122 ウォーレン兄妹
兄さんやみんなが去り、一斉検挙も終わった。
新しい家にもひと通りの設備がそろい、生活ができるまでになった。
ボク、ミア・ウォーレンは、妹のサクヤと共に王都で暮らすことになった。
メイプルやディアーナは、どうせならば快適な家にしようと、様々な提案をしてくれた。
立派な給湯設備に湯殿、薪が無くても熱を発する魔導具で料理ができる炊事場。厠も椅子型で水で流すので衛生的……なのだそうだ。
兄さんからは好きに使っていいよと大金を渡されてはいるが、無駄遣いをするつもりはないので、必要最低限のものを……と考えていたのだが、妹たちやフェルミンさんがそれを許さなかった。
その考えも分かる。
ここはボクの名義となってはいるが、兄さんが王都に滞在する際に使われる別邸であり、姉妹みんなの家でもある。それをボクが預かっているだけなのだ。
だから、兄さんが快適に過ごせる空間にするのはもちろん、誰が見ても恥ずかしくない家にしなければならない。
幽霊たちのことはサクヤにお任せしているが、幽霊たちにとっても過ごしやすい場所にする必要がある。
マリーさんや、サンディーの伝手で、費用はかなり抑えられた。
とはいえ、高価な魔導具が多いし、消耗品である魔導石もそれなりの値段がする。それを一式まとめて導入することで、費用を抑えた。
さらには、メイプルの知識も役立った。
次々と新しいアイデアを提案し、それを売ったのだ。
もちろん、妹たちは旅の途中なので、全てボクを経由して伝えたのだけど。
ともかく、この富裕層が住むという区画に見合う、素晴らしい設備が整ったと思う。
とはいえ、周囲は、殺戮の館のおかげで閑散としているが……
今日は、朝からサンディーが様子を見に来てくれていた。
ボクも簡単な料理ぐらいならできるが、サンディーには勝てる気がしない。
そこへ、小さな足音が近付いてきた。
忍び足やお淑やかという意味ではなく、子供の足音だ。
「おはようございます」
「おはよう、サクヤちゃん。新しいお部屋だけど、よく眠れた?」
「サンディー姉様、おはようございます。ええ、星空が美しかったですわ。それに、すごく懐かしくもありました。おかげで夜更かしをしてしまいましたわ」
その割には、ぐっすりと眠れたようだ。
サクヤの部屋は、お気に入りだったという屋根裏部屋に移した。そのせいで、なかなか寝付けなかったのだろう。
ボクの部屋も、もう一つの屋根裏部屋だ。
パレットルームを挟んだ反対側で、元々はサクヤの姉の部屋だった場所だ。
二階中央部屋は、ケットシーハウスの子供部屋のようにしようという話になっている。
兄さんが王都に来た時、みんなでくつろぐための部屋だ。
少し遅めの朝食が終わり、食器の片づけをしていると、サクヤが質問してきた。
「姉様、よろしければ、ハルキや姉様がたのことを、もっとよく教えて頂いてもいいかしら。兄や姉妹のことを何も知らないというのは、さすがに問題ですから」
身体が弱かったサクヤを王都で療養させ、ボクはそれに付き添った。
冒険者の両親は行方不明となり、サクヤの治療費を稼ぐため、兄さんは召喚術士を目指し、ディアーナは聖法術士を目指した。
サンディーは、残る妹たちの面倒を見つつ、両親の消息を探っていた。
無事にサクヤの体調が回復し、退院したはいいが、住む家がない。
兄さんの伝手で、フェルミンさんやマリーさんのお世話になったが……
偶然、兄さんが国家試験を受けるため、王都へ来ることになった。
それに合わせて、姉妹たちも集まった……という事になっている。
一見、荒唐無稽に思えるが、全ての根回しが終わっていて、たとえ胡散臭がられて調べられたとしても、それが事実だったという証拠しか出てこない。
こんな話を即興で考え付く兄さんもすごいけど、それを完璧に事実にしてしまった妹たちにも驚かされた。
「それはぜひ、ボクにも聞かせてくれないか?」
「そうね……。うん、分かった、私で良かったら教えてあげる」
サンディーの語る兄さんの話は、誇張されたものだと考えたほうがいいだろう。
なぜなら、賛辞の言葉しか出てこないからだ。
たとえば……
思慮深くて、大人の雰囲気で私たちを包み込んでくれる優しさに溢れた人で、見た目も言動もかっこよくて、そこに居てくれるだけですっごく安心できるのよね。そんなお兄ちゃんのお世話をするのが私の生き甲斐なの……といった感じだ。
