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俺の召喚体(いもうと)たちが優秀(やり)すぎる!  作者: かみきほりと
試験に挑む召喚術士、王都滞在中も奮闘する

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62 馬車に揺られて、物思いに耽る

 フェルミンの乗った馬車が去った後、残された大量の盗賊たちの様子を見て、町からやってきた兵士や自警団員たちは首をひねる。


 ()()フェルミンならまだしも、これをやったのはフェルミンの弟子と呼ばれる男と、その妹たちで、フェルミン自身は高みの見物をしていたらしい。

 相手は正気を失っていたようだと、そう聞いてはいたが、これだけの人数が一斉に……なんてことが、起こり得るのだろうか。

 だが実際に、彼らの多くは、意味不明なことを呟いていたり、号泣したり叫び出したりと情緒が不安定になっている。

 

 その謎は、移送が終わり、捜査が進むにつれて判明していった。

 彼らの野営地と思われる場所がいくつか見つかったが、その数カ所で、幻覚キノコが見つかった。しかも、鍋の中にも残されていた。

 この国に多く自生しているキノコで、食用キノコと似ているため、誤って食べる被害が毎年出ている。

 とはいえ、効果時間が短く、落命の心配もないので、笑い話のネタにされたり、罰ゲームに使われたりもするという、その程度のものなのだが……


 これは、ディアーナのことを伏せるための隠ぺい工作だった。

 騎士たちには口止めできるが、置き去りにする襲撃者の口までは塞げない。なので、彼らの証言の信ぴょう性を失わせる策を立てた。

 いつも通り、メイプルが発案し、クロエが実行したのだが……

 目論見通り、襲撃者たちは幻覚キノコを食べて錯乱し、大人数にも関わらず馬車一台の戦力で撃退された……という報告書を、兵士は呆れながら作成した。




 力を使い過ぎた俺は、馬車の中で休ませてもらうことになった。

 できるだけ邪魔にならないよう、座席の端で、壁と背もたれに身体を預ける。

 ひざの上には、当たり前のように黒猫(クロエ)を抱えたシアが、隣にはメイプルが座り、せまい場所に三人と一匹が身を寄せる。

 サンディーも疲れているだろうに、御者台でフェルミンさんの隣に座っている。

 狭い車内と違って、手足を伸ばしてゆったりできるが、風や振動をまともに受けるので快適とは言えない。


 ちなみに、手綱を握っているのはフェルミンさんだったりする。

 面白いものを見せてもらったし、任せてばかりじゃ悪いから……と引き受けてくれたのだが、不安しかない。

 でもまあ、間近でサンディーが見ていてくれているし、滅多なことにはならないだろう。

 そういう意味でも、心の中でサンディーに、感謝と謝罪の気持ちを送る。


「どうした、メイプル。そんな心配そうな顔をして」

「いえ、その……」


 スルッとシアの腕から抜け出した黒猫(クロエ)は、メイプルの肩に飛び乗ると、元気付けるように身体を頬にスリスリさせる。

 さすがに猫の姿だからといっても、舌でペロペロ舐めるのは抵抗があるようだ。

 そんな微笑ましい光景を見つめながら、メイプルに念話を送る。


『たぶん、俺が原因なんだろうけど、悩みを一人で抱え込むのは辛いし、良くないと思うから……。俺に言いにくい事なら無理には聞かないけど、これだけ姉妹がいるんだから誰かに相談したらいいよ』

『ごめんなさい、お兄さま。悩みじゃなくて反省をしてました』

『反省?』

『もっと上手くできたんじゃないのかなって』

『さっきの戦いか?』

『……それもありますけど、王都に来てからずっと……いえ、王都に来る前からですね。もっと早くから状況が分かっていたら、お兄さまを危険に晒すこともなかったのですけど』


