表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の召喚体(いもうと)たちが優秀(やり)すぎる!  作者: かみきほりと
幕間挿話 その三

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

265/283

265 夢見るメイドの聖地 前編

 リーフォニア伯爵領ディッケス郡ウラウ村。

 そこにあるウォーレンハウスで、俺──ハルキ・ウォーレン・リーフォニアは、屋敷中から漏れ聞こえてくる騒音を無視し、なるべく心を落ち着けるよう努力しながら、手にした書類に目を通す。


 ディッケスの新領主となり、雪解けを待って南海地方(セラフット)の近隣領主──その中でも有力貴族であるオスディン伯爵とオースワール伯爵のご機嫌を(うかが)うため王都に行ったら、思った以上に……それはもう、考えられないようなことが次々と起こりまくって、大幅に帰郷が遅れてしまった。

 簡単にまとめれば、なぜかリーフォニアの家名を継ぎ、伯爵位を(さず)かり、ディッケス周辺の領地を(たまわ)り、四人のお姉さま方が(とつ)いできた。

 その帰路では商都メルシアを含むグィルム郡の危機を救い、復興に協力した。

 そんなこんなで、なんとか新たな雪の季節を迎える前に戻れたとはいえ、長らく留守にしたことで仕事が()まりに()まってた……らしい。


 もちろんメイプルに……いや、領主代行のディアーナに任せてはいるけど、領主の確認が必要なものや、どうしても代行では処理できないものがある。

 中には重要で急ぎの用件もあり、それらを出先で処理しようと思えば、早馬に往復してもらわなければならない。

 俺の場合、念話や精神収納(アストラルボックス)があるので、いつでも空いた時間に書類を(さば)くことができたけど……

 どうやらメイプルが俺の負担を考慮して、かなり仕事量を制限してたようだ。


 その分、ミレンスに戻れば山のような書類が待ってるわけで……

 時間があるなら少しでもその山を崩しておきましょう……と、目の前に書類の束が置かれた。机を(はさ)んで立つ、にこにこ笑顔のメイプルに。


「お兄さま、ここからは領主城関係の書類になります。大枠はこちらで指示してありますので、あとはお兄さまの確認だけですね。まだ今なら大幅な修正も可能ですので、何か気になることがあれば遠慮なく言って下さい」


 治める領地が広がったことで真っ先に考えたのは、どこに居を構えるか、だった。


 普通に考えれば、南海地方(セラフット)の中心地や王都に近い東側──ヒンラ郡に移ったほうが便利だけど、俺は変わらずミレンスを領主町に定めた。

 国の法律では「複数の郡を束ねる領主が居を構える地を領都と定める」ってなってるけど、さすがにミレンスを(みやこ)と呼ぶのは(はばか)られるので、俺は変わらず『領主町』と呼んでいる。


 それはさておき……

 移転しなかったのには様々な理由があるけど、一番の理由はディッケス郡の北に隣接するニーバス伯爵領の存在だった。


 ニーバス伯爵家といえば西海地方(ランバー)の大半を占める大領主だけど……

 アミュレットの件とか、雷聖フィリーとキッシュモンド商会の取引とか、婚礼の儀の後ろ盾とか、前領主(ブロウデン)との因縁とかいろいろあって、親密な関係になっている。

 交易の話も進んでいて、立地的にミレンスが南海地方(こちら)側の交易拠点になりそうだ。

 それに、海沿いの道が整備されれば、ディッケス南西部の半島や島々で水揚げされた海産物も、ミレンスに集まるだろう。

 つまり、まだ不確定ながらも、人や物が集まって発展していく可能性が高く、それを捨ててまで新たな地に移るのは勿体(もったい)ないし、その費用も勿体(もったい)ない。


 それとは別に、俺としては放置された立派な城を活用したいし、アキュート伯爵家の当主であるメイリアの助言も活かしたい。


「……様々な分野のぉ、スペシャリストを育てなさい。領主になったからって、ぜ~んぶを自分でやろうと思ってはダメよぉ? 自分が楽をしたければぁ、信頼できる~スペシャリストを育てる事ねぇ」


