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俺の召喚体(いもうと)たちが優秀(やり)すぎる!  作者: かみきほりと
落ちこぼれ召喚術士、田舎暮らしで奮闘する

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21 地獄(?)の始まり

 今日も腕が痺れ、身体が重かった。

 まあ、この人数だけに仕方がない……と思ったが、いつもは朝食ができるまで眠っているはずの、フェルミンさんの姿が無かった。

 既にサンディーも起きているのでベッドは広く空いていたのだが、そんな事に関係なく、二人は俺を寝具代わりにしていた。


 ……まあ、それはいい。

 なぜフェルミンさんがいないのか不思議に思いながらベッドを降り、朝食の準備をしているサンディーに聞いてみる。


「あっ、フェルミンさんなら、ちょっと用事があるからって日の出前に出て行ったわよ。数日は返ってこれないかもって……」


 よほど急ぎの用事なのだろうか……

 風精霊(フィーリア)から話を聞いて、少しは分かったつもりだったが、まだまだあの人を理解するのは無理そうだ。

 そんな事を考えながら、寝間着代わりにしているくたびれた普段着から、まだマシな普段着に着替え、日課の水汲みと薪運びをする。


「よし……」


 椅子に座り、息を整えて、心を落ち着かせていく。

 昨日、フェルミンさんから、召喚術の講義を受けた。

 今の俺に必要なことを、少しだけだが……


 念話を使えるようになるには、己の内面──精神世界(アストラル)にある召喚体と、心を通わせる必要があるらしい。

 コツのようなものは無く、それほど特別な事でも無いらしいが、それがどうにも上手くいかない。

 ほんのりと相手の感情が分かる気がするし、来て欲しいと念じれば通じるようだが、まだ言葉を伝えるまでには至らない。

 相手の事を思い、伝えようと思えばいいだけだと聞いたのだが、それでもダメだった。

 もしかしたら、根本的な所で何かを間違っているのかも知れない。


 もうひとつは、召喚する時の心得のようなものだった。

 こちらも、なんだかフワッとした説明だったが、召喚体を理想に近付けるには、心の準備が大切らしい。

 どのような姿形で、どのような力で、どのようにして欲しいか……

 それらを明確に頭の中でイメージし、心の奥底から願えばいい。

 だがそれでも、理想に近付く可能性があるだけで、全く別物になる場合がある。

 主な原因は雑念らしいが、自分でも気づかない心の奥底に眠る願望だったり、全く予期せぬ外因だったり、それこそ、たまたま運が左右した……なんてことも、十分にあり得る。


 だから、早朝の静かな時間に、いつになく真剣に精神を集中させて、頭の中でイメージを膨らませていく……

 体格はあまり大きくないほうがいいだろう。

 手足が器用ですばしっこく、人に見つからないように行動するのが得意で……シアのことを手助けできる能力を持った召喚体……


 ……よし!

 杖を手に取って立ち上がり、召喚陣を描いていく。

 新たな召喚体への思いを込めて、ゆっくりと丁寧に……


「其は疾風、其は幻影、其は忠節、其は願いの結実なり。太古より脈々と受け継がれし力を以って、ここに汝を召喚す。新たなる姿と成りて、我が呼びかけに応えよ! 召喚(サモン)!」


 途中までは上手くいっていたと思う。

 召喚陣が光を増し、微かな風も感じた。だが、それだけだった。

 急速に輝きを失った召喚陣は、薄れ消えていった。

 やっぱりダメかと壁に杖を立て掛け、椅子に座って脱力する。


「おあようございまふ、ハルキお兄さま……」

「ハル兄、どうしたの?」


 寝間着姿の二人が不思議そうにこちらを見ていた。

 ……メイプルは欠伸をしていて、かなり眠そうだ。


「起こしちゃったか。ごめん、うるさくして」

「ううん、もう朝。起きる時間だから平気」

「そうだな。おはよう、メイプル、シア」

「ハル兄、おはよう」


 二人がペコリと頭を下げる。


「お兄さま、召喚ですか?」

「まあな。フェルミンさんから教わったから、今度こそいけるかなって思ったけど、やっぱりダメだった」

「心配しないで。その分、シア、がんばる」

「もちろん、私もがんばりますよ。ハルキお兄さま」


 二人の慰めが心に沁みる。


「私もだよ、お兄ちゃん。さあ、朝食の準備ができたけど、その前にみんな、着替えて顔を洗ってきなさい」


 こんな事を言ったら、サンディーは怒るだろうけど……

 なんだかもう、すっかり母親のようだ。

 急いで着替え始める二人に背を向けながら、そんな事を思った。




 用意したのは三種類。

 一度焼いて、何かの薬をかけたコップたち。

 成型して乾かしたお皿たち。

 それと、材料を微妙に変えて成型された、何種類かの煉瓦だ。


 最初に作った七つのコップは、形も大きさも不安定なので、人に配らず自分たちのものにしようと決めた。

 その中でも、一番最初に作った少し形が歪で俺の指の形が残ってしまったものをメイプルが選んで、緑色に着色した。

 ならばと俺は、一番大きくデコボコしたものを選ぶ。それを、メイプルに勧められるまま青色に染めた。

 サンディーは少し厚めになったものを黄色に、シアは少し小さめのものを水色に着色した。

 それぞれの目印にしている色だ。

 残りも、紫、赤、白に塗り分けてあるが、それ以外、人に配ろうと思っている物には色付けせず、そのまま薬が塗られてある。


「お皿は、この辺りで、そう、出来るだけ上の空間を詰め過ぎないようにお願いします。コップは……」


 それを、メイプルの指示に従って、順番に積み上げ、窯に詰めていく。

 もう、この作業が何を意味するのか……なんてことは考えない。ほんの少しズラすような細かな指示でも、言われた通りにこなしていく。

 小屋から薪を出したり、松明の用意をしたり、土を練ったり、入り口を塞いだりなど、四人で手分けして準備を終わらせ、とうとう火入れが始まった。

 それは、地獄の薪入れが始まる合図でもあった。


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