表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の召喚体(いもうと)たちが優秀(やり)すぎる!  作者: かみきほりと
落ちこぼれ召喚術士、田舎暮らしで奮闘する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/283

22 炎の熱気に中てられて

 すでに四日経つが、身体は全然……とはいかないが、それほど辛くはない。

 四人で役割を分担したり、交代をしながらなので、途中で畑の様子を見に行く余裕すらあった。もちろん、休息も十分に取れている。


 一定のリズムで、薪を投入し、その合間に窯の周りに新たな薪を並べていく。

 

「プル姉、木、運んだ。これでいい?」

「はい、ありがとうございます。では、シアちゃんはお兄さまのお手伝いをお願いします」

「うん、わかった」

 

 サンディーは休憩している。

 指示出しや窯の状態確認はメイプルの役目だが、彼女が休憩している間は、代わりにサンディーが行ってくれた。

 教えれば何でもこなせる彼女の存在は、本当にありがたかった。

 武装したシアは、俺を遥かに凌ぐ身体能力で心強いが、俺と同じで窯の状態を見極める……なんてことはできないようだ。

 その俺は、シアの木剣を腰に差して恩恵に授かっている。

 最初こそ、力加減が難しかったが、今となっては慣れたもので、逆にこの力を失った時の反動が怖いぐらいだ。

 

「では、最後の仕上げを行いますね。お兄さま、あまり一度にたくさん入れ過ぎないように気を付けながら、少しずつペースを早くしていってください」

「ん~、こんな感じ?」

「そうですね。火がどんどん強くなるのを確認しながら、続けて下さいね」


 ただただ炎を見つめ、薪を窯にくべることだけに集中する。

 どれだけ時間が経っただろうか。ずいぶんと経つ気もするし、まだ始まったばかりのような気もする。


「お兄さま、そろそろシアちゃんと交代してください」


 メイプルの声に、わかった……と返事をしたつもりなのだが、声が出ない。

 それに、身体も止まらない。


「ハル兄、無理はダメ。休憩して」


 シアに無理やり後ろへ追いやられ、やっと動きを止める。

 俺は一体……、何をしていたのだろうか……


「お疲れ様です、お兄さま。まずはお水で口の中をゆすいで下さい。ゆっくり……、はい、もう一度……」


 メイプルに言われるまま、口の中を湿らせつつ吐き出すと、少しだけ喉へと水を流し込む。


「一気に飲んではダメですよ。少しずつ慣らしながら……」


 少し咳込んだが、何とかひと心地ついた。

 どうやら脱水症状で意識が朦朧としていたらしい。

 ぬるま湯というか、人肌に近い温度の水に何かが入っているようで、甘いのかしょっぱいのかいまいちよく分からないが、とにかくとても飲みやすかった。


「ふぅ~、助かった。メイプル、ありがとう」

「……いえ、すみません、無理をさせてしまって。もう少し早く止めるべきでした」

「その前に、俺が自分で気付いて、助けを求めればよかったんだけどね」


 今になって、一気に汗が噴き出てくる。


「お兄さまは、しばらく休んでいて下さい。薪運びは、私がやっておきますので」


 いやまあ……、うん、分かってた。

 周りに置かれている薪の束を、シアの近くへ移動させるだけなのだが、明らかにメイプルには辛そうだった。

 その一生懸命な姿を見て、少し元気が出た。

 最後にもう一度、不思議な水を一杯飲むと、俺は気合を入れて立ち上がった。




 途中でシアとサンディーが交代し、俺が薪を投入して火力を上げていく。

 メイプルが、飲み物を用意してくると小屋へ向かったのだが、なかなか戻ってこない。

 ……と思ったら、そこへ、厄介な客がやってきた。


「そこのお前、ちょっといいか?」


 嫌な予感しかしない。

 声を掛けられ、チラッと振り返り、相手を見てため息を吐く。

 

 たぶん、炎には気分を高揚させる効果があるのだろう。この時の俺は、かなり特殊な精神状態だったのだと思う。

 普段なら何事も穏便に済まそうと考えるのだが、一度喧嘩を売った相手だし、この大事な作業……それも、この忙しい時に邪魔をされて、気持ちが攻撃的になっていた。それにたぶん相手は……


「見たら分かるだろ。今は忙しい、後にしてくれ」

「そうはいかない。私も忙しい身なのでね」

「だったら勝手に用件を話せばいい」

「そんな態度を取ってもいいのかね?」

「どういう意味だ? また村同士で戦争が始まる、とでも言うつもりか?」

「それもあるが……。その前に、この子たちがどうなってもいいのかね?」


 相手は隣村の使者を名乗る、例の三人組だった。

 しかも、案の定、シアとメイプルが捕まっていた。

 メイプルはともかく、なぜシアが大人しく捕まっているのかと思ったら、武装を解除していたらしい。

 だが、そんなものはすぐに装着できるはずだ。

 恐らく、相手に何か言われて、俺の指示を待っているのだろう。

 サンディーにしばらく作業を任せると伝え、腰の木剣を確認して、自称ヒュメラ村からの使者たちの方へと歩き出す。


「貴様らが悪党だってことはよく分かった。それで俺に何の用だ?」

「大人しく投降して私に従えば、この村だけは見逃してあげますよ」


 大きくため息を吐く。

 つくづく、悪人の見本のような奴らだ。

 ただでさえ面倒なのに、この上だらだらと長話が始まったらもっと面倒なので、早く終わらせることにする。


 これほど俺に余裕があるのは、人質となった二人は絶対に死なないと分かっているからであり、こんな時のために対処法も考えてあったからだ。

 試しに俺は、心の中のメイプルに向かって、精神世界(アストラル)へと帰還するよう願った。

 ダメなら声で指示を出そうと思ったが、メイプルはコクリとうなずくと、霞のように姿を消した。

 間髪入れずに命令する。


「シア! 遠慮は無用だ。殺さない程度にいたぶってやれ!」

「うん、分かった」


 次の瞬間、シアを押さえていた大男が地面に崩れ落ちた。

 その物音がした時には、空色の光が流れ、剣の柄でチンピラの鳩尾を抉っていた。

 何が起こったのか理解できなかったのだろう。狼狽えている使者の首筋に、シアの長剣が当てられる。

 まさか、この少女が?! ……そんな驚きの表情を浮かべると、わなわなと男はその場にへたり込んだ。


 分かっていたことだが、俺の出番は一切なかった。

 まさに電光石火。あっという間の出来事だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