表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の召喚体(いもうと)たちが優秀(やり)すぎる!  作者: かみきほりと
試験に挑む召喚術士、王都滞在中も奮闘する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/283

105 幽霊屋敷の大掃除

 契約の翌日、再びミアの新居へとやってきた。

 名目は除霊だが、実際には建物や敷地の調査と軽く手入れをするためだ。


 幽霊たちとの話し合いは、ディアーナ、サクヤに任せ、ミアとサンディーは建物の調査をしている。

 メイプルには、サクヤの世話と全体の指揮を任せてある。

 そして、俺とシアは、外で道を切り拓いているのだが、なかなかに大変だった。

 特につる植物は厄介で、どこにでも入り込むし、どこにでも絡みつくし、どこにでも根を張る。

 それを根気よくブツ切りにして引っこ抜きながら、少しずつ作業できる範囲を広げていく。


 こういう時、最大の戦力となるクロエは、別件で出かけている。

 魔獣の話をしていた相手をクロエに調べてもらっていたのだが、それに関連した調査があるらしい。


 フェルミンさんとマリーさんもだ。

 昨晩、とうとうフェルミンさんに置き土産を渡したのだが、それが少々刺激が強かったようで、マリーさんと共に王宮へと行ったきり戻ってこない。

 置き土産とは、みんなが調べてメイプルがまとめた、敵の潜入者や協力者たちのリストだ。

 表紙なども含めて五百枚以上となる、なかなかの大作に仕上がっていた。

 その精査に時間がかかっているのだろう。




 とりあえず今日は、裏口から井戸までの道を作ればいい。

 まずは建物内を使えるようにしたいのだが、水が使えるようになれば掃除の効率が格段に上がる。


「シア、あんまり無理はしなくていいからな」

「うん。分かった」


 頼めば何でも一生懸命に取り組んでくれるのだが、加減というものを忘れがちなので心配になる。

 もっとも、先に俺がバテそうだけど……


 木製の構造物は悲惨なことになっていたが、石積みの井戸は生きていた。

 ボロボロになりつつも蓋が役目を果たしていたようで、あまり中に物は落ちていなかった。

 まあ、それでもいろいろと入っているだろうから、飲む気にはならない。


 滑車などもないので、事前に用意したロープ付きの桶を使って汲み出し、バケツに移し替えて屋敷の中へと運び込む。

 ……つもりだったのだが、裏口の前で足を止めた。

 扉は開け放たれたままなのだが、そこから見える様子に驚く。

 出る時は、障害物だらけで扉に近付くのもひと苦労だったのに、あの惨状が嘘みたいに消えていた。

 積もっていた埃も、薄っすらと……ぐらいにまで減っている。


「サンディー、裏口に来れるか?」

「は~い。お兄ちゃん」


 姿が隠れていたが、思ったよりも近い場所にいた。


「あっ、お水。井戸は大丈夫だったみたいね」

「まあ、ロープの桶で汲み出さないとダメだけど。大丈夫そうに見えるけど、一応確認してもらおうと思って。どう? 使えそう?」

「濁ってないし、あんまり臭いもしないから、大丈夫でしょ。ありがとう」

「それにしてもすごいな。もう、こんなに片付いたのか?」


 俺の言葉に、サンディーは嬉しそうに後ろを振り返る。

 そこには、驚きの光景が……


 運び込んだホウキやチリトリもだが、チリトリ代わりの板や、ホウキ代わりの角材などが、意思を持ったかのように動き回って、埃を集めている。

 それに、時々、物が飛び交う。


「私にもよく分からないんだけど、幽霊さんたちが手伝ってくれてるんだって」

「幽霊が?」


 なるほど……と思いつつ、幽霊を見ようと意識を集中させる。


「うぉっ!?」


 そりゃまあ、これだけの人数(霊数?)がいれば、片付けるのも早いだろう。

 それにしても、幽霊たちが、これほど協力的だとは思わなかった。

 普通に考えれば怪奇現象なのだが、日が高くて明るい時間帯に、これだけ大量の幽霊たちが、せっせと掃除に勤しんでいる姿は、滑稽に思える。

 もちろん馬鹿にしているわけではない。


「思ったより、早く終わりそうだな……」

「すごいよね。物がどんどん勝手に飛んでいくし、ホウキやチリトリが勝手に動いて掃除をしてくれるなんて、おとぎ話みたい」

「じゃあ、水はどうする?」

