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俺の召喚体(いもうと)たちが優秀(やり)すぎる!  作者: かみきほりと
幕間挿話

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39 ウラウ村の回想 後編

 お茶代わりの野菜煮汁(ベジスープ)を、サンディーが用意してくれた。

 コップはもちろん、自分たちで焼いた陶器のものだ。

 みんなも、それぞれ自分で選んだコップを使っている。

 クロエも、残っているコップから、少し紫色がかった飲み口が少し広くなったものを選んだ。


 クロエは表情をコロコロ変えながらも、しっかりと聞いているようだ。

 みんなで好き勝手に話すものだから、少し混乱しているようだが、ようやくクロエも関わった話になって、より一層真剣な表情で耳を傾け……いや、念話に集中している。




 その出来事は、ウラウ村に、招かれざる客が訪れたことから始まった。

 その客とは、山の麓にある隣村──ヒュメラ村から来た三人組のことだ。

 使者とは名乗っているものの、ならず者のような相手で、たまたま店を荒らしている所を見かけて気絶させ、村の自警員に引き渡したのだが……


 どうやら本当に使者だったようで、面倒な事になったと思ったが、こちらにも言い分があるし、抗議されれば真っ向から受けて立つつもりだった。

 なのに、あろうことか相手は、メイプルとシアを人質にとって脅してきた。

 こうなれば容赦も遠慮も不要だ。シアに命じて制圧させた。


 そこへ現れたのはフェルミンさんと、この辺りを治める領主さま。

 いきなり灰黒猪(キングボア)討伐の褒美を与えられたのだが、その目的は、俺の実力を確かめることだったらしい。

 領主さまと言えば、お貴族さまなのだが、なぜかフェルミンさんは対等に……いやそれどころか、領主に敬われているような感じがして不思議だった。

 もともと傍若無人なところがあったが、まさかそれが貴族に対しても有効だとは思えないので、王様直属の特命官「宮廷召喚術士」のチカラなのだろう。

 ともかく、シアの実力を披露して、領主さまに納得してもらった。

 その際、岩を砕いたら中から宝石が出てきたり、使者を名乗ったうちの二人が賞金首だったり……なんてこともあったが、ようやく、この件は解決した。そう思ったのに……

 風精霊(フィーリア)経由で、領主さまがわざわざ足を運んできた本当の理由が明かされた。


 使者の件を心配したメイプルは、なんとか穏便に解決できないかとフェルミンさんに相談した。それで、領主さまを説得することになったらしい。

 そのやりとりの中で領主さまは、灰黒猪(キングボア)を倒せるほどの実力者なら、長年に渡って領内を騒がせている厄介者、巨大毒蛇(ヒュンデイル)を討伐させ、その成果で不問に伏そう……と言い出したらしい。

 仕方なく俺たちは、巨大毒蛇(ヒュンデイル)の巣窟──立ち入りが制限されている湿地帯へと向かう。そこで軽く偵察をしたのだが、とにかく小さな蛇だらけで調べるどころではなかった。

 サンディーの負傷もあって撤退し、対応策を練り直すことにした。




 メイプルが主導して巨大毒蛇(ヒュンデイル)退治の準備が進められたが、さして手伝える事の無い俺は、召喚術の訓練をすることにした。

 その一環で、召喚を試みる。

 なんだかんだと三人も召喚できたんだし、フェルミンさんからも色々と教わったので、今度こそ()()()召喚できるんじゃないかと思ったのだが、ダメだった。

 意気消沈していたところ、シアから「猫を召喚して」と言われ、しかも「耳と尻尾、おヒゲも付けて」なんてことを言われて、調子に乗って奇妙な召喚陣を描き上げると、シアと戯れる黒猫をイメージして聖句を唱えた。

 クロエには悪いが、こんなふざけた召喚陣がまともに発動するわけがない……と思ったのだが、結果はこの通り、猫娘姿の少女(ネコクロエ)が召喚された。


 心に癒しを与える愛らしい黒猫を想像して聖句を唱えたつもりなのだが、どういうわけか現れたのは、諜報や暗殺を得意とする年端もいかない女の子。

 メイプルが言うには「影の一族」や「忍び」「忍者」などと呼ばれる、潜入捜査や暗殺など、いわゆる影働きを生業としている者に近いらしい。

 特に女性の忍者は「くのいち」と呼ばれ、色香で殿方を惑わすことを得意とするようだ。だがまあ、クロエにそんな事をさせたくないし、たぶん本人も嫌がるだろう。それなら、猫の姿になって、気を引いてもらったほうがいい。


