表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の召喚体(いもうと)たちが優秀(やり)すぎる!  作者: かみきほりと
幕間挿話 その二

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/283

120 救世の三英雄と王国暦

 サクヤに話を聞いたところ、生まれた年は二七四年らしい。


 今は、ちょうど五〇〇年だから、二二六年前、つまり二二六歳になるのか……と思ったら、違うらしい。

 彼女が生まれたのはキュリスベル王国暦の二七四年で、今はオースフィア大陸暦の五〇〇年だ。

 王国暦八二四年に、大陸暦に切り替わったので……サクヤの年齢は、ざっくりと計算して千歳以上ということになる。


 その割に違和感なく接することができるのは、幽霊たちのおかげらしい。

 それに屋敷も、殺戮の館(スプラッターハウス)などという、物騒な名前がつく前は、新たな入居者を何人も迎え入れており、その都度、家具も新しく入れ替えられていた。とはいえ、全て朽ち果ててしまったが。

 ただし二階の中央部屋──サクヤの部屋は、時が止まったかのように昔の家具がそのまま残っているので、幸運を呼ぶ部屋として崇められ、代々の所有者によって大事に保存されてきたのだという。


 考えてみれば、暦のことはよく知らない。

 もちろん名前ぐらいは知っているし、なんとなく理解はしているつもりだが。

 メイプルに聞いてみたけど、この地の歴史についての知識は乏しいようで、ならばと一緒にケットシーハウスで、マリーさんの授業を受けることにした。

 その内容は……




 海を隔てた北方には、ゲヌマと呼ばれる陸地が存在する。

 北の大陸と呼ばれることもあるが、陸地があるとは確認されているが、それが大陸かどうかは判明していない。


 なんせ、蛮族と魔物が跋扈する場所であり、向かった者の大半は帰ってこないし、帰ってきた者も命からがら逃げてきたので、調査どころではなかった。

 軍を送り込んだ国もあったが、結果は同じで、ろくに上陸できずに死傷者を抱えて逃げ帰るか、帰ってこないかのどちらかだった。


 学者の見解では、大昔のオースフィア大陸は、定期的に魔物が侵攻しては不毛の地となる、そんな悲しき運命を背負った場所だった。

 大陸が生命で満ちると、ゲヌマから大量の魔物が侵入して蹂躙される。時が経ち、再び生命で満ちるとまた魔物に蹂躙される。それが繰り返されていたらしい。

 そんな過酷で非情な運命を変えたのが、伝説の三英雄だった。


 千三百年以上前というから、もはや伝説に近い話だが……

 このオースフィア大陸に、再び生命が根付き、人間による小国が乱立するほどにまで復活していた。

 そこへ北から魔物の大群が侵攻してきた。


 その時に分かったのは……

 魔物は海水を嫌う。

 もはや天敵と言えるほどで、魔物が海を渡って来ることは、皆無と言っていいほど非常に稀だ。

 空を飛ぶ魔物も確認されていない。

 なので、魔物の侵入経路は、オースフィア大陸の東の果て、ほんの一部だけ陸続きとなっている場所からだった。


 この時、人類滅亡の危機を救ったのが、救世の三英雄だった。

 法術使いエーデワルト、水晶の騎士ボールド、大地の巫女アリサである。

 聖なる武器を生み出し、軍を率いて魔物を駆逐した。

 さらに、地形を変化させ、北と陸続きになっている場所に断崖絶壁を築き、その向こう側を低地に変え、定期的に潮が満ちて、魔物を洗い流す仕組みを作った……と、真偽は定かではないが、そう言われている。

 現在、クリフゲートや、地獄門などと呼ばれている場所だ。


 これによって、オースフィア大陸に住む人々は、魔物の大規模侵攻に怯える必要がなくなった。

 その後、法術使い(エーデワルト)は、苦難を乗り越えた人々を率いて新たな国を作った。それが、キュリスベル王国だった。

 そして、キュリスベル王国暦が、この時から始まった。




 エーデワルト女王は、法術の四大系統を全て扱えた。

 ……そう言われることが多いが、実際には少し違った。


 四大系統とは、キュリスベル王国が、研究と普及を推し進めている、魔導術、聖法術、精霊術、召喚術のことである。

 他にも、降霊術、獣使い、幻影術など、様々な法術があるのだが……


 エーデワルト女王の法術を、そのまま扱える者はいない。

 なので、他の者でも扱えるよう研究し、生み出されたのが、現在に伝わる、様々な法術である。

 だから、エーデワルト女王は、四大系統を全て扱えたのではなく、その全てが含まれた法術が扱えたのだ。

 女王は、その力を使い、キュリスベル王国のみならず、オースフィア大陸に住む者全てに、大いなる恩恵をもたらした。




 法術使い(エーデワルト)の後世は語り継がれているが、残る二人の英雄、水晶の騎士(ボールド)大地の巫女(アリサ)については、謎のままだ。


 世界が滅ぶかもしれないという苦難の時代だけに、残された資料も少ないのだが、それにしても全くの不明となっている。

 それをいいことに、様々な者が、自分たちの祖先は……などと、勝手に名乗っていたりする。


 サンクジェヌス帝国では、その前身であるジェヌス帝国の、第三代皇帝ボーデリッツが、水晶の騎士(ボールド)なのだそうだ。

 そもそも、そんな時代に、ジェヌス帝国は存在していなかったというのが定説な上に、キュリスベル王国よりも歴史が長いと言いたいがために、第三代皇帝などと言っていることを見透かされ、他国から虚栄心の塊だと嘲笑されている。


 今のは極端な例だが、大陸の東にあるゲイルターク王国や、ギムナ皇国でも同様の話が語られており、国家の威信を強化するために、よく利用されている。




 マリーさんが言うには、俺が人間を召喚したことで、一時期、キュリスベル王国で真剣に研究されていた議題が復活したらしい。それは……

 実は、水晶の騎士(ボールド)大地の巫女(アリサ)は、法術使い(エーデワルト)が召喚した、召喚体だったのではないか……というもの。

 そう考えれば、伝説に残っている出来事の矛盾が、大幅に解消されるらしい。

 たとえば、遠く離れたニ十カ所で、同時に目撃されたという水晶の騎士(ボールド)の伝説など……


「話が大きく逸れてしまいましたわね。少し休憩を挟みまして、暦の話に戻りますわよ」


 そう言って、マリーさんはメイドを呼び、紅茶と焼き菓子を用意させた。


「特に目新しいお話は、ありませんわよね?」

「いえいえ、今まで学ぶ機会が無かったので、とても勉強になります」

「私もです」


 なぜかメイプルは、俺の理解を超えるような知識は豊富なのに、歴史や風習などの知識が乏しく、常識と思うようなことでも、思わぬ物事を知らなかったりする。

 知識が偏っていると言ってしまえばそれまでだけど、なんとも不思議だ。

 まあ、そういう所が、魅力だったりするんだけど……


 三人で軽くおしゃべりをしながら一息入れると、マリーさんは、今度は大陸歴について話し始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