に絞られる。

 それが女子となれば、二人しかいない。

 さすがに、そんなクラスメイトのことを忘れるだなんて、薄情過ぎると自分でも思うが……

 

「クラスメイトの女子は二人だけだったけど……。トラブルメーカー……じゃないよな。たしかあの子は……メイムとかいう名前だ。もう一人は、窓際でずっと本を呼んでいるような、大人しい子だったし……」

「そうそう、その、大人しく可憐な少女が、私よ」


 そう言われて、必死で思い出そうとする。


「…………って、そこで黙られると、なんだか私が恥ずかしいんだけど」


 その言葉で、自分で「可憐な少女」と言ったのは冗談だったのかと気付く。

 いや、それよりも……


 明るい髪色は、何となく見覚えがあるような気がする。だが、短く切ったのか、髪型が全然違う。それに表情も……

 あまり覚えていないが、あの子はなんというか、半開きの目で愁いを帯びたため息を吐いているような少女だった。目の前の女性とは似ても似つかない雰囲気だ。

 それに、背が低くてやせっぽちだったはずだが、こちらは太陽が似合うような健康的な印象を感じる。

 まだ、「あの子の姉なんです」と言われたほうが、納得できるだろう。

 とても、同一人物だとは思えない。


「……この数年で、何があったんだ?」

「それは、こっちの台詞よ。あれだけ一生懸命に勉強をしてたのに、いきなり学院を辞めちゃうし、しかも行方不明って聞いたし。だと思ったら、いきなり試験を受けるとか。それを聞いて、本当に驚いたんだから」

「まあ……、いろいろあったが、残る余生は田舎で農夫をしようと思ってるんだ」

「……いや、本気で何があったのよ。それに、()()フェルミンさんの弟子なんだって? 何がどうなって、そんなことに?」

「それを説明するには、時間が足りないかな。言えることは、俺が召喚術士になろうと思った切っ掛けがフェルミンさんで、こうして試験を受ける事になったのもフェルミンさんのおかげなんだ。……それより、そっちは何があったんだ?」


 冗談抜きで、相手が理解できるまで説明しようと思えば、丸々一日かけたとしても難しいと思う。


「それは……この子のおかげ」


 現れたのは、手のひらサイズの毛玉……ではなく、薄紫色の羽根の塊?


「紫ミミズクのルミナ。自分を変えたいって願ったら、いろいろと協力してくれて……。どう? 見違えた?」

「召喚術士には、圧倒的に不利な状況でも、ひっくり返せる方法がある……だな」

「そうそう、それ。私の場合は、憧れていた自分になれた……ってことかな。本当に人生が変わったわ。一年ほど実家に戻ってたんだけど、先生の成り手がいないって聞いて、思い切って訪ねてきたら採用されたの。昔の自分だったら、絶対に考えられないよね」


 そういう体験談を持っていて、希望に満ち溢れていれば、生徒にもいい影響を与えるのかも知れない。よく分からないが……


「召喚術で良い方向に変わったのなら、良かったな。俺もまあ、似たようなもんだ。退学になって田舎で農夫をしてたら、なぜか召喚が成功して、フェルミンさんの勧めで資格だけでも取っておくことにしたんだ」

「あ~、うん、そっか……。噂じゃ、国王さまの命令で密かに育て上げた特殊部隊の隊長って話だったから、本当に何があったのかって思ったんだけど」


 思わず、口に含んだ紅茶を噴き出すところだった。

 いつの間にか、国王命令で育てられたことになっている。

 少し咳込んだが、落ち着いてから、しっかりと否定しておいた。


「……それで用事は? まさか昔話をしにきたってだけじゃないんだろ?」

「あっ、そうだ。実技試験の説明をしないとね」


 試験内容が毎回変わるのはいつものことだが、ここまで特殊なのは初めてなのだそうだ。

 筆記試験が小論文だったり、試験中の不意打ちもそうだ。実技試験も、能力を測るだけじゃなく、実戦的な要素を取り入れているらしい。


 実技試験は、いくつかある課題の中から、好きなものを選べるらしい。

 優秀さをアピールするなら、全部に挑んでもいいらしいが……

 俺の場合、不必要にアピールをする必要はない。

 とにかく、合格さえできればいいのだ。


 俺は、数ある課題の中から、クロエが黒猫姿でも実力が発揮できるものを選んで、女性試験官(リリーベル)に伝えた。


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