 なんというか、クロエは先の三人とは違っていた。

 俺の事をちゃんと(アルジ)だと意識し、兄妹のように振る舞うなど畏れ多いと思っていた。それに、俺に対して恥じらいや遠慮を感じている。

 いやまあ、それが普通の反応なのだが、なぜか先の三人は遠慮も恥じらいもないだけに、そのよそよそしさが、心に距離があるように思えて、逆に寂しく感じた。

 とはいえ、今ではすっかり妹らしさが身に付き、姉妹の中でも末妹として愛される存在になっている。


 ちなみに、例えばの話だが……

 四人の中で一番怒らせてはいけないのは誰か……と考えたら、もちろん全員なのだが、筆頭はメイプルで、それに匹敵するのがクロエだろう。

 メイプルの場合、直接何かをしてくることはないが、いつの間にか気付いたら謝罪しなければならない状況に追い込まれてそうだ。

 クロエの場合は、あっという間に捕らえられ、抵抗ができなくなるだろう。

 サンディーの場合は、文句ぐらいは言うだろうが何もしてこないだろう。もちろん、サンディーが何もしてくれなくなったら、相当に困るのだが。

 シアに攻撃されたら一瞬であの世行きだが、敵と認識されなければ平気だろう。その代わり「ハル兄、大っ嫌い」とか言われたら、たぶん一生立ち直れないが……




 ……話を戻す。


 今回の騒動は、ヒュメラ村が発端だと思ったのだが、そうではなかった。

 俺の知らないところで、密かな戦いが繰り広げられていた。


 そもそもフェルミンさんがこの地へとやってきたのは、国王の命令だった。

 フェルミンさんには、行方不明の俺を探すため……という理由もあったが、本来の目的は、ディッケス地方の領主ブロウデン男爵こと、ウォルフレッド・シャダインを調査し、不正の事実を明らかにすることだった。

 そこへメイプルが、俺の事で相談したことで、情報交換をして共闘することに決めたらしい。

 それを思えば、あのタイミングでクロエを召喚できたのは、奇跡としか言いようがない。

 潜入捜査が得意なクロエのおかげで、隣村(ヒュメラ)や領主の企みが知れたし、フェルミンさんが欲しがっていた、領主が行った不正の証拠も集まった。


 ちなみに、今回の件で領主は、湿地帯に眠るお宝を手に入れようと考えていた。

 ただし、お宝の正体までは知らなかったようで、誰かに巨大毒蛇(ヒュンデイル)を退治させ、安全になってから探そうと思っていたらしい。

 ヒュメラ村の村長は、湿地帯を手に入れて、その間の土地も含めて村を拡張しようと考えていた。お宝に関する知識は領主と大差なかったが、あわよくば手に入れ、場合によっては土地を手に入れる為の交渉材料に……と考えていた。


 両者の思惑を知ったメイプルは、先手を打つ。

 巨大毒蛇(ヒュンデイル)を退治したという偽の情報を、フェルミンさん経由で領主に知らせた。

 これに慌てたヒュメラ村の人たちは、領主に扇動されるまま、力ずくで湿地帯の割譲を認めさせようと、ウラウ村の襲撃を実行する。

 俺たちは、メイプルの指示で、その襲撃を阻止。さらに、なぜか襲い掛かってきた領主兵たちをも撃破した。

 もちろん、こんな事ができたのも、優秀すぎる妹たちのおかげだ。


 そこに現れたのが、国王直属の特命官たち。

 宮廷召喚術士のフェルミンさん、キュリスベル第三王女フェルデマリー姫という素性を隠して宮廷魔導術士を努めるマリーさん、美青年旅人アランに扮した聖法騎士のガイゼル閣下という、その場にいるだけで卒倒しそうな方々だった。

 メイプルの計画では、戦いになる前に領主を捕らえる予定だった。だが、相手の動きが思いのほか早く、こんな結果になってしまったらしい。

 とはいえ、メイプルのおかげでウラウ村には何の被害もなかったし、みんなのおかげで死人も出なかった。


 捕らえた者を引き渡し、お世話になった人たちに陶器を配り、巨大毒蛇(ヒュンデイル)の討伐も終え、これでようやく平穏が戻った。




 さすがに、これほど長く念話を続けていると、疲れが出てくる。

 残っている野菜煮汁(ベジスープ)を一気に飲み干し、少し発声練習をしてから話し始める。


「フェルミンさんは、あのまま俺を王都へ連れて行き、認定試験を受けさせたかったみたいだけど、まさかあのまま畑を放置するわけにもいかないからな。でもこれで、やっと約束を果たせるよ」

「兄者は勉強は得意なのですか?」

「得意とは言えないけど、学院の時は、ずっと平均以上だったかな」


 とはいえ、合格する自信があるのかと問われても、正直なところ分からない。

 比較対象がないので、自分の実力がどの程度なのかが全く分からないからだ。

 それに、召喚術士の実力は、どんな召喚体を揃え、それをどう使いこなすのかで決まるらしいから、今さらジタバタしても仕方がない。

 そもそも召喚体と言えば、神話級の生物やら戦闘能力の高い動物などが当たり前のように出てくる。それを思えば……個人的には絶対的な信頼を置いていても、人間であることが有利なのか不利なのかが分からない。

 つまりは、出たとこ勝負だと腹をくくるしかない。


「まあ、合格できるかは分からないけど、みんなのことは頼りにしてるよ」

「はい。兄者、お任せください」


 クロエを皮切りに、全員が自身に満ちた表情で、決意を表明する。

 それを聞きながら、俺はしみじみと幸せというものを噛みしめた。


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