「拭き掃除も出来そうだから、どんどん汲んでもらおうかな。そうね……」


 サンディーの視線を追っていくと、部屋の一角に、まだ使えそうな水瓶などの容器が集められていた。


「あの入れ物に、溜められるだけ溜めてもらってもいいかな。ここからが、私のお掃除スキルの見せ所……だよね」


 頭巾にエプロン姿のサンディーが、雑巾を握りしめて力こぶを作る仕草をする。


「ああ、頼んだぞ。まあ、これだけ手伝いもいるし、大体のところは今日中に終わるかもな」


 中の掃除は、彼女に任せておけば間違いないだろう。

 ならばと、水を汲みに行こうとすると、サンディーがボソリと呟いた。


「いいな、お兄ちゃん。私にも幽霊が見えたらいいのに……」

「だったら、ちょっと試してみるか?」

「……えっ?」


 昨日までは、俺にも幽霊が見えてなかったと思う。

 もちろん、ディアーナは別だ。彼女は俺の召喚体だから、幽霊になっても見えていたのだと理解できるが……

 心当たりがあるとすれば、やはりディアーナの存在だろう。彼女と契約したことで、何らかの影響があったと考えれば、納得ができる。

 それに、何か切っ掛けがあったとすれば、昨日のアレ意外に考えられない。


「ディアーナに憑り付かれた時のイメージを送ってやれば、もしかしたら……」


 そこへ、ぬっとディアーナが顔を出す。

 壁から顔が……じゃなくて、普通に近付いて横合いから顔を出しただけだが。


「アニさま、いけずやなぁ。憑り付くぅやなんて、人聞きの悪い。あれは、ウチとアニさまが一つになって、力を合わせて戦こうた愛の証やぁ、ゆうのに……」

「またそうやって人をからかって……って、サンディー、落ち着け。あれは協力して戦ったってだけで、愛とかそういうのはディアーナの冗談だからな」

「冗談やあらへんのに……。せやけど、ごめんなぁ。サンはんはホンマにアニさまの……」

「まてまて、話をややこしくするなって」


 賑やかで結構だが、こんな調子だけに、ミアが三つ子の長女を引き受けてくれて良かったと思う。今はまだ難しいだろうが、いずれは、暴走気味の二人を上手く制御してもらえればと、期待したい。


「なあ、ディアーナ。俺以外にも、幽霊が見えるようにしたり、声が聞こえるようにしたり……とか、できないか?」

「ん~、どやろ。たぶん出来るぅ思うけど……。アニさまが何しよう思てはんのが気になるし、見せてもろてええやろか」

「まあ、そうだな。奥の手はいくつあってもいいし、試せるうちに試したほうがいいよな。サンディーは、どうする?」

「うん、大丈夫。やって、お兄ちゃん」


 迷わず、即答が返ってきた。

 ならばと、できるだけ具体的なイメージを思い浮かべ、力と共に送り込む。


 俺の試みは成功したが、どうやら力を送り込んでいる時にだけ有効なようで、あまり使い勝手がいいとは言えない……という結果に終わった。

 なので、ディアーナに頼むと、おもむろに幽霊となってサンディーに憑依した。

 ……と思ったら、突然、俺に抱き付いた。

 

 間違いなくディアーナの仕業なんだろうけど、これはこれで悪い気はしない。


「どないです、お兄はん。あたしの身体、柔っこくて、ええ匂いするやろ?」

「ああ、そうだな。でもディアーナ、全然サンディーになりきれてないぞ。それに、これ、絶対に後で怒られるぞ」

 

 俺の腕の中で、サンディーの身体がビクンと震える。

 どうやら身体の支配権を取り戻したようだ。

 

 俺に()()()()()がこなけりゃいいな……と思っていたが、サンディーは意外にも冷静で、幽霊が見えるようになったと報告すると、置いてあったバケツを持って屋敷の奥へと入っていった。

 

「まあ、そうだな。俺の前でも平気で着替えるぐらいだからな」

 

 男として見られていないのは少し寂しいが、兄妹なんだから……じゃなくて、召喚術士と召喚体なんだから、それも仕方がない。

 変に意識されるよりは、よっぼどマシだ。

 そう思ったのだが……

 

「そんなことあらへんよ。サンはん、顔真っ赤にして、すっごいええ笑顔してはったわ。ほいで、念話で『ありがとう』やて。ほんま可愛(かい)らしいなぁ」

 

 これもまた、ディアーナの冗談だと聞き流すことにして、元気いっぱいに掃除を始めたサンディーの姿を確認してから、俺とシアは水汲みへと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