どう見ても、恋する乙女の反応だ。
冷静に評価すれば、容姿は凡庸と言えるだろう。
黒髪黒目は神秘的な雰囲気を感じさせるけど、全体的には地味で目立たない、どこにでもいそうな青年といった感じだろうか。
だけど、服の上からだと分かり難いが、身体は鍛えられているし、戦いのセンスも高いようだった。
性格は素朴で素直、とにかく優しい。
正義感があり、悪事を嫌うが、決して潔癖というわけではなく、ちゃんとした理由があれば理解を示すし、他にも方法があったんじゃないのかと考えてくれる。
とにかく変わった人で……
「私が頑張って支えてあげなきゃって思うのよね」
それに関しては、ボクも全く同じ意見だ。
放っておくと、危なっかしくて仕方がない。
───◇◇◇───
●ハルキ・ウォーレン
誕生:大陸暦四八二年五月二週一日
容姿:黒髪黒目の、どこにでも居そうな普通の少年っぽい青年。
称号・資格
・国王直属特別任命官 宮廷召喚術士
メイリア・フェルミンの弟子
・ウォーレン男爵
・キュリスベル王国 ディッケス郡 領主
・冒険者組合 特別組合員 B級冒険者
略歴
・地方の中堅商家の三男として生まれる。
・フェルミンと出会い、召喚術士を目指すが、親から勘当を言い渡される。
・王立学院に入るも、召喚が成功せず、退学することに。
・傷心のままたどり着いたウラウ村で農夫となる。
・メイプル他、多くの人間を召喚するも、妹と周囲に紹介する。
・フェルミンと再会し、召喚術士の基礎を学ぶ。
・隣村の使者や悪徳領主を成敗する。
・王都に向かい、国家召喚術士の試験を受ける。
・宮廷召喚術士、男爵位の受爵、ディッケスの領主を拝命。
・冒険者組合の特別組合員となり、B級冒険者に。
・サンクジェヌス帝国の謀略を阻止した、陰の功労者。
●ミア・ウォーレン
誕生:大陸暦四八三年六月一週五日
容姿:銀髪ミディアム。緑の瞳。女性ながらも中性っぽい容姿。
称号・資格
・キッシュモンド商会 会頭
召喚体の略歴
・ハルキの第六召喚体。召喚人ブルーとして活動。
・召与才能は、交渉事に関係しているようだ。
ハルキの妹としての略歴
・ハルキの妹、年長三姉妹(三つ子)の長女。
・王都でサクヤ──身体が弱くて王都で治療を受けている妹の面倒を見ていた。
・サクヤの体調が回復したのはいいが、治療院を出ることになる。
・ハルキの伝手で、サクヤと共に、マリーさんやフェルミンさんの世話になる。
・ハルキが王都に来て、姉妹も集まり、王都で家を買うことになった。
キッシュモンド商会の会頭となる。
・王都の家でサクヤと暮らしながら、キッシュモンド商会の店の準備を進める。
●ディアーナ・ウォーレン
誕生:大陸暦四八三年六月一週五日
容姿:赤髪ロング。金色の瞳。豊満な騎士。様々な衣装が似合う。
赤茶犬の姿や犬耳少女にもなれる。
称号・資格
・国王直属特別任命官 聖法騎士
・クレイン男爵
召喚体の略歴
・ハルキの第五召喚体。召喚人レッドとして活動。
人間の幽霊として召喚されたが、実体化することが可能。
・召与才能は、聖騎士に関係しているようだ。
ハルキの妹としての略歴
・ハルキの妹、年長三姉妹(三つ子)の次女。
・ハルキが試験を受けに王都へ行くと聞き、自分もと王都へやってきた。
馬車で負傷者を搬送中のハルキと出会い、同乗して王都へ。
・国家試験を受け、聖法術に加え騎士資格も得たことで、聖法騎士に任命される。
紅玉の聖法騎士と、内輪で呼んでいる。
・ハルキが領主になると知り、ならばと共にディッケスへ行くことにした。
●サンディー・ウォーレン
誕生:大陸暦四八三年六月一週五日
容姿:金髪ロング。青色の瞳だが、本気で怒ると赤味を帯びる。
とても女性らしい、元気なムードメーカー。
称号・資格
・キッシュモンド商会 お針子
・マーリー工房 お針子
召喚体の略歴
・ハルキの第二召喚体。召喚人イエローとして活動。
・召与才能は、家事や雑用などに関係しているようだ。
ハルキの妹としての略歴
・ハルキの妹、年長三姉妹(三つ子)の三女。
・ハルキを心配し、ウラウ村に押しかけて面倒を見ている。
・その後はハルキと行動を共にしている。
・家事能力に優れ、様々なことを無難にこなす器用さも持ち合わせている。
●メイプル・ウォーレン
誕生:大陸暦四八五年十月一週五日
容姿:薄黄色の髪を肩口で切り揃えている。青い瞳。
色白で、利発さとあどけなさが同居した、愛らしさを備えている。
称号・資格
・王立学院 研究員(召喚人グリーン)
召喚体の略歴
・ハルキの第一召喚体。召喚人グリーンとして活動。
・召与才能は、どこか遠くの知識に関係しているようだ。
ハルキの妹としての略歴
・ハルキの妹、年中組の上。
・類稀なる頭脳でハルキの居場所を探し出し、ウラウ村に押しかけた。
・その後はハルキと行動を共にしている。
・ハルキに苦労させないよう、不思議な知識で手助けする。
●グレイシア・ウォーレン
誕生:大陸暦四八七年九月三週二日
容姿:空色髪ロング。茶色の瞳。見るからに子供で、どこか妖精のよう。
召喚体の略歴
・ハルキの第三召喚体。召喚人シアンとして活動。
・召与才能は、戦闘に関係しているようだ。
ハルキの妹としての略歴
・ハルキの妹、年中組の下。
・ウラウ村に向かったサンディーを追いかけてきた。
・その後はハルキと行動を共にしている。
・自分のことをシアと呼び、みんなもシアと呼んでいる。
・みんなを守るという意識が強いが、守りよりも攻撃が得意。
●クロエ・ウォーレン
誕生:大陸暦四八九年九月一週六日
容姿:黒髪ロング。黒目。あえて男の子っぽく振る舞うが、成功していない。
黒猫や猫耳少女に変化できる。
召喚体の略歴
・ハルキの第四召喚体。召喚人ピンクとして活動。
・召与才能は、諜報や暗殺に関係しているようだ。
メイプルの見立てでは、忍者やくのいちに関係するのではと推測している。
ハルキの妹としての略歴
・ハルキの妹、年少姉妹(双子)の姉。
・姿を消したメイプルたちを探して、ウラウ村にやってきた。
・その後はハルキと行動を共にしている。
・みんなの癒しとなり、幸福となるよう、陰からみんなの手助けをする。
●サクヤ・ウォーレン
誕生:大陸暦四八九年九月一週六日
容姿:金髪碧眼。見るからにいい所のお嬢さま。
どこか儚げだったが、最近は元気になってきた。
幼き頃のフェルデマリー王女に、どこか似ているらしい。
精霊契約前の略歴
・遥か昔の王族の第四王女、チル・フロイデ・キュリスベルとして生まれる。
・幼き頃より病に侵され、八歳にしてこの世を去る。
・その後も幽霊として、この場に留まっていた。
・詳細は不明だが、精霊に近い存在になっているらしい。
なので、ハルキと精霊契約のようなものが結ばれた。
・ハルキの第一精霊だが、召喚人ホワイトとして活動予定。
ハルキの妹としての略歴
・ハルキの妹、年少姉妹(双子)の妹。
・生まれつき身体が弱く、王都の治療院に入院し、ミアの世話になっていた。
・体調が回復したのはいいが、治療院を出ることになる。
・ハルキの伝手で、ミアと共に、マリーさんやフェルミンさんの世話になる。
・王都の家でミアと暮らしながら、家族に恩返しがしたいと思っている。
■暦について……
現在のオースフィア大陸暦では、数字で呼ばれるようになっているが、キュリスベル王国暦の時には、それぞれに名前が付いていた。
・十三ヶ月で一年を迎える。王国暦では十三季と呼んでいた。
一月 ← 初季/タルトス
二月 ← 氷季/セイル
三月 ← 溶季/フラーマ
四月 ← 照季/エルベ
五月 ← 育期/クリー
六月 ← 雨季/ニーレ
七月 ← 盛季/セルバ
八月 ← 夏季/ラメア
九月 ← 残季/ノルン
十月 ← 枯季/バーシ
十一月 ← 雪季/フラウ
十二月 ← 冬季/シウバ
十三月 ← 結季/エルデ
・五週期で一ヶ月を迎える。王国暦では五廻期と呼んでいた。
一週 ← 始廻/ハム
二週 ← 双廻/トモ
三週 ← 央廻/マウ
四週 ← 追廻/ワチ
五週 ← 終廻/ツイ
・ただし、十三月は一週期(六日)しかない。なので、呼ばないことが多い。
一週 ← 結廻/エデ
・六日で一週期を迎える。
一日 ← 豊穣の日/ユーカティア
二日 ← 迅雷の日/フェムーリア
三日 ← 勇敢の日/ベルクルーガ
四日 ← 清浄の日/クリスマーナ
五日 ← 運命の日/ヤクトエヌス
六日 ← 太陽の日/ラーテル
※漢字表記は、大体こんな意味合いを表している……というだけです。
※近年では週期を省略して、三週三日を十五日と表したりもします。
※六日で一週期、五週期で一ヶ月なので、一ヶ月は三十日になっています。
ただし、十三月は一週期の六日しかないので、一年は三百六十六日です。
大きく季節がズレる時は補正されますが、しばらくは無さそうです。




