表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の召喚体(いもうと)たちが優秀(やり)すぎる!  作者: かみきほりと
試験に挑む召喚術士、王都滞在中も奮闘する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/283

67 法術の四大系統

 魔導術、精霊術、聖法術、そして召喚術。

 キュリスベル王国では、この四つの系統が主流となっている。


 それらは法術と呼ばれ、力の根源は同じなのだが、使い方……というか、考え方や技術がまるで違うので、互いに相容れないものだと考えられていた。

 というのも、どれかひとつを極めると、他の系統が使えなくなるのだ。

 裏を返せば、素質が無ければどれにもなれないし、素質があればどの系統にもなれる……ということになる。

 もちろん、個人の好みや資質に影響されるので、得意不得意は出てくるが……


 稀に複数の系統を扱える者も現れるが、その場合、どれも中途半端で実用性に乏しく、最終的には一つに絞る選択を迫られるようになる。

 それならいっそ、どれにするか最初に定めて、修練したほうが効率的だ。

 ……そう、風精霊(フィーリア)が説明してくれた。


「ハルキの場合、召喚術を失えば、この子たちは一生精神世界(アストラル)から出られなくなるでしょうね。まあ、消えはしないけど、ハルキが一人で全員分のエネルギーを維持しなくちゃならなくなるから……驚くほどの大食らいになるわよ」

「それは困るな……。絶対に無理なのか?」

「ん~、そうね。一応だけど、全ての系統を極めたって人もいるわ。……伝説の中で、だけどね」

「へぇ、可能性はあるんだ……。それって誰?」

「エーデワルト様。このキュリスベル王国の初代女王よ」


 それなら、学院で真っ先に教わった。

 この大陸が魔物であふれた時、人々を護るために戦った『救世の三英雄』。その一人が、法術使いのエーデワルト様だった。




 ふふっ……と笑いながら、フェルミンさんが茶々を入れる。


「ハルキのこと知ったらぁ、みんな腰を抜かすわよ~」

「いやいや、フェルミンさん。俺は、みんなを見せ物にするとか、そんな可哀想なことをするつもりはないですよ」

「違うよぉ? むしろ、堂々と公表してあげたほうが、彼女たちのためになると思うわよぉ?」

「公表して、何の得があるんですか? 俺たちは、ウラウ村で、のんびり幸せに暮らせればいいんですよ。資格を取るのは、要らぬ騒動を避けるため、念のためなんですから、波風立てずにサラッと取れればいいんですよ」


 あれ? もしかして、フェルミンさん……動揺してる?

 なぜか俺と目を合わそうとせず、顔を背け、あらぬ方向へ視線を泳がせている。

 何かを企んでる? いや、すでに何かやらかしたとか……?


「ハルキ、心配しなくても大丈夫よ。多少騒がしくなるのは仕方がないけど、ちゃんと向こうで農業が続けられるようになるわよ」

「本当か?」


 なんだろう。フェルミンさんたちから、どうあっても人間の召喚体をお披露目させたい……という意思を感じて、なんだか釈然としない。

 そこへ、メイプルから助言が届き、なるほどと納得する。


「で、フィーリア……。公表したら何の得があるの?」

「そうね……。たとえば、彼女たちに正式な市民権が与えられたり……」

「それって、税金を取られるってことだよな。いやまあ、いいんだけど」

「あっ、もちろん、免除してもらえるように頼んでみるわ」


 召喚体に戸籍を与えた上で免税するだなんて、かなりの無茶だが……

 つまり、そんな無茶を押し通せるほどの価値がある……ということになる。

 とはいえ、そんなことを領主が許すだろうか。

 よく知らないが、そんな命令が下せるのは……


「まさか王様が動く……なんてことはないよな。あー、そういや、領主は捕まったままだろ? 代わりってどうなったんだ?」

「そうね……。たしかまだ不在だったはず。代行が業務を引き継いでるから、最低限のことはできてると思うけど、早く新しい人が決まるといいわね」


 何だか話が逸れてしまってうやむやになってしまったが、召喚術士のまま魔導術士になるのは無理なのだろう。

 空を飛べたら、ウラウ村に帰るのが早くなると思ったのだが……いやいや、せっかく俺の為にとみんなが作ってくれた馬車だ。置いて帰るわけにはいかない。


「ごめんなさい、マリーさん。みんなと過ごすには召喚術士じゃないとダメみたいです。でも、師匠になるって言って下さって嬉しかったです。ありがとうございました」

「それならば、仕方なきことですわね。ワタクシとしても、皆様とのお別れは悲しく思いますから。ですが、マルチホルダーの可能性もありますので、気が向けば申し出て下さいな」

「マルチホルダー?」

「全ての系統を操る者のことですわ」

「そんな才能があればいいんですけど。たぶん、そんな必要はないと思いますけど、教わる機会がありましたら、その時はよろしくお願いします」

「ええ、その時はぜひ任せるといいわよ」


 なぜか握手を求められて握り返す。

 フェルミンさんとじゃれ合うための口実かと思っていたのに、マリーさんは本気だったのかも知れない。


「じゃ~、ハルキぃ、出かけるから準備してねぇ」

「えっ? どこへ?」

「もちろん、試験の手続きに決まってるじゃない。そのために来たんでしょ?」

「いやまあ、そうですけど……。手続きだけですよね。そのまま試験ってことは」

「私は、それでもいいんだけど……。たぶん、向こうも準備が必要だからねぇ」


 それで早く終わるのなら望むところなのだが、心の準備が……


「……あの、フェルミンさん? いちおう、ここに俺もいるんですけど」

「どうせ、妹たちで見慣れてるんでしょぉ? 別に気にしなくていいわよ」


 何だか誤解が生まれそうな言われ方だが……

 別に俺は、妹たちの着替えをジロジロ眺めたりはしていない。

 一緒に生活をしていたら、自然と視界に入って来るだけだ。


 そもそも、そういう問題ではないのだが……

 こう堂々と目の前で着替えられると、反応に困るというか、下手に反応するほうが変な気がする。


 俺のほうは、まだ外出着のままだったので、支度をする必要はないのだが……


「ほら、ハルキも早く着替えて」

「着替えって、これ外出着ですけど?」

「召喚術士の服とか、学院の制服とか、あるでしょ?」

「……ないですよ。学院を出る時、全部置いてきましたから」


 そのくせ、杖だけは持って出たわけだが……

 悪用されないために制服は徹底管理されるが、杖はその限りではない。

 それに、召喚術士の杖は、かなりの値打ちものだったりする。


「まあ~、そうだろうと思って、用意しておいたわよぉ。それに着替えてね」

「ありがとうございます」


 受け取ったものの、これは……

 羽根飾りの帽子、毛皮のジャケット、革で要所を補強したズボン、革のブーツ。

 いわゆる、伝統的な召喚術士の服だった。

 もしかしたら、これも、召喚術士が不人気になった理由のひとつかも知れない。

 昔ならば、猟師みたいでカッコイイともてはやされた時代もあったらしいが、今となっては時代遅れな上に、王都を歩くには羞恥心を捨てなければならない。

 そう覚悟していたのだが……


「あれ? 思ったほど悪くないな……」

「でしょ? お兄ちゃんのために、私が手直ししたんだよ。気に入ってくれた?」

「サンディー、すごいな。これなら、外を歩けそうだ」


 それでは……と、外へ出ようとしたのだが、当然のようについてこようとした妹たちを、風精霊(フィーリア)が止める。


「ちょっと待った。そんな、みんなで行ったら目立つでしょ。護衛なら、黒猫と幽霊だけにしなさい」

「まあ、そうだな。妹同伴でっていうのも変だもんな。クロエ、ディアーナ、頼めるか?」

「兄者、謹んで拝命したします」

(かめ)へんよ。せやけど、自分で()うんも変やけど、幽霊ってほんま便利やわぁ」


 ディアーナの姿が消えて、マリーさんとフェルミンさんが、興味深げに見つめ、手を伸ばす。当然、幽霊のディアーナには触れられない。

 幽霊の姿で召喚してしまい、悪い事をしたなと少し心を痛めていたのだが、ディアーナの前向き(ポジティブ)で明るい性格のおかげで、救われている気がする。


 シアは、少し残念そうにしながら、腕輪と木剣を生み出してくれた。


「ん? シア? 能力強化なら木剣だけでもよくないか?」

「ダメ。もし武器を失った時、能力が下がったら大変」

「あー、たしかにそうだな。ありがとう、シア」


 準備が整った俺は、飛び上がった黒猫(クロエ)を肩に乗せ、フェルミンさんと一緒にケットシーハウスを後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