 やはり、原因は俺だった。

 でも、あの頃に、今の状況を理解しろというのも酷な話だ。


『だったら、俺も反省だな。王都に来る途中、あれだけ襲われたのに、個人の旅だとこんなに襲われるのか……なんて、呑気なことを考えてたからな』

『私も驚きました。あんなに治安が悪いとは思ってませんでしたから』

『それどころか、みんなのおかげで、快適な旅だった……なんて思ってたし』

『それは……呑気ですね』

『だろ? そんな風に思えたのも、メイプルが事前にしっかりと準備をしてくれたからだよな。感謝してるよ』

『お兄さまが快適に過ごせる環境を整えるのが、私の役目ですから』


 苦しい生活から俺を解き放つようにと願って呼び出したのがメイプルだ。だからこそ、この混乱した状況に俺が巻き込まれているのが気掛かりなのだろう。

 反省しているのは、自分の判断ミスだと思っているからだろうか。


『メイプル、ごめんな。俺が王都に行くって言ったせいで、こんな大変な思いをさせてしまって』

『そんなことは……』

『そもそも、召喚術士の試験を受けようって思わなければ……』

『お兄さま。そんな事を言わないでください』


 もちろん、本気ではなかったのだが……

 悲しそうにこちらを見つめるメイプルの頭を、優しく撫でる。


『要するに、メイプルが考えているのも、そういうことだろ? あの時、ああしておけばよかった……とか、もっと上手い方法があったんじゃないか……とか』

『……そういうことなんですね。少しびっくりしました』


 逆の立場なら、どう思うのか……という問いかけだった。

 俺の意図を理解して、メイプルは安堵のため息を吐く。


『俺が王都で試験を受けると決めた時点で、全ての責任は俺にある。その為に、みんなに協力してもらっている。……それが、今の状況だよな』

『そうなりますね』

『それで、フェルミンさんに手続きをしてもらうために迎えに行った。だけど、この混乱が収まらないと試験どころじゃないだろう』

『たぶん、そうでしょうね』

『メイプルとクロエのお手柄で、たまたまこの混乱を収める方法が分かって、三つのうち二つが片付いた。残る一つは王都のみ』


 考えてみれば、信じられないことだらけの日々だった。

 絶対に、間違いなく、試験よりも過酷に違いない。


『これで試験が免除されたらいいのにな……』

『そうですね』


 ついつい、心の声が漏れてしまった。


「おー、プル姉が笑った。ハル兄すごい。どうやったの?」

「べ、別に何もしてないよ。みんな、本当によく頑張ったなって話だよ」

「もっとがんばるから、任せて。あっきらせつはシアがやっつけるよ」

「おう、頼りにしてるぞ」


 もはや習慣のように、気付いたらシアの頭を撫でていた。すると……

 シアの腕の中に戻った黒猫(クロエ)は、少し恥ずかしそうにしながらも、私も居るよと主張するように「にゃあ」と鳴いた。


「クロエもありがとな」


 そう言いながら、喉をくすぐってやる。

 話の腰が折られてしまったが、再び念話でメイプルに話しかける。


『あー、つまりだ、俺が危ない目に遭っても自業自得なんだから、それを防げなかったからといってメイプルが落ち込む必要はないよ。それに、頼もしいみんながいるんだから、力を合わせて乗り越えればいいよ……ってことだ』

『はい、分かりました』


 とにかく今は、少しでも早く安全確実に、馬車を王都に届ける事。

 ……?


「いや……、馬車を王都へ届けるのは、負傷者を運ぶためだよな……」

「そうですね」

「でも、急いでるのは、王都に状況を報せて、王都で悪さをしている親玉を捕らえてもらうため。だったら、馬車以外の方法で、もっと早く王都へ報せを届けられたら……」


 怪我人や馬の調子を気にしながら、急ぐ理由がなくなる。


「近くで馬を借りて……いや、王都に入る時、どう説明する? なら、ディアーナに飛んでもらうか?」

「ディアお姉さまなら、壁も抜けられますし、越えることもできるでしょうけど、いきなり見知らぬ女性が訴えたところで、信じてもらえるでしょうか」

「だよな……」


 クロエが『でしたら、ボクが行きましょうか?』と、念話で立候補してくれたのだが、強化や能力上昇を使えば早くなるとはいえ、しょせん人間の足だ。

 しかも、途中で誰かに見られたら変な噂が立つだろうし、どれだけ時間短縮になるのかも疑問だ。


 ディアーナが王都に到着したら、それを目印に誰かを召喚跳躍(テレポーテーション)させれば……と思ったが、誰が行っても説得できるとは思えない。


「ほんっと、今頃気付いたの? 鈍いにも程があるわね」


 そんな事を言いながら、風精霊(フィーリア)が姿を現した。


「心配しなくても、もうすぐ黒狼(ニック)が王都に着くから、私が説明してきてあげるわ。だから、そんなに慌てなくていいわよ」

「いつの間に!?」


 全く、そんな素振りも、説明もなかったのに……

 手綱を握るフェルミンさんの背中を見つめる。


「さすが特命官だ」


 思わず呟くと、馬車が不自然に揺れた。

 いやいや、さすがに聞こえるはずがない。ただの偶然だろう。


「じゃあ、ちょっと行ってくるわね」

「フィーリア、いってらっしゃい」


 シアに見送られて、風精霊(フィーリア)は姿を消した。

 黒狼(ニック)を目印にして、王都へ召喚跳躍(テレポーテーション)したのだろう。




 その後、一度だけ襲撃されたが、王都まで走破して役目を終えた黒狼(ニック)が呼び戻され、進路上の敵を蹴散らした。

 こういうところでも、フェルミンさんとの差を感じてしまう。たぶん、そういう柔軟で無駄のない運用方法とかも、召喚術士には求められるのだろう。

 とにかく俺の場合、いろいろと普通じゃないだけに、俺なりの運用方法を考える必要がある。

 そんな事を思っている間に、やっと王都が見えてきた。

 

 さすがに商用門は空いていた。……というか、馬車の姿が全くない。

 それに、怪しげな者を入れない為だろうか、半分閉じられた状態だった。

 道中の危険を考えれば、往来を控えるのも当然だが、なんとも寂しい光景だ。

 だが、こちらにとっては都合がいい。


 風精霊(フィーリア)が話を通しておいてくれたのだろう。

 近づくと、徐々に門が開かれていく。


「えっ?」


 どういうわけかフェルミンさんは、馬車の速度を緩めず、検問も受けずにそのまま商用門を突破した。


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