 ディッケスの領主になって一番の難題は、とにかく人材が足りないことだった。

 そりゃそうだ。ド田舎で貧乏な領地を押し付けられた、平民上がり若造(わかぞう)に、好んで仕える優秀な人材はいない。

 それは、リーフォニア伯爵となって領地が増えても変わらないだろう。

 だから、城を学院として活用し、人材育成の場にしようと思った。


 城には一度だけ視察に行ったことがある。

 ずっと放置されてただけに不気味な雰囲気で満たされてたけど、思ったよりも状態が良く、内装はともかく基礎の部分は健在で、軽く補修すれば問題ない……と妹たちが診断した。

 ならばと準備が進められたけど、商都メルシアの領主城を知った俺たちは、同じように活用できないかと計画を練り直した。

 結果、学院に加え、備蓄倉庫や加工場、兵士の宿舎や訓練場、領民の避難場所など有事に備えた設備が整えられることになった。


 ついでに城に住まないかと提案されたけど、俺としてはミレンスの領主館に不満はないし、余計な出費をする必要もない。なので、丘の上は不便だからなどと理由を付けて辞退した。

 ……けど、マリーたちを執務用の館に住まわせるのは不憫(ふびん)だとメイプルに言われ、それもそうかと考え直して承諾(しょうだく)した。

 これで、かつて領主城だった城は、時を経て再び本当の領主城になった。

 ただ、やはり移動が不便なので、執務は今まで通りミレンスの領主館で行われる。


 (いにしえ)戦城(いくさじろ)だけに、防備のため意図して不便に作ってあるのだろう。

 城へ入るには、町から出て遠回りになる崖沿いの道を進まなければならない。

 だけど、昔の領主も不便に思ったのか、町外れの崖に後から無理やり(しつら)えた階段があった。


 狭くて長くて急な階段は、荷物運びには向かない。

 となれば、馬車で正門に運ぶしかないけど、整備されたものの所々崖崩れの痕跡が残る道を、何度も往復するのは危険だ。

 なので、町外れの階段近くに物資の集積所が作られ、場内に運び込むための昇降機が設置された。

 城内からしか操作できない吊り下げ式のものが六基並び、輸送の手間を省くのに大活躍している。

 ……というのが、領主城に(まつ)わる、これまでの出来事だ。


 報告書を読み終えて考え込む。

 ひと目でメイプルが書いたものだと分かる内容で、これまで進めてきた計画と、新たな変更点が分かりやすくまとめられている。

 メイプルの立てた計画に不満はないし、恐らく落ち度もないだろう。だけど、あえてワガママを言わせてもらうと……


「城の中に畑を作って、作物の研究をするってのはどうかな?」

「畑でしたら……こちらがお兄さま専用で、ここに農業関係の研究施設と農場を作る予定です。それと……ここが畜産関係の研究施設で、こっちが飼育場ですね。それで……こちらが、その申請書類になります」


 どうやら次の書類で説明するつもりだったらしく、地図を広げて新たに書き加えられた印を次々と指し(しめ)していく。

 嬉しいやら呆れるやら、まさか俺専用の畑まであるとは思わなかった。

 思わず苦笑すると、メイプルが「どうですか?」とばかりにニッコリ微笑む。

 まったく、よくできた妹さまだ。


「……では、お兄さま、明日の準備もありますから、今日はこのぐらいにしておきましょう」

「明日なんだよな……。いきなり過ぎて全然実感が無いけど」

「それは本当にごめんなさい……。領地が増えてしばらく忙しくなりますし、できることはできるうちに、と思いまして。お兄さま、今日はしっかりと休んで下さいね」


 どうやら明日のことも、()()()()()の、ひとつらしい。

 そう、俺は明日……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